現実逃避 - hatena

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漫画感想のブログ

『ぼくたちは勉強ができない』 問76. ゆく[x]の流れは絶えずして... 感想

さてと。週刊少年ジャンプ 2018年第39号』ぼくたちは勉強ができない」 問76. ゆく[x]の流れは絶えずして...  (ぼく勉 第76話)の感想です。

 

 

 

 

ぼくたちは勉強ができない」アニメ化

ぼく勉問.76は巻頭カラー。前回予告で示唆されたサプライズはアニメ化でした。まずは一献,おめでとうございます。筒井先生のコメントはこちら。

 

(巻頭)

最初聞いた時は,何かのドッキリの可能性も考えましたが,本当のようで驚天動地でございます。本当に応援してくれた皆様のおかげ様です。全力感謝です。放送日には,ぼくと一緒にテレビにかじりつきましょうね!

 

(巻末)

アニメ化ですって!?すごい!! 本当に皆さんの応援のおかげです。五体投地で感謝!!

 

 

 

四字熟語連発とは,筒井先生もすっかり桐須美春さんになっておられる。

 

彼らの物語が声を出して,動いて,放送されるなんて,第一話から描いてきた作者の筒井先生も(もちろん読者も)喜びがひとしおではないでしょうか。期待が高まります。

 

 

 

気になるディザービジュアル

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そしてこちらがアニメのティザービジュアル。とりあえず目を引くのが理珠うるかかな。

 

アニメだとどうしてもイメージと実際の描画において差異があるというか,作画的に簡略化されていくものだと思います。

 

しかしこの理珠,とっても美少女に描かれているのではないでしょうか。アニメ用なのか,若干,赤が強めに出ている感じがしますがキャラが強調されていると思います。さすがは第一ヒロインである。

 

そして中央に陣取るうるかですが,日焼け感が程よい色合いである。思っていたより髪の色がピンクよりですが,これもアニメでキャラを強調するためでしょうか。

若干,桐須先生の色に近くなっている気がしますけれど。あと目立つのはやはり胸部でしょうか。さすがDの一族...

 

文乃については若干キャラを簡略化したようにも見えます。初期の毒舌設定をどうすんのかなと思ったのですが,現在のツッコミ系キャラの方向でいくんですかねえ。若干丸く感じます。

まあ,物語が進めば「毎回違う文乃の髪型」をアニメスタッフは作画していかなくてはならないので,キャラの簡略化はやむ無しかなと。

 

でも最大の違いはやっぱり成幸でしょ。

現在の「ヒロイン成幸」風に味付けされていますね。ぼく勉初期のキリッと秀才成幸なんてものは存在しなかったんや...。

まあ現在の成幸のほうがラブコメ主人ぽいというか,毒が抜けて印象は良いですけれど。どうせ最後はヒロイン成幸にするなら,最初からそうしとけってのは妥当な判断だと思います。

 

 

ちなみに桐須先生とあしゅみー先輩は,ティザービジュアルには含まれていないようですね。描いてあるの,既存の筒井先生のデザインだし。ふたりとも登場が後半になるということもあろうかと思いますが,これはいずれのお楽しみですかね。

 

 

詳細は後ほど

監督は岩崎良明さん。アニメに詳しくないので承知していないのですが,過去かかわられた作品を見る限りキャリアの長い方で,ラブコメ経験もお有りの様子。期待できそうですね。

 

放映時期,放映局,中の人はこれからですかね。

 

ちなみに公式サイトができるようですが,ドメイン「boku-ben.com」なのである。「ぼく勉」という略称,いつからか公式も用いるようになったと思いますが,最初に用い出したのは相互フォローさんの一人だったような...。ちょっと記憶が曖昧ですけれど。

 

続報が気になります。

 

 

 問76. 本編の感想

 気になる「サブタイトル」

さて,アニメ化の話はこれくらいにして本編のお話。

まず気になったのは,サブタイトルですね。「ゆく[x]の流れは絶えずして...」

 

ぼく勉のサブタイトルは基本的に"[主語]は...である" のフォーマットが多いです。必ずしもそのフォーマットにならないことも多々あるのですが,末尾がはっきりしないのはこれが初めてではなかろうか。単にアニメ化という区切りだけではなく,お話の転換点という意味付けももしかしたらあるのかなと思ったり。

 

前回は理珠,前々回は文乃にとっての状態の変化,お話の転換点が強調されていたわけですけれど。今回のアニメ化記念巻頭カラーにおいて物語の内容と相まってこの特殊タイトルは中々に意味深である。

 

 

武元うるかと唯我成幸

今回は武元うるかさんのお話。以前,水泳回で地区予選の様子が描かれていたわけですが,そこで言及されていたうるかの国体出場はどうなったんだぜ...という伏線は意外な形で回収されました。いきなりの結果発表である。国体女子400m自由形を圧倒的タイムで優勝とか。

 

それを受けての成幸の反応が自然な高校生の反応である。

 

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同じ中学のよしみで勉強を教える仲で,気がつけば「うるか」呼びも定着していた今日このごろ。手を伸ばせばそこにいるはずだった彼女が国体で優勝し,雑誌の特集に掲載されている。周囲の人間も大騒ぎである。

 

いきなり知人が全国区の人となる。知人が有名人になってしまったときのあの感覚。違和感。身近な人間がどこか遠くに行ってしまったような奇妙な感覚ですね。そんな「変な感じ」を成幸は感じているわけですね...。

 

またこれが後の展開と連動しているのがいいね。うるかが遠くに行ってしまったような感覚,いまは現実のそれではない。しかし,今回うるかの海外留学話がでたことによって,それが現実的な距離として遠くなってしまう可能性がでてきたわけで。そんな対比がなかなかどうして上手い作りだなと思ったり。

 

 

うるかの海外留学話

 そんなうるかの海外留学話ですが。

 

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成幸との別離であることが明らかにもかかわらず,敢えてその道に進むことを選ぶ武元さん。その理由は明確で,そこに成幸との問42においての例のやり取りがあるからですよね。

 

うるか

「以前...ある人に言ったんです やれること全部やってから泣いてやるって」

「どこへ立っていきます!背負えるもん全部背負って...泳げるレーンがある限り!!」

 

 

 

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地区予選,後輩のミスで終わってしまった水泳部の夏。その時の海っち,川っちの涙を思い浮かべながら,自分は全部やっていない。泣くのは全力で最後までやってからという,うるかの強い意志の表れですよね。

 

そして留学するには英語力がいる。それをクリアできるかどうかは分からない。でも最初から諦めるのではなく,「やること全部やってから」と考えたのは,他ならぬ唯我成幸に示した自分の決意に従いたいという気持ちからですよね。

そして高い目標を持つことによって,成幸と勉強することに対する動機づけも補っている。このあたりの段取りはうまいなーと思いました。

 

 

 

そこに以前の桐須先生とのやりとりも加味されて行くのが奥深いです。

 

うるか

「そこに立てるのは才能のあるもののトッケン...ですもんね」

 

 

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国体前に漏らした不安,それに対して「才能のある者がなすべきこと」を説いた元できる娘の桐須先生とのやりとりがここで活きるのもうまいなーと思いました。

 

 

 

そして,くしくも唯我成幸と全く同じ振り返りをしているあたり,意図的な描写でしょうけれども二人のシンクロがいいですねえ。このシーンを思い出すきっかけは違えども,思い描いたことは同じ。ちょっと通じ合っている感がなんともいいじゃありませんか。

 

 

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そんな成幸の想い。

うるかの努力が沢山の人に認められることに対する誇らしさが背景にあるわけですけれど,これは成幸もまた努力の人であるから。そして「できない奴をわかってやれる人間になれ」という亡き父の言葉のとおり彼が生きている証でもありますよね。

 

 

 

うるかが留学の事実を成幸に告げない理由

 

そんな武元さんですが,成幸には海外留学話を伝えないようにお願いしていました。なぜでしょう。2つの理由があると思います。

 

一つは,彼女のこのセリフから分かりますね。

 

うるか

「残された高校生活最後の最後まで今まで通りキョーイク係してもらえたらって」

 

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うるかは成幸にこれまでどおり接してほしいわけですよね。これまでどおり唯我成幸との自然な関係を続けたい。

自分がいずれ海外に行ってしまうこと,簡単には会えなくなること,自分の才能を活かす人生を歩んでいくこと。そういう自分の人生を成幸に意識させて背負い込ませるのではなく,これまでどおり高校生活を共に過ごしてほしいからなんでしょうね。

 

 

もう一つは先に述べたように,成幸に思わぬ負担をかけたくないのでしょうね。

 

海外留学に必要な英語語学力を身につけるとならば,これまで以上に勉強しなければならない。その高い目標を成幸に意識させることで,いままで以上に成幸に負担をかけさせたくない。

ただでさえ,理珠と文乃という合格可能性の高くない二人の面倒を見ている成幸に,さらなる負担をかけさせたくないという思いもあるのでしょうねえ。

 

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そんなうるかの思いと裏腹に,武元うるかのような「すごい人の夢を実現できるよう,その一助となれる自分」を嬉しく思う気持ちを持つのが唯我成幸という男なんですねえ...。つくづく,武元さんはいい恋をしているなと思いました。まる。

 

  

武元うるかの恋に関する考察 

しかし今回のお話を読むと,やはり「ぼく勉」の恋のヒロインレースの本命は武元うるかなんだろうなあということを再確認させられますね。つくづく武元さんは特殊なポジションにいる女の子なわけです。

 

 

例えば他ならぬ成幸に対する恋心もそうです。

 

最近のお話の転機で,理珠と文乃は成幸に対する恋心を認識しはじめたけれども,うるかは物語当初から恋心を抱いている。中学時代から恋心を持っている。水泳を改めて頑張るきっかけをもらっていて,それがいまのうるかと形作っている。

 

 

そして彼女が勉強をする理由。できない娘としての立場の相違。

 

なるほど,彼女もまた水泳をするための大学に行くという「夢」のためにできない「英語」を成幸から学び,夢の実現を図る女の子です。その意味では彼女も「できない娘」である。でもその「できない意味」は理珠と文乃と明確に違う。

 

文乃と理珠の「できない」は,それぞれの夢の実現のためであり,人の心理をわかるようになるにせよ,お母さんの星を探すことにせよ,それは未達成の夢である。

一方の武元うるかは違う。彼女が大学に進んでやる水泳はすでに結果を出している。この先どこまで高みに達せられるかわからないほどである。そういう意味では彼女は「できる娘」なんですよね。

 

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そんなことは例の桐須先生とのやり取りからも,明確に示唆されています。そしてうるかもまた,そんな自分の立場をしっかりと認識している。

 

 

 

明確な対比。明確な違い。できる娘とできない娘。夢を手に掴みかけている娘とこれから掴む娘。そう考えると違和感を感じるんですよね。彼女の「できない」はなんなのかと。

 

物語の文脈的には「できない」ことを成幸とのかかわり合いを通じて「できる」ようになることが一つの軸だと考えられます。表面的に設定されているできない「英語」は彼女にとって夢を達成する手段であって目的ではない。であるならば,うるかにとっての本当に「できない」ことがあるはずです。

 

それはなにか。いま彼女ができていないこと,本当に成し遂げたい夢,それは「成幸との恋が成就すること」ですよね。

 

 

 

勉強を頑張るのも,大学を目指すのも,成幸と一緒とともに過ごしたいからです。なぜそうしたいのかといえば,成幸が好きだからですよね。

 

そんな意味では物語の軸である「勉強」の動機は不純なわけです。そんなところも特殊な立場なわけですけれど。さすがに人魚姫の象徴である武元うるか的ではある。

(参考文献:洋菓子さん「「ぼく勉」考察記事.各ヒロインの『童話との比喩』を真剣に考察してみました。」Comme c'est mignon, 2018-07-11 )

 

人魚姫は王子に恋をした結果,魔女との取引によって自分の本当の姿を偽って近づいたわけです。その代償として声を失い,泡となって海に帰る。偽りの自分を演じる...というのは今回の海外留学を成幸に隠すことといい,うるかに通じたキャラクターとなっています。

 

そして泡となって海に帰るという人魚姫の物語は,うるかが「海」外に留学するという今回のお話に通じるものがある。その意味では彼女の恋は実を結ばないようにも見える。彼女の恋は成就せず,泡となって消えるのかと。

 

 

しかし,これは人魚姫の物語ではなく,ぼくたちは勉強ができない」という物語である。

 

「できない」ことが唯我成幸とのかかわり合いによって「できるようになる」,そんな夢の実現が物語の基軸であるならば,武元うるかの「できない=成幸との恋」は最後に「できる」ことで結ばれる。そんな可能性を改めて感じ取ってみたり。

 

 

余談

 うるかの海外留学の期間について

なんか目に浮かびますよねえ...。

最後にうるかの海外留学のことを成幸が知ってさ。その時,うるかが本当に遠くに行ってしまうことを認識してさ。そして気づく,自分の本当の気持ち...。いや,でも,オレはうるかの夢を邪魔したくない。それを実現させてやりたいから行って来い,うるか!...みたいな流れ。

 

 

さて,そのうるかの留学ですけれど。これ,進学の意味の海外留学なのかしら。

 

というのは,学園長はこう言っているんですよね。

 

学園長

君に海外留学の話が来ている。

君の志望する音羽大学と交換留学制度を実施している。

この度の君の成績を見て向こうから是非に...という話。

しかし...しばらく向こうで過ごすということになる以上(略)

 

 

「しばらく」という表現は数年というニュアンスよりも,より短い期間のニュアンスに感じるんだけれど,そこんところはどうなのかな。

 

それに対してうるかは「残された高校生活を最後の最後まで今までどおり」と言っている。うるかの念頭にあるのは「卒業後の進学先としての留学」であることは明白ですけれど,それに対して周囲が特に何も言及していない。まあ普通に考えると,進学という意味での「海外留学」でいいんでしょうけれどね。

 

これで実は高校生活中の「短期留学(数週間)」というオチだったら笑える。

 

 

 表紙と扉絵について

さて今更ながら表紙と扉絵の話。

 

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まず背表紙ですが,いつもの緒方・古橋コンビですね。「ぼくたちは勉強ができない」はラブコメであるけれども,軸は勉強による夢の実現である。その意味で,やはりメインヒロイン扱いはこの二人ってのは徹底されていますね。

 

 

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そして表紙をみる限り,安定の第一ヒロインは「必ず」緒方理珠である。この序列は絶対に崩れないですね。五人娘の序列は必ず①理珠,②文乃,③うるか,④真冬,⑤あすみの順序。単純に登場順かもしれませんけれどね。

 

 

 

そして扉絵

 

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まず①緒方さんですが,ちんまくてお可愛いですね。個人的にこどもっぽいのは女子として魅力を感じないのですが,背格好がちんまいのはお可愛いと思います。

そして久しぶりにうどん。「うどんはもういいよ...」の声を反映したのか,しばらくうどんネタは封印されていたのですが,ここはキャラ付けの象徴としてうどんなんですね。

 

次,②古橋さん。わかっていたけれど,袴が似合いますね。手に持っているのが算術なところもポイントですかね。彼女の夢を実現するためのプロセスぽくて。

そういえば,彼女は天文学というか星座とかを覚えていますけれど,理科は大丈夫なんですかね。まあ地学や生物なら暗記物みたいなものですから,大丈夫なのかもしれませんけれど。彼女の壁は常に数学だからこその算術なんでしょうか。

 

次。③武元さん④桐須先生。うるかは動きがあって彼女らしいですね。手で真冬先生を引っ張っているところも,才能の件での二人のやり取りの結びつきを暗喩しています。

てかこの怠慢,先生ぽくないですね。どちらかというと他の娘たちと同輩的である。これって,成幸先生に導かれる「できない娘」たちという描写の扉絵なのかな,と改めて感じました。

 

最後に⑤あしゅみー。おさげ姿の袴なんで,しっかり女の子しているのですけれど表情の印象かちょっとボーイッシュに感じます。彼女の中性的な魅力がきちんと出ていて,いい絵ですね。

 

 

予告の謎

そして予告。結局,次回はオープンキャンパスなんでしょうか,それとも師匠への誕生日プレゼントなんでしょうか。

 

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まずうるかとのオープンキャンパスの場合,進学の意志のない音羽大学に行くことになるわけで。文脈的にあまり意味がないように感じるのである。もっとも,成幸に隠していることに葛藤するうるか,という物語描写にするならばそれはそれでアリなきもする。

 

進学すべき大学を事前に見るのは重要,とオープンキャンパスにいくわけだけれども,実はここを進学希望とするわけではないという矛盾。その良心の呵責にうるかが悩むというのもポイントだし,そこに成幸が違和感を感じるというのも物語として面白い。

 

 

師匠の誕生日プレゼントの話はいつでもやれるからね。なんとなく流れでオープンキャンパスな気がしますが。他のヒロインについても,最終的には進路希望を定めなければいけないわけですし,今後しばらくオープンキャンパス編が続くのかなと思ったり。

 

というわけで,再度まる

 

*画像は『週刊少年ジャンプ』2018年第39号 ぼくたちは勉強ができない 問76.より引用しました。

 

ぼくたちは勉強ができない 8 (ジャンプコミックス)

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