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漫画感想のブログ

『五等分の花嫁』 第89話 私と姉妹② 感想

さてと。五等分の花嫁 89話 の感想(ごと嫁 感想)です。

 

母を亡くし,養父・マルオに引き取られた五つ子たち。中学生に上がった五人娘たちは少しずつ違いが表れて...。

 

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変わる四葉たち



なかでも四葉の変化が目覚ましいですね。「私たちはもう一緒ではいられない」というモノローグから見えてくるものは,「同じではない」ことに対する強烈な自負が感じられます。

特別であること。中野四葉であること。他の誰でもない「中野四葉」であろうとした四葉中学生日記,スタートであります。

   

 

中野四葉は違いたい

母の願いである「五人一緒であること」=個性の違いなく五人とも同じようにあってほしいと勘違いしてしまった四葉がとった行動は「五人の中で一番になる」ということでした。ふむ。

 

サッカーの監督に「お手本になれ」と言われたことがきっかけで「違い」を見せるためには「一番」になればいいと勘違いしてしまった四葉。そんな折,出会った上杉風太郎との修学旅行と二人の約束。母を楽にさせてあげるという目標と合致したがゆえに,「違いを出すために」勉強にも勤しむのであった。

 

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勉強する理由


 

ふむ?

前回,「四葉は母を楽にさせるために勉強することの意義を見失った」と解釈したんですけれど,ちょっと違うみたいだな...? 

 

今回のエピソードを読んでまず思ったのはそこである。母のためにという目標はなくなったけれども勉強する。勉強して,いい会社に入って,お金が稼げるようになって...でもそうして稼いだお金で楽をさせる相手はもういないのである。にもかかわらず,「そこに原動力を見出して頑張るis何?」 てなわけですよ。

 

まあ「答え」は出ているよね。

四葉にとって,母を楽にさせるために頑張るというのは本音だったのだろうし,そのためにお互い頑張ろうという風太郎との約束も本気の約束だったのだろう。でも多分四葉自身も気づいていない彼女の「本当の目的」は,あくまで自分らしさを得ることだったんだね。

 

他の姉妹と「異なりたい」から勉強して「差」をつける。

他の姉妹と「違いたい」からスポーツにおいて「差」をつける。

 

勉強を頑張るのは点数という明確な違いがあるから。スポーツを頑張るのは結果という明確な違いがあるから。5人まとめて十把一絡げではない,他の誰でもない「四葉」である存在意義を見出すためには「客観的な物差しでわかる違いを作り出す」のが早い。

 

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他の誰とも違う自分を見つけるために

 

だから四葉は5人の中で「一番」になるために,勉強をし,スポーツに力を入れたというわけなんですね...。なるほど。

 

中野四葉は頑張りたい

だがしかし。

運命の歯車は残酷な結果四葉に突きつけるのであった。

 

養父・マルオが用意してくれた新たな環境はバリバリの名門である。勉学は厳しく。追追試で不合格なら放校という厳しい学校だったのであった。

 

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名門の罠



まあ仕方がないね。

病院の院長であるところのマルオ,おそらくに学力も優秀なのであろう。その若さでその地位を得るだけの才能,それを維持向上させるための努力。マルオもまた上杉風太郎以上に努力してその才能を磨き続けているに違いない。

 

そんなマルオがはじめての子育て,それも難しい年頃の中学生5人を抱えてどうにかしろって,どうにかなるわけないのである。たぶんマルオからしてみれば中学生程度の「勉強すればいやでも点が取れる学習」なんてできないことのほうが理解できなかったのだと思うし,あの優秀な零奈の娘だからこそ,「その程度のこと」はやれるだろうと思っていたのだろう。

 

厳しいお嬢様学校で勉学に勤しませる。そんな最高の環境を提供してあげることが,自分にできる零奈の遺児たちに対する「思いやり」と思ったのでしょうね。ですが,残念かな,五人娘は致命的に勉強ができないアホの子だったのであった...

 

「5人の中で一番になる」

 

そんなことで他の姉妹との差異を見出し,自分らしさを手に入れようとした四葉は有言実行とばかり勉強に専念する。その結果がこちらになります。

  

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ドヤァ...!(31点)

だめだ...まだ笑うな...

こらえるんだ...

だが...しかし...夜神月

 

能面のような顔をしながら「よくやった」と言ってのけたマルオの胆力もなかなかにどうしてよ。失笑に耐えてマルオはよく頑張った!感動した!てなもんである。一生懸命頑張って31点という惨状には「うわ,どうしよう」てな気分だったであろう。

 

ここに明確な指導者の不在が問題となってきてますね。本来絶対評価で「上」を目指すべき目標が,母の不在,多忙な父の不在によってきちんと指導されていない。

故に四葉は短絡的な目標ー「違いが出せる自分の証明」であるところの,相対評価による5姉妹の筆頭を目指すことに相成るわけであります。

 

中野四葉は分からない

が,そんなどんぐりの背比べによる「差」は簡単にひっくり返ってしまうのであった。

 

ぐぎぎぎ。

なぜだ。私頑張ってる。こんなに頑張っている。ああ...でも...

 

戦国武将ゲームをやっていただけの三玖にさっくりと社会で追い抜かれ。すべてを犠牲にして頑張った結果が数学の29点である。うぺぇ...!

  

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どうして...?

 ここに至ってついに自分の言動に疑問を抱くことになります。勉強して,いい会社に入って,お金を稼いで...でもその先に楽をさせてあげる「お母さん」はもういない。本当は「自分らしさ」を見出すために頑張ってきたのに,その事に気づかないままここまできてしまったからこそ今更思う

 

「私は何のために勉強しているんだろ...」

 

という疑問。目的の履き違いから始まった「目標」は完全に迷走し,四葉は袋小路に入ってしまった。リフレインする母の言葉「特別じゃなくていい」「大切なのは五人でいること」という言葉が四葉の混乱に拍車をかける。

 

「自分らしくありたい」「同じような存在の五つ子の一部」であることに対する反発と,母の言葉との齟齬。実際,母の言葉は四葉が自分らしくあることを否定しているわけでもないのに,いかんせん悲しいかな。四葉さんにはその文脈を読み取る力が無かったのであった。ああ悲劇レ・ミゼラブル,である。

 

なんとかフラフラになりながら高校に進学したはいいものの,もはや勉強で「一番」になることは叶わず。そもそも勉強する意義すら不明瞭であるならば,それに打ち込めるはずもなく。でも「自分が自分らしくなければ」存在意義を見出せない。

 

 

そんな四葉がとった行動は「スポーツ」で頑張る,でした。

サッカーの監督に「お手本になれ」と言われた原点は,最後にここに戻ってきたというわけだ。スポーツであれば他の4人との違いが出せる。違いがさせれば「自分らしく」いつづけることができる。

  

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在位階級を追求したその果て

 

勉強を切り捨て,スポーツに打ち込み,数々の表彰を受けて壇上に立つ四葉の束の間の絶頂。他人に褒められる自分。人に必要とされる自分。そこに「自己存在意義」を見出した四葉が最後に受けたのは,追々試不合格による落第処分でした。

 

 

それでも中野四葉は分からない

 

なるほど。

これが「四葉だけ落第した」真相か...。その理由の闇が深すぎるなあ...。

 

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ファッ!?

 

零奈の娘に「落第」などという不名誉を与えるわけにも行かず,政治力を発揮したマルオの計らいにより「転校」という処置とされた四葉。合格した他の4姉妹とも別になり。一人別の学校に行くことに。

 

自分のいる意味を作ろうとして,「違い」を作ろうと頑張ってきた3年半あまりの日々。その結果他の姉妹と違う「一人」になってみれば,そこに「特別であること」の感慨はなく...。挫折感と。目標の喪失と。何者でもない自分しか残らなかったのであった。 

 

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何者にもなれなかった自分

そんな時,手を差し伸べたのは中野四葉血肉を分けた分身たち。姉妹たちも一緒についていくことを選択したのであった。これは以前の期末試験のエピソードでも触れられていましたから周知の事実ですけれど,なるほど,こういう経緯だったのね。

 

カンニング」云々というのは明確な「嘘」である。四葉より勉強していた彼女たちはギリッギリのぎりであっても実力で通っていたのであろう。事実だったら,四葉だけカンニングに誘わなかった理由がないからね。これはあくまで方便,自分たちも学校をやめるための「理由づけ」似すぎない。

 

一人「差をつけることで自分らしさを見出そうとした」四葉。でも振り返ってみればほら,一人ひとり姿形も,興味関心も,性格も,みんなバラバラに「自分らしく育っている」。自分らしさをそれぞれ身につけた五姉妹の姿とともに描かれる姉妹の絆がなんともじんわり来ますね...

 

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五等分

二乃「私はあんただけいなくなるなんて絶対嫌!」

一花「どこに行くにしても皆一緒だよ」

五月「それがお母さんの教えですから」

三玖四葉...どんなことでも私たちで五等分だから

   困難も五人でなら乗り越えられるよ」

 

そして四葉,ついに卍解ーーー!

 

 

 

 

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四葉卍解

 

え!

 

前半はまあいい。お母さんが言っていたことはこういうこと,てのは正しい。

 

母・零奈が言っていたのは確かに「五人がともに支え合い,幸せになってほしい」ということである。姉妹たちはそれを純粋に受け止めて実践し,その優しさを通じて四葉は母の言葉を理解する。それでいいわけですけれど,その先の

 

「私は皆のために生きるんだ」

 

は,ちょっと違くねぇか。

いや,四葉もまた母の言葉に従って「五人がともに支え合って幸せになる」決意をしたのはいいんですよ。でもそれは「自分を殺し,他の姉妹のためだけに生きる」ってことじゃない。

 

なるほど。

四葉の,自分という主体のなさ。他の姉妹ためだけに生きるその刹那な生き方。それは再び得られた「誤解」によって生じたものだったのねえ。つくづくアホの子である(おい)

 

そして時はめぐり夏休み明けとなって現在の学校・上杉風太郎のいる時間軸に五姉妹たちは到達することになる。長い髪を切り,トレンドマークであるリボンはそのままに「変わってもあり変わってなくもある四葉」の姿がそこにある。

 

 

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再びの始まり


そしてここからが四葉の本当の物語のはじまり

6年前に京都で風太郎と結んだ失われた約束にはじまり,6年後に家庭教師として中野家姉妹の前に現れた上杉風太郎が,四葉の「本当にやりたいこと」を見つけ出してあげるまでの物語のプロローグ。

 

というわけでまだまだ物語は始まったばかりなのでした。まる。

 

ここから始まる物語

ここに至り,物語は連載冒頭に戻る。

次回,四葉視点で見た「上杉風太郎」との再会か...。胸が熱くなるな

 

この先起こることは,読者である私たちは既に「知っている」わけなのですが,この時四葉がどんな思いだったのかは気になりますね。色んな意味で。まず焦点は,四葉がすぐに「上杉風太郎」=「京都で出会った風太郎」と認識できたのか,ということですよね。

 

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四葉風太郎,再会

 

このシーン。

呼びかけの言葉は「うえすぎさん」である。今の四葉と同じく「上杉さん」呼びである。当然四葉は「上杉風太郎」という名前を見て呼びかけているわけですが,このときの四葉の気持ちはたぶん

 

風太郎...?」「まさかね...」「でもひょっとしたら?」

 

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確信に変わる

 

みたいなそれだったと思うのですよね。でも違ったらどうしようと思い,まずは「上杉さん」と呼ぶ。それが顔を見て「京都の風太郎くんだ」と確信したんじゃないかな。この頬を赤くした表情。「そうだったら...」「そうかもしれない...」という思いが「そうだ!」という確信につながったからこそのこの表情である。

 

 

確信がついたからこそ,四葉「自分のテスト」を見せたんだよね。「よつば」と書かれたそのテスト。京都で出会った風太郎くんは自分の名前を「伝えている」。あのときの男の子だったら覚えているかも知れない。自分を認識してくれるかも知れない。だから0点の答案を差し出したわけだ。

 

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風太郎に対する「テスト」

 

結果は「思い出しているように見えなかった」

でも四葉は確信してしまった。あのときの風太郎だと。自分と約束したあの風太郎だと。自分は目標を見失い,迷走し,挫折したからこそ「風太郎はどうなったのか」が知りたい。だから四葉はその後も風太郎について周り,「今の」風太がどんな人物なのか推し量ろうとしたわけだ。

 

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今の風太郎を知りたい

 

そんな風太郎が有言実行のまま勉強して,学力を向上させているのを見て。ちょっと陰キャガリ勉特有の視野狭窄な感はあるけれど,それでも「らいはに楽をさせてやる」という目標に向かって走り続けていた風太郎を見て。とっても眩しかったんじゃないかな。

 

自分の心の闇を照らす光。

だから四葉は最初から風太郎と一緒に勉強しようとしたし,風太郎の家庭教師に協力的であろうとする。この四葉の表情。どこか懐かしげでもあり,眩しいものを見るようでもあるなんとも言えない表情がすべてを物語っている。

 

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眩しい存在

 

一方で,他の姉妹たちが「勉強」を嫌い,風太郎から逃げ回るのも今ならよく分かる。

 

四葉の「落第」によって転校した事実。彼女たちにとって「勉強」は四葉のトラウマを触り,5人の中の「勉強の序列」を「結果」で明確にしてしまう。だからひたすらに風太郎を避け,勉強を嫌がったわけだね。

 

風太郎がそんな勉強の象徴,五人姉妹を引き裂きそうになった「勉強を教える家庭教師」だったからこそ,一花も二乃も三玖も勉強しようとしなかったわけだ。個人的恨みがあった五月はなおのことであるが...。

 

だから二乃が風太郎を徹底的に排除しようとし,「五人揃っていればいい」といったのも,今回のこういう経緯があったからこそということであれば(やり方はともかく)事情はわかります。こんな風にお話がつながるとはねえ。

 

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二乃の想いと風太郎の存在意味

 

無論,家庭教師を雇ったマルオにも狙いがあったのでしょう。彼女たちが「なんとなく」ではなく「きちんと目標に向かって」勉学に励めるように。江端さんではうまく行かなかった代わりに,今度は同級生の風太郎にお願いする。

 

「友達」から教わるのであれば...中野四葉の思い出の約束の人であり,約束を実現している「上杉風太郎」ならば,四葉たちをきちんと導けるのかも知れない。そんな過去のしがらみも含めて養父・マルオが承知していたのだとしたら。そのうえで上杉風太郎に家庭教師を依頼したのだとしたら。

 

なかなかに良くできた物語である。

そんな彼の導きに従って,一人ひとりが目標を持ちながら先に進めるようになってきたのはまたこの先のお話。

 

かつて目標を分かち合った二人の少年・少女はふたたび目標を分かち合うことができるようになるのか。中野四葉の物語はまだまだこれからだぁ!ということで,今回の感想は御仕舞。

 

 

余談

さて,こうしてみると四葉か否かってのはなんとも言えないところに来た感があるな。

 

四葉のなかに上杉風太郎に対する憧れと感謝の念はあるのは間違いないけれど,さて恋愛的な感情がどこまであるのかはなんとも言えないところである。そうであるかもしれないし,そうでないのかもしれない。

 

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四葉風太郎をどう想うのか

 

これまで何度も「男女として付き合うこと」に対する問いかけをジョーク形式で投げかけ,その都度風太郎に否定されているだけに,四葉側にはある程度「そうなったら」という願望はあるにせよ,「自分は他の姉妹のために生きる」という目標設定故に行動には移さない。例の「絶対にありえない」あたりの発言や「これでいいんだよ」といったセリフからはそれが伺えます。

 

風太郎が「四葉がやりたいこと」を見つける手助けをする文脈であるのでしょうし,実際それを見つけるまでが風太郎と四葉,京都の女の子の物語なわけでしょうけれど...。ではその先は,となるとなんとも言えないところである。

 

共にらいは(妹)を幸せにするというのも一つの未来ですし。

四葉やりたいことを見つけて終わりというのも一つの結末である

 

 

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例えばそんな世界線

こればっかりは,作者かみのみぞ知る世界である。一読者としては物語の進行を見守るしか無いわけですが,恋として報われようとも,そうでなくても,四葉がご姉妹とともに幸せになれればいいなあ...と今は思います。

 

そんな未来を信じて。再度まる。

 
 

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*画像は週刊少年マガジン2019年第28号『五等分の花嫁』 89話  同1話より引用しました。