『五等分の花嫁』もついに第100話です。
いまもっとも勢いのあるラブコメの一つである本,お話もいよいよ佳境に差し迫っています。風太郎が心に決めた相手は誰なのか。そんなことがもうまもなく五つ子たちに開陳される。
そんな第100話はアニメ二期を見据えた声優さんたちのインタビュー記事,5連続カラー扉,ベストエピソード人気投票結果発表と盛りだくさんです。詳細は本誌で確認していただくとして,雑感。
まず5連続カラー扉はすごいなと。
ねぎ先生も第100話に備えて描き溜めてこられたんでしょうかね。カラー1枚だってそれなりの作業でしょうに,気合の入れ方が窺えます。そんな扉絵は五つ子が一人ずつ「あ」「り」「が」「と」「う」とコメントしていく形式。
僕はヒロインたちの「目」が好きなんですが,5つ子とはいえ目の印象が大分変ります。
一花のどこか達観したような,お姉さんの目の中に優しさがあるところが好き。
二乃のすこし猫目的ないたずら感溢れる眼差しが好き。
三玖の少し前髪で隠れた静かさの中に情熱をもつ目が好き。
四葉の少し丸みのある,活発さと寂しさを兼ね備えた眼差しが好き。
五月の少し背伸びしたような,冷静を装いつつ幼さの残る目が好き。
そんな印象を持つ素敵な扉絵ですが,みなさんはどう感じたでしょうか。
五つ子たちは落ち着かない
旭高校の文化祭「日の出祭」も2日目。祭りの中日といえば朝から晩まで充実している一日ですが,昨日風太郎から衝撃の宣告をうけた五つ子たちは正直気もそぞろと言った様相です。さりげなく手だけ出演していたマルオにも気づかなかった様子。
昨日はD判定をうけて必死に勉強していた五月もパンケーキ登板として看板娘に。一方の二乃はたこ焼き屋から離れて放心気味です。そりゃそうだ。好きな人でもあり,大切な友人でもある上杉風太郎がその心の中にいる「特別に想っている誰か」を宣告するというのだもの。落ち着かないのも無理が無い。
恋の暴走列車・二乃はもちろん告白の返事ということになりますからドキドキするのはわかりますが,意外や意外,五月もまんざらではなさそうである。自身の可能性を指摘されて思わず赤面するそれはどう解釈すればいいのだろうか。
「そんな...まさかです...困ります....」
という言葉は偽りなさそうなんだよな。ここで気になるのは「困る」という表現です。告白されて困るということは五月側から風太郎に対する特別な思いは無いということなのか。あるいは四葉がそうであるように,自身の気持ちは別にありながら他の姉妹の幸せを願っているということなのか。どっちなんでしょうね。
このまま五月には恋愛感情が無かったで済ませてしまってはラブコメとしてどうかという気もします。一方で,これまで五月が風太郎に対して特別な思いを抱いているようには振舞って来ていません。むしろ「京都の女の子」であるところの四葉を応援する節すらみえる。
ま,内面は分からないのですが。
四葉がそうであったように,五月は四葉の「報われなさ」が居たたまれなくて零奈として策動したものの,実は自分も惹かれていて...みたいな展開は今回の赤面からあるのかもしれないなー...と思ったり。
それでも「困る」と言い募るのは,自分は「皆の母親」として娘(他の姉妹)たちの恋路を邪魔するわけにはいかない...とか思っていたりして。
過去と今と中野四葉と
それは一途少女・三玖も,「京都の女の子」でありながら姉妹のために幸せを譲ろうとする四葉も一緒です。昨日の出来事からして,いまさら自らアプローチしていくのはどうなんかなという気持ちがある。一方で,これが最後だからという気持ちも分からなくもない。
最後に思い出作り 私もしておいた方がいいかもね
という言葉は読者には一目瞭然。四葉はこれまでの方針通り,あくまで自分の正体も想いも秘めたまま,風太郎の選択を受け入れて消え去ろうとしているのか...。なんかジンワリしてきます。
しかしそんな四葉の想いに対する三玖の反応から判断して,三玖は四葉の想いに気がついていないんだね。へぇ...五月が京都のことも含めて四葉のことは気が付き,他のヒロインの気持ちに気づかなかったのとは対比的。
今回三玖は四葉の想いを知ることになりましたけれど,これ,他の姉妹はどうなんだろうな。二乃は気づいていなさそうだけれど,一花姐さん辺りはどう思っているのか気になりますね。
さてそんな思い出作りを念頭に置いた瞬間,上杉風太郎の声が聞こえてきたので追いかけてみれば,そこにいるのは「知らない女」である。馴れ馴れしくも風太郎と呼び捨てし,文化祭デートを楽しむその女こそ,風太郎のおそらく本当の初恋の人「竹林さん」であった。
半キレ気味の三玖ちゃんがとっても怖いのですが,そこでも作り笑いで場を取り繕うとする四葉の痛々しいことよ。本当は気になって気になってたまらないだろうに。だがそんな四葉の隠れた気づかいはどこへやら,竹林さんは風太郎の手を取り混沌しかないパンケーキ屋の方へ突撃するのであった。
「前方に二乃・五月。後方に三玖・四葉。つまり挟み撃ちの形になるな...」。そんな空条承太郎のようなことを思ったかどうかは知りませんが,端的に言って修羅場な状況でありますが,そこはかつての英才・竹林さんである。そつなく「いつもうちの風太郎が」とマウントを取りに行く。女は怖ぇぇ!
すかさず二乃が反撃するものの,さらなる竹林さんの「反撃」は中野四葉の琴線に触れるのであった。
「じゃあ これではっきりしたね」
「私とあなたたち どちらがより親密なのか」
キレる三玖をよそに物陰から飛び出る中野四葉。「私の方が上杉さんのこと...」と口走るそれは,隠して隠し続けた6年分の想いが成せる業だろうか。つくづくこのシーン因果を感じるのである。
かつて竹林さんに片思いして,勝手に振られた上杉風太郎。「いらないのは俺」と不貞腐れて一人京都駅で逸れたところから,四葉との出会い。京都の夜における四葉との成長の「誓い」。
四葉からすれば竹林さんは「過去の象徴」である。風太郎の今を形作る頑張りのきっかけを作ったのは自分。努力してその誓いに違わぬ成長を遂げたのは風太郎。自身は志半ばで挫折したとしても,その自負と秘めたまま思い続けてきた時間は幼馴染の彼女に劣るはずもない。
秘めていたからこそ,姉妹ではない他者である竹林さんが現れたことでつい発してしまった本音の本音。それが自分自身に返ってくることも,その時は知らない。
いつかどこかで見た世界
しかしその声は五月の言葉によって重ねられたのであった。
竹林さんという存在が持つ風太郎との時間と積み重ね,それを承認した上での子の切り返し。
しかしその深さでは 負けるつもりはありません
ぬう。
まさしく因果は巡るである。竹林さんに対する失恋によって風太郎と四葉が出会い,四葉が風太郎を変えることで風太郎と五姉妹が再び出会う。出会って2年,その期間の間に成長した風太郎と五つ子の関わりは確かに「特別な存在」としてかつての竹林さんにも負けて劣らぬ結びつきをもたらしている。
中野四葉は「京都で出会った女の子」として特別な存在であることは五月も認めているし,四葉自身が思わず口走りかけた本音をみても四葉にとって風太郎は特別な存在なのである。だが運命かな。そんな彼女自身の言葉が届くことなく五月に重ねられる意味はなんだろう。
かつて『ニセコイ』の九州編において一条楽が迷った時,当時の彼の片恋相手であった小野寺小咲は楽に声をかけようとした。
その時,実際に同じような言葉を重ねるように楽に告げたのは,偽物の恋人であり後に「好きになっちまったらどうしようもねぇ」相手となった桐崎千棘であった。今回のこのシーンをみて最初に思い出したのはそれである。
小野寺小咲と中野四葉は全く違う存在であるし,桐崎千棘と中野五月は全く違う存在である。当然,楽と風太郎も違う。全く違うのだけれども,共通する要素はある。
それは中野四葉自身もまた,「6年前に風太郎と約束し共に成長を誓った相手」という過去の約束の存在であり,同時に現在を形作るきっかけとなった「過去の象徴」ということである。
四葉から見て竹林さんが過去の象徴であるように,京都の女の子である四葉もまた過去の象徴である。それは今回の五月のセリフからも明白である。四葉が口走りかけたその想いは「過去からの自分の想い」である。一方,五月が実際に語ったのは「今現在を形作る自分たちの想い」である。
四葉が過去からの蓄積で勝負しようとしたのと異なり,五月はいま現在の結びつきで勝負しようとした。四葉が自分一人の想いを語ろうとしたのに対し,五月は5つ子全員の想いを語ろうとした。
動機も違う。趣旨も違う。単純に比較することはできない対比ですけれど,これだけをみると完全に四葉よりも五月の方が現在の状況を適切に説明している。事実,風太郎から出てきたのは
「こいつらは俺の数少ない友人だ 全員が特別に決まってる」
というものである。風太郎が述べているのも五つ子全員に対する気持ち。いま,風太郎が抱いている率直な気持ちである。四葉と五月,どちらが風太郎に寄り添った回答だったか...一目瞭然であろう。
そこが「同じようなことを言おうとした」ニセコイと「意味の違うことを言った」五等分の花嫁との違いでしょうか。ラブコメも進化するなあ...と思ったり。
竹林さんは何をしにきたのか
それにしても竹林さんは「何を」しにきたのかな。
数年ぶりに風太郎の前に現れ,わずかな時間を風太郎と過ごし,五つ子と出会う。なぜか五つ子に「マウント」をとりにいき,わざわざどちらが親密か比べようとする。
それは風太郎が言う通り「からかっていた」だけなのか。
かつて何もない空っぽな人間だと自分を語り,京都での五つ子との出会いによって「変化」し,成長する。今や全国1位に届かんとするほどの学力を身につける。そんな風太郎にただ会いたかっただけなのか。風太郎を変えた五つ子たちがどんな人物か知りたかったのか。
不真面目なバカ野郎だったはずの風太郎が自らに無いものを語り,頭を垂れて竹林さんに勉強を教わる。その時きっと風太郎は京都で結んだ「誓い」と五つ子との「出会い」を語ったんだろうね。たぶん。だから五つ子ちゃんたちをすぐに認識できた。
そんな彼女の「想い」はなんだったのか。文化祭から戻り,幼馴染の真田君と合流する竹林さんの頬は少し朱に染まっている。その意味はなんだろうな。
成長した上杉風太郎をまぶしく見ているようにも思えるし,そんな風太郎を応援したいと感じている。そういうことなんでしょうけれど,同時にもう一つの疑問が残る。
6年前に勝手に勝負から降りた上杉風太郎だったけれど,別に竹林さん本人の口から真田君とお付き合いしていると言われたわけじゃない。今回も外で待っていたけれど,それが恋人としてなのか,幼馴染としてなのかはぼやけたままである。
別れて数年,そこにあるのは恋心だとは思わないけれど,少し五つ子に「いじわる」なマウントの取り方をしたり,成長した風太郎をまぶしそうにしているその姿からは,本当はかつては恋心もあったのではないか。そんな想像の余地があるような描き方が上手いなーと思うのでした。
こうして「過去の象徴」が去っていくお話を100話に挟んで,はたして上杉風太郎はどんな選択をするのだろうか。「選択が正しかったのだろうか」という言葉からは自ら選んだ選択に対する確証が無いままのように見える。
彼がとるのは「過去から今に続く想い」なのか,「今ある想い」なのか。本当に気なって仕方が無いのである。次週,結果が出るかどうかを含めてドキドキの水曜日が待ち遠しい。というわけで,まる。
余談:「ベストエピソード人気投票」について
今回同時に「五等分の花嫁」ベストエピソード人気投票も結果が発表されました。
ふむ...ランキングは中々納得のいくものですが,票数は開示しないのね...。まあいらぬ論争を避ける意味でも順位だけ開示というのは正しいのかもしれない。
第1位の第67話「スクランブルエッグ」。
これは風太郎が五月の森の中から三玖を見分けた回である。愛があれば見分けられる。そんな祖父以来連綿と続く教えに基づいて五人を見分けようとした回ですね。
三玖を見分けられた理由は「愛」なのか否か。愛だとしてそれは恋愛的な愛なのか,今回風太郎が五人に述べたように「友愛」なのか。気になるお話でしたね。納得の1位です。
第2位の第37話「勤労感謝ツアー②」
四葉と風太郎のデート回...でありますが,ポイントはやはり例の公園でしょうか。四葉が落ち込んだときにやってくる公園,そのブランコで二人で乗る。
欲しいものが何もない,そういった四葉の背景は「京都で出会った女の子」という事実とその後に起きた諸々の出来事があったためでしたね。いまその情報をもってこの話を読むと,また違った感慨がわいてきたり。
第3位の第84話「シスターズウォー 七回戦」はずっと思いを秘めてきた三玖がついに自分の気持ちを言葉にして風太郎に伝えた回。
第4位の第59話「最後の試練が二乃の場合」・第5位の第60話「攻略開始」は二乃が風太郎への気持ちを認めてそのまま告白したエピソード。
そして第6位の第21話「おまじない」は四葉の「好きだから」という冗談交じりの告白,でもそれは本当の気持ち...という今にして思えばとても意味のあった回。
第7位の第50話「七つのさよなら⑫」は五つ子たちが風太郎とともにあることを選ぶと同時に,風太郎の中での零奈に対する区切りの「別れ」を描いたお話でした。
どれもなかなかの重要エピソードだらけですね。
次号,101話で風太郎の「答え」が明らかになるのか否か,何とも言えないのですが(五つ子だけに答えが示されて読者には伝えられない可能性もありますし),これまでの五人とのの関わり合いの中で導かれた結論だけに,それなりの「説得力」がある答えとなるのでしょう。
そんなことを期待して。再度まる。
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*画像は『五等分の花嫁』第100話,『ニセコイ』182話より引用しました。
画像引用は中止しました。