さてと。久々の「ごとよめ」ですね。
報われる想いがあれば届かない想いもある。数多のラブコメで起こり得るこの問題,五等分の花嫁においてもその命題は残ります。
あの風太郎が決断した文化祭3日目の夜,五月は風太郎に「余計な気づかいは傷つけるだけ」とくぎを刺し,風太郎もそれを受け入れました。二乃,三玖のストレートな告白,一花の婉曲的な告白に対する上杉風太郎の直接的な答えはない。
よくある恋の話のように,恋する者同士がお付き合いを始めれば叶わなかった恋はそっと一人で噛み締めて終わりにするだけです。選ばれなかった想いに対するやるせなさ,選ばれた者に対する割り切れない羨望,そういった気持ちは封じ込めるなり昇華するなりして処理するしかないわけで。
しかしこの「五等分の花嫁」における恋模様はこれまでのラブコメとちょっと異なります。それは同じ人を好きになったのは「五つ子の姉妹」であるという点です。お家に帰ればとりあえず場所的にも心理的にも距離を保てる「友達」ではなく,家族です。そこが違う。
同じ人を好きになった者同士であるだけでなく,家族でもある者たちに四葉が思いを馳せるのは無理からぬことです。そんな四葉の気持ちが二乃の感情を逆なでしてしまったのが前回のお話。
今回は引き続き「三玖」との対話です。
恋敵でも仲間でもない,二人の姉妹は一体何を語るのか。それぞれの恋の決着のつけ方を見出す116話です。
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三玖は何を想うのか
というわけで三玖と四葉という珍しい「差し」です。
思えば四葉は三玖の気持ちには早くから気が付いていて,その恋心を応援していました。特に三玖に入れ込むという訳ではなく,「自分以外の姉妹は幸せに成るべき」という想いからの純粋な応援といった姿だったかと思います。
それが今,風太郎の想いは四葉に注がれ,四葉もまた風太郎を想っている。そこでお付き合いをしていないのは,四葉の姉妹に対する想いからです。自分が迷惑をかけた姉妹達を差し置いて自分が幸せになることが本当にいいことなのか...そんな思いが残っているからこその中途半端な状況なのでしょう。
結果どうなるか。はい,お通夜です(違)
まあ...四葉的にはどうしたらいいのかわからんよなー。わざわざ自分に変装する三玖の本音は「四葉に成り代わって風太郎と付き合う」ではない。ただの冗談にすぎないわけですけれど,その根底にある風太郎が好きという気持ちは「真実」である。同じ人を好きになって,自分は選ばれて三玖は選ばれていない。その事実に居たたまれなくなるのは当然至極のこと。
既に区切りをつけている一花同様に,三玖もまた「区切り」はつけている。あの夜,誰が選ばれても受け入れる決意をした文化祭3日目の夜に,選ばれなかった事実を受け入れているわけです。そこで三玖が四葉と敢えて対話するのはなぜか。
三玖は知っている。
四葉が姉妹たちに気遣ってフータローとお付き合いする返事を保留していることを。前の学校での出来事を「負い目」に想い,自分より姉妹を優先する気持ちとの間で葛藤していることを。
しかし三玖からしてみればそれは「傲慢な態度」なわけです。恐らく二乃もそうなのでしょうが。
自分たちが恋する上杉風太郎は四葉を選んだ。その四葉もたぶん風太郎に好意を持っている。そこで躊躇して「上杉風太郎を困らせること」に怒りを感じる。フータローに「選ばれなかった」ことに感情の荒だちを抱いてしまう。
本気の恋だったからこそ。本気の恋でいてほしい。
いまこうやって四葉が三玖に語るように,6年前に出会った時からずっと思い続けてきた気持ちが変わらないのなら。上杉風太郎ことを思い続けているのなら。自分たちの届かなかった想いも,やるせなさも,全部踏み超えていってほしい。
だってそうしなければ「届かなかった想い」はいつまでも宙ぶらりんだもの。届かなかった想いの悔しさを抱き続けていたまま,自らの恋も,風太郎の恋も結実しないままの状態が続いてしまうのだもの。
行き場のない想いを抱く悔しさ,誰も悪くないけれど生み出されてくる怒り。そうした感情を消化するためにも四葉には進んでもらわなければならない。でも背中を押してあげたりしない。
自らの過去も,姉妹に対する想いも,風太郎に対する想いもぜんぶ四葉の中で消化させて。四葉は四葉の人生をきちんと歩んでほしい。姉妹達の力を借りるのでもなく,自分自身の力で。
そんな三玖の言葉がとても「お姉さん」らしかったと思います。
そして四葉は何を想うのか
さて四葉です。
二乃と対面した時には理解できていなかった「自分が為すべきこと」をしっかりと見据えることができたような今回のお話でしたね。
まず上杉風太郎に対する想いについてですが,三玖に対してハッキリ述べたように,上杉風太郎に対する恋心はもう揺るがないのは間違いない。まあ分かり切ったことですが,花嫁が四葉となることはもはや確定といってよいでしょう。
その後の三玖との「カラオケ対決」に見ても分かるように,迷惑をかけた自分だから...といった引いた姿勢は無くなったように見えます。
謙虚にしていようとも,身を引こうとも,姉妹たちは四葉に「こうしろ」とは言わないし,上杉風太郎の気持ちが自分以外の姉妹に行くわけでもない。行動できるのは四葉だけです。ボールは四葉にある。
こうして三玖と向かい合って,一花や二乃とも話す決意がついたからこそ「皆に会いたい」なのでしょうね。恋愛の勝者としてではなく,恋愛の共闘者としてでもなく,上杉風太郎が恋してくれた一人の女の子としての中野四葉として「これからどうしたい」のか。そんなことが次回以降語られるのではないかと思ったり。
そうやって四葉と風太郎が収まるべきところに収まって,はじめて届かなかった想いが「不達」であったことが確定する。だからといって三玖はそのことを不幸だなんておもったりしない。
上杉風太郎に出会えたこと,短い時間の中で風太郎と関わった時も,その恋も決して後悔しない。自らが感じた成長を,自分が自分らしく誇れる人間になったことを,今の自分が好きになれたことを幸せに思う。それはきっと,一花も二乃もそうなんだろうと思います。
四葉が進んだように三玖もまた前に進む。
一つの恋の始まりと終わりがしんみりとした116話でした。まる。
余談:「ごと嫁」116話 コソコソこぼれ話
前回ブログ感想に用いたHUNTER×HUNTERのウェルゲーさんのセリフ。
まさか今回三玖さんが同じようなことを言うとは思いませんでした。なんだこのキングクリムゾン...。さすがに笑ってしまいました。
冗談はさておき。
ここまで全話に登場していたはずの五月さん。ついにここで未登場でした。
今回は三玖と四葉が差しで語り合うという稀有な事例だっただけに,どうしようもなかったみたいですね。個人的には最初の三玖からの電話の相手を五月にしておけば皆勤賞は達成できたとは思いますが。
五月の皆勤というのはこの「五等分の花嫁」という物語のストーリーテラーとしての「主役」的な意味合いがあったように思うのですけれど,恋の結末が四葉に決まったことで一つの区切り的があったのかもしれませんね。主役の変更,ではないですが,作品の象徴としてのリード役はここまでという点において>五月未登場
普通に単行本で修正されているかもしれませんけれど。
その辺はあらためて確認ですね。というわけで,再度まる。
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