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『アオのハコ』 #15 普通の女子 感想 : この漫画!2号さんの使い方が上手すぎる...! の巻

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ども,現実逃避のayumieです。

 

『アオのハコ』については感想を書く気が無かったんですど,第15話「普通の女子」を読んで思わず感想をしたためてしまいました。ぶっちゃけ隙間時間で30分ぐらいで書いています。やっぱり勢いとノリがある作品は筆が滑る..もとい乗るな!

 

 

『アオのハコ』は読み切り当時から読んでいて,連載が始まってからももちろん追いかけてきました。とはいえ,連載になってからの流れで言えばラブコメ要素はかなり薄めで「リアル日常系高校生漫画」って感じでお話が進行していたと思うんですよね。

 

そのテイストがナウなヤングにバカ受けしたのか,『アオのハコ』は掲載順位も高め推移でつい先日は新連載にも関わらす巻頭カラーもとってしまいました。まあ,アンケについては呪術廻戦が休載中だったのでアンケに入りやすかったという有利もあったかもしれせんが,そんな憶測を吹っ飛ばすぐらい勢いのある漫画であることは事実です。

 

ただまあ,「結論が見えている漫画」系かつ「日常系高校生漫画」となると,純粋にラブコメとして見た場合いまいち熱くなる要素に欠けてはいたんですよね。だって恋愛の結末予想する意味がないくらい,大喜→千夏だし,読み切りじゃあ千夏と大喜の物語だったし,2号さん(雛)はまだ恋心も自覚していないってんじゃねぇ...。

 

完全に雛は物語を動かすための「駒」に過ぎないし,恋愛レースなんて考えるまでも無い。結論が見えたレースです。そうなるともはや見どころは「どんな風に雛が失恋するか」ぐらいしかないじゃないですか(酷ぇ)

 


 

 

なんでそんなひどいこと言えるん...? 人の心とか無いんか?

そんな炳筆頭・禪院直哉の声が脳裏に響き渡ります。

 

 

しかしだ。実際問題として,僕の限られた範囲での読者層においても雛が最後に結ばれると信じていないんだよね。悲C~。

 

 

なんてこった。

千夏推しの皆さんはまだしも,雛推しの皆さんにすら勝利を信じてもらえないなんて。そのくらい雛ちゃんには可能性が無い。完全に当て馬として認識されている。かつてここまで敗北を信じられたヒロインがいるだろうか(反語

 

とまあ,そんな状況下において描かれた今回のお話。ラブコメとしてなかなか興味深い造りになって来たので思わず筆を取ったという次第。というわけで,『アオのハコ』#15 普通の女子 感想です。

 

 

 

 

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雛ちゃんの可能性は信じられてない

 

なぜここまで雛ちゃんの可能性は信じられていないのか。

 

それは仕方が無いですね。読切版が大喜と千夏の物語だった,みたいなメタなやつはまあ置いておいて,実際問題大喜ときたら最初っからずっと千夏先輩一筋ですから...。

 

 

想いは完全に一方通行であり,雛の出番はそこにない。というか,そもそも雛自身が大喜に対する想いがこれまで不明瞭であって,「位置づけ的にこの娘が2号さんなんだろうけれども,そもそも大喜に惚れている描写すら乏しい」といった物語進行だったからです。

 

そもそも雛はバトルステージに立っていない。読者が勝手に戦場に出向くことを期待射ていただけです。そして大喜は千夏先輩にぞっこんであり,千夏先輩も同居人として一定の評価をしている。眼鏡くんに言われたから(裏の理由があったとはいえ)水族館デートしてあげる程度の親近感はある。

 

 

こんな物語構図では,ラブコメが始まる予感がしない勝ち負け以前の問題です。

僕が「リアル日常系高校生漫画」といったのもそこが理由で,

 

身近にいる素敵な先輩にあこがれる男の子と,部活動と同居生活から見えてくるお互いの姿みたいな,そういう「こんな高校生活あったらいいよな」みたいな中高校生の妄想を逞しくしたくなるような青春物語...

 

みたいなお話がここまで中心となってきた。そして恋の矢印は一方通行...なのでラブコメものとして見た場合妄想の余地がほとんどなかったんですよね,『アオのハコ』は。

 

 

始まったな...雛ちゃんの無自覚な想い...

 

しかしだ。先日の水族館デート決定の時の感情表現といい。

今週の大喜のにやけ顔に対する「その顔ムカつく」発言といい。

 

 

本人が全く自覚しないまま表情に現れる「不快感」

そこに僕ら三角関係愛好者トライアングラーは可能性を見出すんですよ。おお...雛...やっぱりお前本当は大喜のことが...と。

 

本人は全く気づいていない。全くの無自覚である。そもそも不快感を出していることすら気が付いていないのですかあら,大喜に対する恋心なんか自覚しようも無いでしょう。そんな雛に追い打ちのように千夏先輩との第三種接近遭遇が発生する。

 

 

 

千夏先輩がつけた水族館のアクセサリーに,千夏先輩→大喜の可能性を見出す雛ちゃん。そこで思わず大サービスで大喜に対するアシストを仕掛けるわけである。よっしゃー,ここは大喜のいい所をアッピールしてポイント稼いでやるでー!

 

 

やる気満々の雛ちゃんである。

口から語られるのは千夏先輩が知らない大喜と自分の思い出。キャンプの時に助けてくれた出来事を「大喜のいいところ」ポイントとしてアッピールすることでポイントを稼いだつもりである。本人は。

 

駄菓子菓子。

自覚も無いままに大喜との思い出を語るその表情に,本人も気が付いていない感情に気づいてしまう訳だ。千夏先輩が!

 

これまた無自覚の表情からわかる雛ちゃんの本心である。

「どうしようもないバドバカ」と語るその顔には溢れんばかりの好感情が滲み出ていやがる。そうか,いい奴だよね大喜は。助けてもらったことが嬉しかったんだよね,雛ちゃんが!

 


 

 

あんた,背中が煤けてらぁ...てくらい分かりやすいその感情に,同じメスの千夏先輩が気が付かないわけがなかったのであった...。「蝶野さんって」と言いかけて止めたのはさすがに不躾だと思いとどまった良識である。誰がどう見たって雛ちゃんは大喜が大好きだもんね!それが三角形の頂点の一つである千夏先輩に悟られたわけである。

 

起きた出来事だけ見てみれば,完全に恋敵候補に対する無自覚の牽制。静かな宣戦布告である。シュリーフェン・プランのために無自覚のまま戦争に突入した欧州よろしく,『第一次アオのハコ戦争』勃発といったところである。

 

 

この漫画,2号さんの使い方が上手すぎる...!

 

本来であれば,ここで我らラブコメ大好き読者たちは盛り上がってくるはずなのです。

「乗るしかない!ラブコメのビックウェーブによぉっ...!」って感じに。

 

だが悲しいかな。盛り上がるも何も,客観的に見てしまったら雛ちゃんの恋には行先がない。大喜は千夏先輩に一方的に憧れて恋している。千夏先輩も大喜に悪い印象は持っていない。まして雛ちゃんは自分の気持ちにまだ無自覚である...。

 

結局,ラブコメの三角関係における「2号さん」としての雛ちゃんの位置取りは何も変わっていない。そこに恋愛の勝者となる可能性を見出す者が皆無なのも致し方がないところです。雛ちゃんのラブコメは始まる前に終わっている

 

 

 

メタ的に見てしまえば,今回描かれたように蝶野雛というキャラクターは『アオのハコ』のラブコメパートを動かすための「駒」であって,それ以上でもそれ以下でもない。

雛の気持ちを知って千夏先輩が何らかのリアクションを出すことがあるかもしれない。それによって大喜が別のリアクションを出すこともあるかもしれない。そんな展開は容易に想像できますが,でもそれだけです。雛ちゃんがこのラブコメの海を渡り切って大喜と結ばれる約束の地はどこにも見えてこない。

 

これはラブコメにおける2号さんの使い方としては実に一般的なテクニックであり,登場人物が単なる記号に見えてくる良くない兆候です。それはこれまでも何度も繰り返されたオーソドックスなラブコメ文法そのもので,そんなものは読者も見飽きているし,興味もない。今さらそんなので踊る読者はほとんどいない。

 

だが『アオのハコ』の雛ちゃんの位置取りはこれまでの2号さんとはだいぶ異なる様相を見せているのも事実です。普通,この種の三角関係を描くときは,2号さんが最終的に負けると分かっていても「ひょっとして2号さんにも可能性がわずかにでもあるんじゃないか」と思わせるのがテクニックです。

 

直近の例で言えばやはり『ニセコイ』になりますが,かの物語もタイトル,読切の構図など考えれば本作同様に「分かり切った答え」となる作品です。実際作者もそう思っていたみたいですし。

にもかかわらず,読者が少しでも「2号」となる小野寺小咲の可能性を妄想するに至ったのは,彼女の描写設定が良かったこともありますが,もとより主人公は彼女と結ばれる約束をしており,それは物語開始時の想い人と一致していたという背景情報があったからです。

 

ハーレムラブコメである以上,ヒロインに「勝ち目」という幻想を与えなければ恋のレースは興行できない。そういう観点に立てば数合わせの出走馬はともかく対抗馬にも可能性を見出させるものです。そうでなければ読者はニンジンに食いつかないし,作品も応援してくれない,単行本も買ってくれない。それが分かっているからこそ「いかに可能性がありそうに見せかけつつ本命馬に物語を繋ぐか」みたいなテクニックが横行するわけです。

 

 

翻ってこの『アオのハコ』の雛ちゃんはというと,完全に「勝ち目がない馬」なんですよね。雛推しですら勝利を信じられないくらい可能性の目を感じない2号さんなのである。これは中々に稀有なことである。これはどういうことか。

 

思うに,使い古された「ヒロインと対を為す魅力的な2号ヒロインで読者を釣る」という手法の限界から考え出された構図なんじゃないかなと。なまじ全く可能性を見出せないだけに,読者は雛を可愛がったり,応援したりしたとしても「負けたところで最初から分かっていたから作品にヘイトが行かない」。そんなダメージコントロールを考えているんじゃないかとか。

 

ラブコメの面倒くさいところはヒロインレースが繰り広げられるようになると推し同士で作品が分断されるところです。これは『ニセコイ』でも『ぼく勉』でも起きたことで,恋の決着をつけるころには作品に対するものの見方は推し同士で対極的となり,最後は勝者となったヒロインのファンだけが喜び,それ以外は作品に対する負の感情をどこかに抱える。

 

しかし最初から2号さんに勝ち目がない状態なら,2号さんがが負けても読者はすんなりそれを受け入れる。そんな作品のダメージコントロールまで考えていたら凄いと思います。

 

 

一方で,ラブコメとして描く以上は2号さんの勝ち目を「万が一」程度に思わせる部分があったほうがいい。連載漫画の筋道は作者しか知りません。作者が落としどころを見出せるのであれば,「急転直下大逆転」は描けてしまうわけです。その点,作者の三浦糀先生にはマガポケで連載された「先生,好きです。」という先行事例があります。

 

【参考】

先生、好きです。 - 三浦糀 / 【問1】女子校教師になってjkと恋してみたいと一度でも思ったことはありますか? | マガポケ

 

 

普通ならない。でも三浦先生なら...! という謎の感情が奇跡の逆転に賭けたいごく一部の博打打ちラブコメギャンブラーの存在を許してくれるかもしれない。そこまで考えて現在の雛ちゃんの設定だったら,それはそれ面白い気がする(野次馬根性)

 

 

そんな深淵な計画なんかなくても,今回の雛ちゃんの術式開示は『アオのハコ』という物語のラブコメとしての活をいれ,その可能性を十分高めている。2号さんとしての真っ当な働きは既にしているわけで,これ以上の役割ができるならより幸いといったポジションです。 

 

 

くしくも雛ちゃんは大喜と千夏先輩の関係を知りました。千夏先輩(と眼鏡くん)もまた雛ちゃんの気持ちを知り,いよいよラブコメとして動き始めた暴走列車といった感じです。雛ちゃんはこれ以上ない2号さんとしての働きをしていまっせ!

 

ラブコメは魅力的な2号さんがいてこそ盛り上がるというのは世の常ですが,そういう意味では『アオのハコ』という作品は2号さんとしての雛ちゃんをとても上手くつかっているなあ...と思ったり。まる

 

(『アオのハコ』の感想は今回限りの予定です)

  

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*画像引用は中止しました。