さてと。 かぐや様は告らせたい 175話 の感想(かぐ活)です。
TVアニメ第2期も始まったばかりの「かぐや様は告らせたい」は堂々の巻頭カラー。アニソン界の大型新人,鈴木雅之さんオープニングの中毒性はなかなかキテますよね。漫画と並んでアニメの方もお楽しみである。
さて,その漫画本編の方ですがYJでは巻頭カラー。ポートレートに飾られた写真の中の二人はまだ7歳。かぐや様がまだきれいなお目々をされている反面,早坂愛の落ち着いた瞳の中にある影は隠しきれませんね。生きるために二人の主に仕える裏切り者の名を受けてすべてを捨てて戦う女の姿がそこにある。
かぐやとの距離を測りつつ,彼女と仲良くなり信頼を受けることを「仕事」とする彼女にとって「仲良くしてくれるかしら?」は複雑な意味を持っていたであろう。
この仕事をやり遂げなければならないという従者としての立場と。そんな裏切り者の立場でありながら,どこかきれいな関係だけをかぐやに見せ続けたいと思っているような淡い期待と。
現在の早坂愛に通じるものをこの当時から抱えてきたんだなあ...って思うとやるせないような,なんとも言えない気持ちが沸き上がってきます。そんな「早坂愛の友達」の4話目です。
最新コミックス (近刊)
早坂愛の「解任」の構造
なかなか重い話ではある。
今回の早坂の"解任"劇の構造は複雑である。早坂の解任をかぐや向けには「辞任」という言い方で表現してきたのは,おそらく早坂愛が守りたかったものを守るためである。
すなわち,この裏切りの関係に終止符を打ち,見かけ上は早坂愛はかぐやの忠実なる従者であった...という「きれいな関係」のまま二人の関係に決着をつけられる。そうすることで早坂はかぐやの側付きの地位は失うけれども,早坂が一番恐れていた「かぐやに嫌われる」ことは回避できるからである。
これだけみると,早坂の発意を通すためにこの「解任」は仕組まれたようにみえますが,果たしてそう単純な話だったのかよく分からない。
今回明らかになったように,早坂愛の「真の主」は次期四宮家筆頭となる可能性の高い長男・黄光でした。やっぱり雁庵ではなく長兄だったのね。そんな長兄がかぐやの動向をおさえていたのはやはり四宮家流の支配欲ですかね。パラノイアのみが生き延びる。まるでどこぞのIT企業のようです。
そもそも妾の子にそこまで気を配る要があるかといえばなんとも言えないですけれど,そこはかぐやも雁庵の血が流れる娘である。三兄弟になにかあった時には寝首をかかれる可能性も考慮してこその四宮でしょうから,幼少の頃からかぐやの「弱点」を抑えておこうとするのはむしろ黄光の優秀さというか,ずる賢さを表しているようにも見えます。
そう考えると,今回の「解任劇」は黄光からすると情報源を失うだけでメリットはない。もちろん代役が入ることは以前「義姉」と約束しているのでで分かっていることですが,それは黄光とは関係ない話なのでしょう。
この「義姉」が黄光の妻なら筋書き通りですが,早坂と黄光の関係に気づいていなかったらしいかぐやの手配であることから考えると,どうやらそうでもなさそうです。この義姉とやらは次兄の妻なのかなあ...。残っているのは例の四条家の話で出てきたあまり優秀そうに見えない兄しかいませんけれど。
関連記事
ただ,今回の雲鷹の言葉からして早坂家とは早坂母子だけではなく,早坂一族全体を指しているようです。大兄貴...すなわち黄光に取り入っているのはあくまで早坂家の「一部」であって,この辺りも敗残の集団である早坂一族の中のいろんな「思惑」が張り巡らされているようですね。
多分に今回の解任劇は文字通り早坂愛のかぐやお付きの「解任」であって,その指示を出したのは早坂一族の取りまとめをしているような人物ぽいな。
どうやら早坂一族内で統一が取れていなさそうですが,最終的には四宮の支配から再度脱却したいのでしょう。黄光を切って別の勢力と結びつくようなことを念頭においているのかもしれませんね。それが他の兄弟なのか,四条家なのか,まだわかりかねますが。
四宮かぐやが「求めていたもの」は何か
話を早坂とかぐやに戻します。
黄光に命じられるがままかぐやに近づき,信頼を勝ち得てスパイをするようになるわけですが,この二人の出会いの回想は前回・前々回の話にあった「思い出の場所」とは異なりますね。実際に二人が今いるのは京都の四宮家所有の山ですが,この回想は東京の四宮別邸です。
この回想を見てみれば,幼い四宮かぐやが「何」を早坂愛に求めていたのかはっきりわかります。
かぐやの従者となり,それを喜ぶ四宮かぐや。赤ん坊の頃に一緒に育った思い出を早坂に振ったり,あやとりを教えようとしたり,一緒に食事をするのを望んだり,会話を楽しもうとしたり。そして早坂に贈り物をしてみたり。
こんなん一目瞭然だね。
かぐやが早坂に求めているのは「対等な関係」じゃん。もっと単純に言えば「友達」である。ともに語り,ともに遊び,ともに感情や出来事を共有する。相手を大切に思って親愛の情を示す。それは友達じゃんね。白銀御行の言うところの「相互依存・相互共存」とは異なるけれど,これも友達関係である。
これが時が流れるにつれて「主人と従者」である関係が強化され,今に至っているのは単に早坂愛の「けじめ」である。
自分の主は別にいて,四宮家における自分の立場はただの使われる密告者である。早坂一族にも,四宮黄光にもそれぞれの思惑で都合よく使われている身にすぎない。それが彼女の「壁」をつくり,友達を求める四宮かぐやの思いを遠ざけてきたのでしょう。いまの早坂とかぐやの関係を築きあげてきたのは他ならぬ早坂愛の行動によるものである。
だからこそ,四宮かぐやの行動がわかるんだよなあ...。
早坂もよく知るように,ほかならぬ早坂が助言したように「秘密を漏らさないものだけを友達」にしてきた四宮かぐや。そんなかぐやが怒りに打ち震えながらも早坂を「許したい」と思うその気持ちを抱いているのは,それだけ早坂が特別だったからじゃん。
主人と従者でありながらも時に姉妹のように,時に友人のように早坂に会長との恋というプライベートなことを相談してきたのは彼女を信頼してきたからだけではない。信頼が理由なら,裏切った早坂を許そうとは思わないはずである。
信頼を裏切ったにも関わらず,早坂を許したいと思うその気持ち,それは「信じるに足る人間か?」ということを度外視してかぐやが側にいてほしい,自分を支えていてほしい,自分が守ってあげたいと願う,そんな人間だからでしょ。早坂愛って存在は。
そんな関係を白銀御行は「友達」と称した。
早坂は彼女の立場や思うところから壁を作ってきたけれど,四宮かぐやの根っこの部分はずっと早坂愛に「友達」を求めてきた。
だからかぐや様は許したい。
やり方はわからないけれど許したい。早坂を求めているから。早坂に頼ってほしいから。
私はどうすればいいの!? 貴女はどうしたいのよ!?
というかぐやの言葉がそれを裏付ける。かぐやは早坂を許したい。許すためには許されたいと相手が思うことが必要である。
嫌われたくないのなら許しを求めてほしい。それは白銀御行のいういところの「友達ならば頼ってほしい」という気持ちに通じるものである。それが相互関係になるためには「友達として頼る」というアプローチが早坂には求められているのである。
二人は「友達」になれるのか。
四宮かぐやは早坂になお「友達」を求めている。早坂の好きにしなさい,という言葉がそれを裏付ける。早坂の意志にそれを委ねている証左である。
運命の分水嶺は早坂愛の「回答」に託された。四宮かぐやに対する早坂愛の想いが問われている。そんな175話でした。まる。
余談
早坂の妄想の中のかぐやのレスポンス,まさしく僕が予想していたような筋だったわけですけれど,そんな単純な話じゃなかったね。さすがは赤坂先生である。かぐやが許せないという筋をしっかり通した上で,それでもなお許したい...という度し難い感情をみせることでかぐやにとって早坂とは何かということを描いてくる。本当にこういうの上手いと思います。
さて一方の雲鷹でありますが。彼は彼なりの思惑で今回の早坂獲得を目指したわけですけれど,そんな四宮家三男としての立場にお構いなしのかぐやの言動に立場なしである。
実際,雲鷹による「早坂愛の裏切りの暴露」に対しての反応を見るに,四宮かぐやは雲鷹のことなんてなんとも思っちゃいないんだよね(いや,感情のあまり行動を制御できなかっただけかもしれませんが)。今の彼女の関心は早坂愛にあり,それは形式上の目上の相手に対する尊重などぶっ飛ぶほどのことである。じゃなきゃ雲鷹をぶっ飛ばせるわけないわけで。
とはいえ,冷静に考えてみると雲鷹の使用人たちの前で兄をぶっ飛ばすというのはかぐやの立場も面倒なことになりそうである。少なくとも形式的な上下関係は反故にされたわけで,立場の弱い妾の子であるかぐやは雲鷹一派と戦争状態になる。この状況で「白銀御行」が取り押さえられている状況はなかなかに波乱要素である。
かぐやが早坂を許すきっかけは「御行との関係はしっかり守ってきた」という筋にあるように思えるので,ここで雲鷹に二人の交際のことばバレない方向で行くように思いますがどうなるでしょうか。
今回,一コマも出てこなかったわけですけれど,あくまで早坂とかぐやの関係は二人で決着すべきものなんでしょうから,このままフェードアウトしているのかあるいはこの後の早坂愛の「回答」を促すための後押しをしてあげるのか。
早坂愛と四宮かぐやの関係の再構築と並行して,この窮地からどのように逃れるのかも見ものである。というわけで,再度まる。
現実逃避のご案内
Google検索で記事が出なくなったら、検索語に「現実逃避」を付け足すと見つかりやすいです。(もっと簡単なのはブックマーク登録。これを機会によろしくお願いします)
はてなブックマーク→
最新コミックス(近刊)
*画像引用は中止しました。