現実逃避 - hatena

「かぐや様は告らせたい」の感想を書いている漫画感想ブログ

『ジャンプの正しいつくり方!』 感想

週刊少年ジャンプッ!――― それは勇気!努力!友情!その他諸々をテーマとした(実はそんなテーマはない),いわずと知れた少年漫画の王者であるッ!


この世に生を受けた少年の多くは一度は『週刊少年ジャンプ』を手に取り,そのストーリーに熱中し,ある時はそのバトルに手に汗握り,またある時はその物語にしんみりとし,またある時はヒロインたちの素敵な姿に何かを熱くさせてきたのであろう。


そんな『週刊少年ジャンプ』の齢も数十年。黄金期の600万部時代ははるか昔,未だ週刊少年誌ナンバーワンの座に輝き続けるジャンプといえども,読者の減少からは避けられなかったのであった。それは仕方が無いこと。そもそも少子化やらなんやらで読者層が薄くなっているのである。そんな中で,より多くの人に『ジャンプ』の作品を読んでもらいたい...。



きっとそんな願いがこめられて作られたのが『少年ジャンプ+』なのであろう。

少年ジャンプ+』は作今隆盛著しい電子版の漫画として登場し,瞬く間にデジタル少年漫画の雄とのし上がったのであった。これはデジタルメディア時代における現在の読書スタイルにうまくマッチングできた好例ということができる。スマートフォンタブレット,パソコンから簡単にジャンプの漫画が読める。課金すれば『週刊少年ジャンプ』電子版を読むこともできる。


電子の時代,紙に印刷された雑誌としての『ジャンプ』を手に取ることが無くなった大人たちにとっても,もう一度『ジャンプ』を手元における。そんな仕掛けとしての『少年ジャンプ+』は大成功といっていいほどの成果を収めたように思うのである。事実,少年時代をはるか昔においてきたこの老人のayumieにも,気軽に,そして継続的に,『ジャンプ』作品を楽しむことができたのは『少年ジャンプ+』さんのおかげといって過言ではなかろう。



そんな『ジャンプ+』の中に,最初から掲載されている一つの作品があった――― 『ジャンプの正しい作り方!』(サクライタケシ先生)である。



 
サクライタケシ『ジャンプの正しい作り方!』集英社,2015.7.(ジャンプコミックスISBN:9784088803746



週刊少年ジャンプ』という,毎週200万部以上の冊子100万単位のアプリ読者を持つこの一大少年漫画雑誌はいかにして出来ているのか。そんな露伴先生もびっくりなくらい好奇心がツンツンつつかれるテーマを扱ったルポ漫画である。


ぶっちゃけた話,『ジャンプ+』に連載されている作品の中で,もっとも楽しみにしていた作品であった。そんな『ジャンプの正しい作り方!』がついにコミックスになって帰ってきたということで,もちろんAmazonさんで予約しておいたのであるが,なぜか発売日には発送されずに(いわゆるkonozama),受け取れたのが週明け月曜日という。おかげさまで,手に取った時には思わずガラバド化せざるを得なかった。



ついにやってきたかー!待たせやがってー!!



(いや,本当に待ちかねたんです。)



...
......
.........




というわけで,前置きが長くなりましたが『ジャンプの正しい作り方』感想です。








とまあ,感想を書きたいと思っていたのですが,なかなか書くことが出来ず本日に至りました。なにげに弊ブログも開設9年目に突入したんですが,その最初の感想記事が「正しいジャンプの作り方!」というのも嬉しいではありませんか。

ただまあ,正直ですね。きちんとした感想は既に『社会の毒』さん本日公開されていますので,そういう切り口で感想を書くのは被っちゃうかなと。なので,今回は『正しいジャンプの作り方!』を別の角度で感想を書いてみようかなというのが今回の所存です。




この漫画は皆さん既にご承知のとおり,「週刊少年ジャンプ」がどのようにして作られているのか,作者のサクライタケシ先生と担当編集者のM山さんのコンビで進められていくルポ漫画です。




取材をして,その結果を漫画にしていくわけですけれども,そこで取り上げられている題材は,ジャンプ読者であればどれも関心の高いものばかり。そのこと自体も漫画としての価値を高めているわけですが,それに加えてこの漫画化における過程がすばらしく面白いのですよ。



ポイントは4つあって,


1.作者のサクライタケシ先生の「ジャンプが素晴らしい

2.小道具としての「おにぎり」がいい味だしている

3.果てしない「嫁さんが微笑ましい

4.取材過程の担当編集「M山さん」との掛け合いが楽しく描かれている



この4つのポイントが実に良い(ベネ)のですよ。



まず,サクライ先生の「ジャンプ愛」。これはね。半端じゃないと思いますよ。

漫画家の道を離れられて3年,おにぎり屋にお勤めをして,ご結婚もなされて。安定した明るいシンコン生活を送っているところに「ジャンプ製作のルポ漫画作らない?」と振られても,なかなかその世界にもう一度飛び込めるものじゃございません。定職につきながら,週5pの締め切りを守るなんて,連載途中はほとんど睡眠も取れないくらい大変だったんじゃないでしょうか。

事実,睡眠時間が15分とか,倒れて動けなくなったとか,事後報告の形で漫画仕立てで読むから「笑い話」のように見えますけれど,相当しんどかったんじゃないですかね。そんな思いをしてでもサクライ先生が「ジャンプのルポ漫画」をお引き受けになられたのは,きっと『ジャンプ』が大好きだったからなのでしょう。





ちょっとした一コマ一コマの描写にへヴィな『ジャンプ読者』であることを窺わせられましたし,読んでいて「ああ,ジャンプが大好きなんだな」とひしひしと伝わってくる。そのテンションがジャンプ読者の末席たるこの僕にも伝わってきて,なんというか,こっちまでワクワクしてくるという。そんな雰囲気が全編を通して感じられるのです。



そんなサクライ先生の漫画を面白くしている要素として,「おにぎり」「嫁さん」の存在があります。


もとより,おにぎり屋さんのサクライ先生。それを逆手にとって,出会う人出会う人に「推しおにぎり」を確認したり,ジャンプ製作ルポの合間に「おにぎり」に関する話題を流したり。この「小道具としてのおにぎり」がなかなかいい味出していて,お話を単調にしないで話題に緩急をつけているんですよね。これはうまいなあと思いました。





ルポを進めていく過程で,ついにはたずねるまでも無く「推しおにぎり」を答えてくれるまでになった小道具としての「おにぎり」。取材の導入に「おにぎりネタ」を入れていったり,所々のコマ描写で「おにぎり」がでてきたり。おにぎり職人兼ジャンプ漫画家たるサクライタケシ先生の面目躍如ではありませんか。なんというか,ジャンプの作り方=おにぎり」的な一種の一体感が表れるくらい,うまく小道具として機能していたと思います。




そしてもう一つ。話の節々で出てくるお嫁さんの存在。

もとより新婚さんということで,ラブラブカップ家庭なんでしょうね。それが取材の合間の「自宅モード」における描写において,「嫁さん」の出現率が高いのなんのって。ちょっと天然なのか漫画描写なのか(前者っぽい)あれなんですけれど,お話の随所に「嫁さん」が出てきてですね。それが微笑ましいのってなんのって。






「ジャンプの正しい作り方!」サクライ先生の久々の漫画のお仕事で,それがインターネットを通じて配信されるわけです。そんなたった5pという僅かなページ数の中で,話の節々に「嫁さん」が登場する。お話の最後を〆たり,メロンパンネタが出たり,「漫画としての『ジャンプの正しい作り方』」を構成する一つの要素としてうまく使われている。

その描写がまた,なんというか「ああ,本当に奥様が大好きなんだな」って伝わってくるんですよね。ほら,自分みたいに少しくたびれている人間からすると,そんな新婚さんがまぶしいのなんのって。なんか,仲のいい夫婦っていいなあって思うと同時に,お二人とも幸せになってほしいなあとか思わせられます。




こうした要素を全てうまくミックスして作品としての「ジャンプの正しい作り方!」を面白くしているのが,漫画自体のテンポの良さなんですよね。


事実をただ淡々と描いていくのではなくて,ルポの内容を「漫画」として組み立てていく。この構成が実にいいんですよ。それを助長しているのが,担当編集者の「M山さん」との小気味よい掛け合いなのです。


基本,サクライ先生がボケて,M山さんが突っ込むんですけれど,このテンポの良さがとてもいいんですよ。「ジャンプの作り方」に関して新しいことを知る。それに対してサクライ先生がハイテンションで反応する。それを冷静にM山さんが突っ込む。この流れがとてもいい。

ルポの中身は製版,樹脂版の作成,印刷,製本,etc...と極々まじめな内容なのに,それがとても面白く感じられたのは,この二人の掛け合いを中心とした人物描写がとても生き生きとしていたからではないかと思います。もちろんリアルではごくごくまじめな取材が行われていたんでしょう。それを「漫画」として完成してくれたのは,サクライ先生の技量と担当編集のM山さんのお力なのだろうなあと思ったり。


さて,普通に漫画を読んでいると,「M山さん,サクライ先生に厳しくね?」とか感じちゃうかもしれません。もちろん,ジャンプ編集者様からみれば多くの漫画家さんのお一人として,厳しく編集のお仕事をされただけかもしれませんけれど,その実きっと二人はとても仲良くこの作品を作られていたのだろうなあとヒシヒシと感じられる。まさにバディというか,俺が描いて俺が支える的なものを感じられました。(違ったらスイマセン)


それがはっきり分かるのが,最後の帯ですよ。




実は作品中,M山さんは最後までサクライ先生のことを「サクライ君」と呼び続けています。

実際にはどうだったのか分かりませんけれど,きっと本当に「サクライ君」と呼んでいたのでしょう。こういったら失礼な言い方になりますし,事実と違ったら土下座もので謝りますけれど,まあ職業漫画家ではないサクライ先生に対して,少し指導的立場で接してこられたのかもしれない。

それが最後,こうした形で「ジャンプの正しい作り方!」が完成したときに「サクライ先生,本当にお疲れ様でした!」とねぎらいの言葉をかけているのです。漫画家「サクライタケシ」氏に対し,作品をやり遂げたことに対する敬意。一人の漫画家として,担当編集者のM山さんの感謝の念愛情が伝わってくるじゃありませんか。(違ってたらスイマセン)



それは,単行本刊行後に『少年ジャンプ+』に掲載された特別編でも描写されています。
できあがった単行本が売れるかどうか,M山さんとサクライ先生が見に行くわけですよ。新宿界隈の書店まで。なかなか手にとってもらえなかった「ジャンプの正しい作り方!」がついに手にとられた時。







その後の反応がとても良いのです。(それは是非『少年ジャンプ+』でご確認ください)
いやあ...読んでいるこっちまで嬉しくなってきてしまいます


こんな二人の人間関係がなんとも小気味よく,気持ちの良い有様で,一読者としても漫画家と担当編集者による「正しいジャンプ漫画の作り方!」を見せてもらったなあとしみじみ思うのです。


なんというか,ここで終わりだなんてもったいなく感じる面白さだったので,ぜひぜひ続編を期待したいですね。





(おまけ)

カバー表紙の下には是非単行本を買われて確認してほしい,表紙と裏表紙があります。その裏表紙なんですけれど,担当編集者としてM山さんの名前がある。てか,何でこんなところまで「M山」表記なの!?ここは普通にフルネームで「いいジャン!」とか思わなくもないですけれど,これが遊び心なんですかね。最後まで楽しかったです。





(おまけ2)

共同印刷編ででてきたN藤さんへのファンレター




え....
ファンレターって,編集者様にだしてもいいのか。ほら,僕,こんなブログ書いていますけれど,古味先生にファンレターとか恐れ多くて出せないんですよね。ファンレター出せる人ってすごいわ。僕なんて古味先生にあったら土下座して「いつもこんな感想書いてすいませんでしたー!」としか言えない。だからファンレターを書こうとしたらきっと謝罪文になってしまう(ちょ)

そういう意味では先生を支えられている編集者の方には「いつもありがとうございます」って感じでファンレターが書けそうなんですよね。元担当編集者のS藤さん,現担当編集者のO槻さんになら書く勇気がわくかもしれない。あ,いらないですよね。うん,分かってた。


・・・てか,サクライ先生にファンレター送れよ>自分



(おまけ3)

作中,しばしば「おにぎり」を食べるシーンが出てくるんですけれど,こっちまでおにぎりが食べたくなってくるというかね。何気にジャンプルポ漫画で「おにぎり需要」を喚起しているなんて,そこに痺れる憧れるじゃありませんか。


 


なお奥様は,ニセコイの大ファンな模様(推しヒロイン:小野寺さん)。
どうぞ,『現実逃避』もご贔屓に!(ちゃっかり宣伝)

なお僕の「推しパン」はきな粉揚げパンです。




ジャンプの正しい作り方! (ジャンプコミックス)は全国の書店で絶賛発売中。書店まで行っている暇がない人はAmazonさんをはじめネットでも買えますよ。



いやいや,はじめて自分の著作が世に出る時って本当にワクワクするんですよ。僕は単行本なんて出したことないですけれど,出版物に自分の書いたものが載るって時にはやっぱり嬉しかったですから。サクライタケシ先生の喜びもひとしおではないでしょうか。中身もとても面白いですから,ジャンプ読者の諸兄であればぜひ買ってご一読されることをお勧めします。


で,印刷版と電子版の違いはいろいろあったんですけれど,やっぱり「紙の本」になるってのは出版したなあという感覚がありますよね。電子書籍はとても便利です。スマホでも読めるし,画像引用もしやすい・・あ,それは僕がブロガーだからだけれど。でもやっぱり物としての書籍が手元にあるってのはものすごく感覚が違いますよね。


せっかくだから『週刊少年ジャンプ』みたいに一折ごとに色紙を代えてみるとか,そんなお遊びがあったら面白かっただろうなあとか思いましたけれど。まあアレは再生紙なんで,コミックスみたいに長期保存を考える図書には向かないのでしょうね。モノクロ版のコミックでどうやって折の色変化を表現するのかと思ったら,まさかのテクニックに正直感動しました。最後まで楽しかったです。




何はともあれ,サクライタケシ先生,M山さん,素晴らしい作品をありがとうございました。
サクライタケシ先生の次回作にご期待しております!