かぐや様は「1」揃い!
かぐや様は第111話を迎え,9/19には第11巻が発売されます。
アオリによれば現在,日本の全週刊漫画誌で売り上げNo.1 ラブコメらしいですが,さもありなん。そんな第111話のタイトルは「1年生 春」。ほほう,全て1で揃えて来ましたね。赤坂先生と担当編集の本気を感じます。
そんな巻頭表紙は2人が出会った頃,1年生の4月当初の一シーン。
階段の上に立ち歩みを進める四宮かぐやの目は今と同じルビー色の美しい目をしていますが,そこに今の恋するかぐやの幸福感は一切なく。冷たく,人より高い位置で下々の者に目を向けることもない,そんな孤高の氷のかぐやがそこにいます。
そんな四宮かぐやを見上げる白銀御行もまた,今のような自信に満ち溢れた力感も無ければ目力もありません。どことなく自信なさげに殿上人を見上げるその姿に,春だというのに少しさびしさを覚えます。
(追記)
...そういえば,今回のサブタイトルは「主語・述語」関係にないけれど,これは四宮かぐやも白銀御行も「なにもしたいと思っていなかったから」なのかもしれないね。
今回は,そんな二人の天才が恋愛に落ちてアホの子になる前の物語。
白銀御行 in 秀知院 @1年生 春
以前から疑問だったことの一つが「なぜ白銀御行は秀知院を選んだのか」ということでした。そりゃそうだよね。工場はつぶれ,母親は家族を置いて出て行ってしまう。そんな状況下において金持ち学校の秀知院になんで進学したのかと。
なるへそ。
親父が勝手に出願したんかい...。まあこれまでの背景からみて特待生枠であることは想像がついていたわけですが,今回のお話でそれは裏付けられました。そしてもう一つ,秀知院進学は御行の主体的選択ではなかったというわけですね。
そんな「進学の経緯」が1年4月時における卑屈な態度につながっているわけだ。金持ち・権力者の子息女に囲まれ,それだけで身の置き所がないことに加え,純院・混院のヒエラルキーががっちり決まっている。
主体的選択の結果ならいざ知らず,親に決められ成り行きで入った学校がそんな「面倒くさい」学校だったら,そりゃ卑屈にもなるわ。
ゴミ置き場の隣のリヤカーに腰を掛け,半額のパンを一人噛み締める。別にいじめられているわけではない。でも区別はされている。そんな虚しいスクールカーストの中で,周囲を呪いながら荒ぶってしまうというのもさもありなん,という感じがします。
ふむ。
生徒会に入る前の白銀御行はこんな世界に生きていたのか。考えてみれば,現在の白銀御行の立場を支えているのは学年1位の学力であり,生徒会長というその肩書である。それがなかった1年生の4月当初はそりゃ居場所がなかっただろう。
そんな「面倒くさい学校」には四条家のご令嬢,天才ピアニスト,指定暴力団組長の愛娘,そしえ四宮財閥総帥の長女...秀知院学園外では出会うこともないような面々が勢ぞろい。なんか不思議な気がしますよね。四条眞妃,藤原千花,龍珠*,四宮かぐや...今ではおなじみの面々がこの当時の白銀御行にとってははるか孤高の人物たちだったというのですから。(*名前訂正しました)
そうした人物たちを十把一絡げにして「鼻持ちならない」「七光りのボンボン」と認識していたというのも,当時の白銀御行の「世界の狭さ」が感じ取れます。
秀知院学院・先代会長の登場!
しかし捨てる神あれば拾う神あり。荒ぶる白銀御行(1年生)の前に現れしは秀知院学院先代会長その人である。
ほほう。こいつが先の会長。
胸に輝く純金飾緒が秀知院学園生徒会長の証である。こいつもまた,なかなかのイケメンである。さらっとした長髪を整えて学帽を被るその姿はある種「王」のような雰囲気がなくもないのである。
白銀御行に声をかけた経緯が真実か否か,続きを見てみないと何とも言えないところですけれど。「生徒総会の大立ち回り」とやらでは上級生との関係がぎくしゃくしたらしいとの情報もあるゆえに,今回のお話だけでは何とも言えない部分がある。
しかしまあ,声掛けの最初の意図はともあれ,結果として白銀御行はのちに生徒会長となり,秀知院学園の一つの象徴として生徒一同を率いる人物に成長したわけです。
先代生徒会長の意図は純粋に能力のある者を引き上げ使いこなす...そんな意図であったのだと現時点では感じます。白銀御行が会長となった時に石上やミコちゃんをある種「救って」その能力を活かせる立場に置いたように。
とはいえ,この時点での白銀御行には学力の裏付けもなく生徒会長の権威もない,最底辺カーストの貧乏子息という認識しかない。先代生徒会長のお誘いにも消極的です。
ふむ。
この時の白銀御行は「持っていないこと」に対してあきらめていたんだね。無いものは無い。持たない者として卑屈になるばかりで,持たないなら持たないなりに「何とかしよう」という気概がなかったわけです。
いま,四宮かぐやが恋している「誰に対しても見返り無く注げる優しさ」や「天才と並ぶほどの努力の努力をする人」の面影はそこにはありません。
自分を持っている人とは
先代生徒会長曰く,
自分を持っている人は簡単に動かない
先に挙げられた「秀知院の中でしか知り合うことがないような人たち」は自分を持っている。ここでいう自分とはアイデンティティのことなのか,誇りのことなのか。才能や立場を持つものだけが有する圧倒的な自信のことなのか。あるいは為すべきものを持つ者のことなのか。
漫然と生徒会の清掃活動を手伝う前に,白銀御行は思う。
簡単に動いている俺は......自分を持ってないって事なんだろな
それはある意味で正しく,ある意味で正しくない。
なるほど,プライドと自信,為すべきことはこの時の白銀御行にはなかったかもしれない。しかしそういうことではなかったのである。
動かなければならない時,どうするか。何をすべきか。
白銀御行もまた「できない理由」を並べては動くことができなかった。それでは立場を慮って騒ぐだけだった他のボランティアの学生と何ら変わらないのである。
自分を持っている人は動かないし,動けない。白銀御行もまた「泳げない・助ける方法が分からない,そんな能力も才能もない自分」を持っていてそれを理由に動けなかったとも言える。逆説的だが,白銀御行もまたそんな自分を持っていたからこそ簡単に動けなかったである。
しかし四宮かぐやは「動いた」。
それはかぐやの口から打算的なものであり,後々の「見返り」を期待しての損得勘定によるものであることが明言されています。
でもそんなことは白銀御行には分からない。白銀御行は四宮かぐやの姿を見て感じたのである。
「自分を持っている人」とは家が金持ちだとか生まれつきの才能があるとかいう立場のことを指すのではない。動くべき時動ける人こそ「自分を持っている人」であり,それができる人間はたとえ泥にまみれてもきれいだ,と。
ここに至って白銀御行は自分の為すべきことを認識する。
あのような「動くべき時に動ける人」になりたい。御行にとってそんな人物の象徴として「四宮かぐや」が認識された瞬間である。
ここに四宮かぐやを「遠く,天上人のような存在」としてではなく,自らを高める目標となる人間と見定めたわけですね。ここに生徒会長・白銀御行の原点があったというわけだ。なるほどー...。
四宮かぐやと白銀御行
しかしこうなると,少し話はややこしくなるのである。
四宮かぐやが白銀御行に惚れたのは,その見返りを求めない優しさを教えてくれたこと,「動くべき時に動ける自分を持っている人」になるために不断の努力の努力をつみかさねる人だということが主な理由です。
一方でそんな人物に白銀御行がなれたのは,他ならぬ四宮かぐやを「動くべき時に動ける自分を持っている人」と認識し,彼女を目標としたからです。
四宮かぐやは言う。
もし仮に見返りもなく汚れられる人間がいるとしたら...きっと相容れることは無い
と。事実,白銀御行が不断の努力の努力を積み重ねることで,「動くべき時に動ける人」となった際にはそれを四宮かぐやは否認したような風にも見て取れます。
しかしこの白銀御行にとって人生を変えるような一大変事において,白銀御行は四宮かぐやの「行為とその意味」だけを受け取った。その腹にある一物は伝わりようがなかったので,かぐやの行為の上澄みの綺麗な部分だけを受け取り,それを目標とした。
結果として「上澄みの綺麗な部分」を鍛えぬいた白銀御行は「見返りもなく汚れられる人間」に成長した。そんな人物がいるとは信じず,相容れることは無いとした四宮かぐや。その氷の心を溶かしたのは白銀御行ですが,そもそもそんな風に白銀御行を育て上げたのは四宮かぐやの「行為」がきっかけだったのか...。
藤原母なんてもんじゃないっすよ。白銀御行を白銀御行とならしめたのは,他ならぬ四宮かぐやだったわけです。そして自らの意図とは関係なしに育ちあがったその男に,四宮かぐやは無償の優しさ,打算や計算のない人としての素晴らしさを感じ取るという。なんという相互因果関係。美しいじゃありませんか。
しかしまあ,そう考えると1年春のこの出来事はあくまで白銀御行と四宮かぐやの「因縁」の始まりに過ぎず,白銀御行はまだ恋に落ちたわけではなさそうです。続きは「1年生 夏・秋・冬」と進んでどこかで描かれるのかな。
予告から判ずるに,次号は現在に時間軸が戻るみたいなので,それが描かれるのはもう少し先になりそうですけれど。楽しみである。
余談
「生徒会長は動かない」
しかし,こうしてみると先代生徒会長は「動かなかった」んだよね。四宮さんがおぼれた新聞社局長の娘を助けたんだから。
その意味で,彼もまた自分を持っているけれど動くべき時に動ける人では「なかった」。最初の印象で感じた通り一癖ありそうである。白銀御行の才覚を感じ取ったのは事実にせよ,単に駒として使うつもりだけの「秀知院的な人」だったのか。
「二人の因縁の始まりである」のアオリは白銀御行と先代生徒会長との因縁も指しているような気がしなくもない。
今回名前が出なかったけれど,もしかして実はこいつが「四条帝」というオチじゃなかろうな...とか妄想してみたり。
「白銀父の行動と背景」
しかしそうなると,気になるのは「なぜ白銀父は息子を秀知院に進学させるつもりになったのか」ということである。
なかなかに謎多き人物ではある。工場を経営破綻させ,現在は職業不定。愛想をつかして逃げ出した妻に未練たらたらで離婚届に判を押さないようなダメ親父かと思いきや,高校生とは言え卓越した天才である四宮かぐやを手玉に取るような老獪さもある。
ふうむ。
こりゃ,もしかして白銀父もまた秀知院で学んだ人間なのかもしれないなあ。そして由緒ある家の息女である白銀母と出会う。そんな背景があったのかもしれないな。
そうであれば,息子に対しての教育方針もわからなくもないのである。公立高校に進学させ,名門大学に入り,官僚でも学者でも庶民の栄達を極めることはできただろう。そこを敢えて秀知院に行かせた理由。
それは今回先代会長の口からも語られたように,ここでしか会えない人々との繋がり,そこにいる人から受ける影響によって人物成長を促す。それができる場だと知っていたからこそ,秀知院に御行と圭ちゃんを進学させたのかもしれないね。
というわけで,今回の感想はまる。
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画像は週刊ヤングジャンプ2018年第41号「かぐや様は告らせたい」第111話,第108話,第76話より引用しました。
画像引用は中止しました。