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吉河美希先生 『カッコウの許嫁』 感想 : 懐かしくも新しいラブコメ,始まる

さてと。

「カッコウの許嫁」 第1話 ~ 第5話 の感想です。

 

 

週刊少年マガジンの看板ラブコメ「五等分の花嫁」が大団円を迎え,マガジンラブコメリレーのバトンを託されたように始まっている「カッコウの許嫁」さん。

 

マガポケ定期購読しているので当然のように読んでいるのですが,どことなく懐かしい感じもありつつ新しい部分もある。そんなラブコメであります。本日2/26をもって第5話まで更新されているところですが,せっかくなので簡単にレビューというか感想をば。

 

 

 

関連コミックス  

カッコウの許嫁(1) (講談社コミックス)

カッコウの許嫁(1) (講談社コミックス)

  • 作者:吉河 美希
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/05/15
  • メディア: コミック
 

 

 

 

 

「カッコウの許嫁」の懐かしき世界観

 

本作は良くも悪くも懐かしきハーレムラブコメが全部詰まった作品だなと思います。

 

作品を読まれた方は現在の状況を承知されていると思いますが,簡単にまとめておきます。

 

主人公の海野凪に訪れる,唐突な人生の大転換。親と思っていた人は育ての親であり,本当の両親には自分と取り違えられた女の子(エリカ)がいる。そして凪は正式な紹介を受ける前に天野エリカと出会い,ひょんなことからニセの恋人を演じることになる。

 

そんなその場限りの「遊び」だった偽物の恋人関係は,再会した本当の両親たちの冗談みたいな話し合いによって「許嫁」にされてしまう。かくして本物の許嫁なのに気持ちはまだ偽物の関係がはじまったのであった....。

 

そして本当は血縁関係に無かったと知った「妹」の,主人公が片思いする学年1位の才女・瀬川ひろ...。

 

 

許嫁!

本物とは言えない偽物の恋人関係!

血縁のない妹!

片思いの相手...!

 

 

これでもか!と言わんばかりのラブコメ要素のごった煮は,言葉を取り繕わず言えばハーレムラブコメで用いられる文法そのものです。というか,ぶっちゃけ「ニセコイ」的な世界観です。

 

  • 偶然出会った二人が親の取り決めによって許嫁になる
  • 共に暮らすことになるが,当人たちは本物の恋人のつもりはない(偽物の恋人)
  • 主人公には他に片思いしている人がいる

 

といった要素だけならべてみても,やっぱりニセコイに似ている。ついでに言えば凪の育ちの家である海野家がヤンキー系家系であることも「変わったご家庭」だった一条さんに似ているし,裕福な天野家に育ち,そうした世界観を背景とした行動をとるエリカは「ちょっと特殊なお嬢様」だった桐崎さんに通じるものがある。

 

 

 もちろん,「カッコウの許嫁」はカッコウの許嫁,ニセコイとは別の作品です。もし共通点があるとするならば,それはニセコイにせよ「カッコウの許嫁」にせよ,良くも悪くもラブコメの王道を取り上げているからということに他ならない。

 

というわけで,「カッコウの許嫁」を考える時にはどうしてもニセコイについて振り返っておく必要がある。

 

...

......

 

あんまり別作品のことを滔々と語っても仕方がないので軽く済ませたいのですが,割と大事なことなので少し「ニセコイ」という作品について言及します。

 

「ニセコイ」はニセコイである意味ハーレムラブコメの歴史に残る作品である。ハーレムラブコメの要素をこれでもかと詰め込み,一対多のラブコメディをとことん描き切る。その着地の難しさまで含めていろんな意味で伝説のラブコメです。

 

関連サイト(外部サイト)

www.shonenjump.com

 

それはヤマカムの山田さんもおっしゃられていたけれど,「ニセコイ以前」と「ニセコイ以降」で全く異なると言われるような,ある種ハーレムラブコメの基準点となった作品です。どういうことか。

 

ニセコイ以前の作品の多くは,主人公に好きな人がいて,ヒロインが複数いてその三角関係なり多角関係を楽しむといった傾向がありました。ニセコイもそういったお話の一つでしたが,最終的に最初に好きだったヒロインとは別のヒロインを選択することで,読者側のさまざまなレスポンスを招いたのは記憶に新しいことでしょう。

 

 

それがニセコイ以降のハーレムラブコメ...例えば「ぼくたちは勉強ができない」や「五等分の花嫁」は主人公に最初から好きな人を設けないことで物語を組み立てていきました。これはこれまでのラブコメとは違います。

 

作者先生方の意図は推測しかできませんが,恐らくは「物語のプロセスを通じてただ一人愛する人を選ぶ」,そういう構造にすることにより恋愛の決着方法について妥当性読者共感性を得られることを期待したのだと思います。

 

それは既に物語が閉じている「五等分の花嫁」でもうまく機能したと個人的には思います。これらの作品はある意味「ハーレムラブコメ」の新しい着地点を見出したわけです。

 

 

しかし!

この「カッコウの許嫁」は敢えて...敢えてその新しい文法を使わなかった。旧時代の,古のニセコイ時代まで遡る「主人公には片思いのヒロイン」をあてがい,その上で魅力的なヒロインたちを主人公にぶっこんでコメディさせていく。

 

懐かしくも感じる古き良きラブコメの世界観を「カッコウの許嫁」からは感じます。

 

 

「カッコウの許嫁」の新しい可能性

 

しかしです。

繰り返しになりますが,「カッコウの許嫁」はニセコイではありません。同じことをやるならニセコイを読めばいいのです。吉河先生が新たにこの物語を描き始めたからには,そことは違う作品がそこにあるはずである。

 

 

まず主人公のと片思い相手の瀬川ひろ

 

 

腕力も兼ね備えた勉強熱心な少年の想い人は学年1位の才女・瀬川ひろ。そんな彼女に片恋慕する一方で,その相手となる瀬川さんはまた彼女なりの理由で学年1位に固執しています。

恋する人でありライバルでもある。まあライバルというだけならかぐや様でも使われた文法でありますが,「片思いの相手は主人公を恋愛的に好いていない」というのが大きな違いです。最初から両片思いということでもないので,最終的に凪と瀬川さんが結ばれなくても特段問題ない構造になっています。

 

 

そしてヒロインのエリカ

主人公・凪を恋愛的に好いているわけでもないが,無理やり一緒にいる時間を作られること,何気ないちょっとしたことで相手の良い部分を見出していくこと,そのあたりは桐崎千棘とよく似ています。

 

一方で桐崎さんが持っていた「ツンデレ属性」やら「力は正義なり(違)属性」は影を潜め,良くも悪くも自由に育てられた裕福なお嬢様といった描かれ方をしています。そういう意味では過去によく流行った「ツンデレ」といった遺物は捨て去っており,ヒロインの読者共感性を高める設定をしていますね。

 

 

 

そういう意味ではエリカには今後描かれるエピソードによって「読者共感性」が積み重ねられやすくなっており,後追いが最終的に追い抜いてゴールするというラブコメの王道がやってきても全くおかしくない構造になっています。

 

 

そして伏兵,妹の

一見して幸から感じられる「報われなポジションの女の子」感は第1話読んだ段階で胴にも隠せないわけですが,さてどうだろうか。

 

ブラコンの妹,というありがちな設定でありつつも「取り違え子だったから血は繋がっていませんでした!」ということでリアルエンドを可能にする。この設定はなかなか上手いなと思います。血がつながっているから絶対無理!といった唯我水希正妻とは異なり,真の正妻になれる可能性がある。

 

 

そんな想い人が一つ屋根の下にいるという,絶対的有利でありながら妹扱いされるという絶対的不利を兼ね備える。そんなヒロインの位置づけに物語としての面白さを感じる。

 

その意味では「こんなん取り違え子同士が結婚して終わりでしょ」と思わせつつも,いやひょっとして...もしかして...!という可能性を残している分,これまでのハーレムラブコメよりは恋の行く末を堪能できそうな可能性がある。

 

 

そしてこの「カッコウの許嫁」のもう一つの特徴がある。それは家族である。

 

いやそれ五等分の花嫁もそうじゃん,と言うことなかれ。本作品は子どもの取り違えから始まっているわけですが,その設定により物語は単純に凪とエリカだけの関係で終わらないのである。

当然,「生みの親」と「育ての親」という問題を二人とそれぞれの家族に突き付けていく。海野家と天野家という二つの家族がどんな風になっていくのか。そこも本作品の一つの焦点である。

 

二つの両親に対する様々な気持ち。同じ屋根の下でくらす「許嫁」なり「血のつながらない家族」への想い。凪とエリカ,凪と幸,あるいは凪とひろといった組み合わせが,新たにどんな家族を生み出していくことになるのか。

強引にセッティングされた男女関係だけではなく,そこに二つの家族の想いが加わることで,物語の幅はとても広くなりそうである。物語の可能性を感じるのである。

 

古くて懐かしい題材を取り上げながらも,新しい物語を描いていこうとする。そんな吉河先生の手腕に期待大である。まる。

 

あとがき 

そんな意味で,懐かしくも新しさを感じるラブコメとなった「カッコウの許嫁」。この先どんな風に展開していくのですかね。

 

メタ的に読んでしまうと,先に触れたように「こんなんタイトルから言っても取り違えた子供同士が結ばれるに決まっているでしょ」と思いそうになりますよね。まあ実際そういう流れが一番「座り」がいいですし。

 

 

 

とはいえ,そんな見え見えの手をつかったのではラブコメの楽しみが半減である。ラブコメの面白さはそのプロセスにあり!

どのように物語が帰着するのか,その過程を追いつつ時に予想(妄想)したり,その結果を物語を通じて確認することによってワクワク・ドキドキを増加させていく。それがラブコメの楽しみの一つである。

 

 

 

先日終わったばかりの「五等分の花嫁」だって,第1話を読んだときは誰が花嫁だと想像しましたか。

 

 

これは第1話の最後のコマですけれど,第1話読んだだけなら「こんなん真ん中の子が花嫁に決まってんじゃん」。そう思いませんでしたか?(いや,それは人それぞれでしょうが)

 

 

ラブコメは「設定」や「要素」だけを読むものではない。

その人物たちが描く物語,物語のプロセスを通じて描かれるのである。

 

 

そういう意味では,まだ先の見えない「カッコウの許嫁」という物語に,とてつもなく期待が高まってくるのである。

 

というわけで,再度まる。


  

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最新コミックスなど

 
カッコウの許嫁(1) (講談社コミックス)

カッコウの許嫁(1) (講談社コミックス)

  • 作者:吉河 美希
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/05/15
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*画像引用は中止しました。