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『かぐや様は告らせたい』第193話 子安つばめと石上優 前編 感想 : 石上優が見ている...その先にはっ!

さてと。 かぐや様は告らせたい 193話 の感想(かぐ活)です。

 

 

ついにやってきた「その時」。石上優の恋の決着の瞬間である。

 

どういう答えが待っていようとも泣くことは無い

 

 といった覚悟を伴って開いた告白の返事の間の扉。そんな石上に相対する子安つばめの覚悟と言えば「私は今から彼を振る」でした。

 

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子安つばめの結論

  

え,ちょ?待て!?

まだ開幕一ページ目ですよ?

 

 

一・瞬・千・撃!

 

分かっちゃいたけれどまさかの瞬獄殺である。豪鬼先輩もびっくりなほどのあっけない幕切れのスタートに一読者としてもこれから石上を襲う感情の波を想うと「泣けない石上」の代わりに涙がこみ上げてきます。

 

なるほど,これまでの子安つばめの態度を見る限り,その結論は「恋愛の好きとは別の好き」であった。そんなん分かっていた。ああ...でも...どこかでもしかしたら石上優という素晴らしい男が報われる瞬間があるんじゃないかと期待していたわけですよ。

 

だがやはりつばめ先輩にとって,あくまで石上優は「可愛い後輩」以上にはならなかった。それは石上優を真摯に見続けてきた子安つばめが出した結論。で,あるならばその結論は生半可な判断ではなく,もはや石上優の失恋は必定...からのメイクドラマな今回のお話。

 

 

   

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子安つばめが見ている...その先には

というわけで,ここまでつばめ先輩は石上優をどう見てきたかという回想です。

 

石上視点でみれば「誰であろうと分け隔てなく接し」「いい人」であったつばめ先輩。しかしつばめ先輩とて聖人君子でもなんでもない,一人の女子校生である。そこには感情もあり,思考があるわけで。

 

石上優が自分を変えたいと思って応援団に立候補し,場違いな空間に絶望感を抱いていたころ,つばめ先輩の方でも石上優を認識していたのであった。

ぱっとみ石上に偏見なく接し,気軽にふるまっていたように見えたその裏では,与えられた先入観というものがそこにあったのである。無論,噂だけですべてを判断するような人ではなく,実際に石上を遠目からみた印象は「他人を拒絶する雰囲気」を纏っていたのである。

 

まあこれも石上からすると,自分の価値感・理解を超えた陽キャ集団の思考形態に対する絶望を噛み締めていたわけですけれど,それを陽の者側から見れば「他人を拒絶している」と思われても仕方が無いわけで。事実,石上は全てをオケマル?→ウェーイ!で決めるやり方に全くなじめていなかったわけですからね。

  

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子安つばめのファーストコミュニケーション

 

しかし全ての孤独する者に手を差し伸べたいという子安つばめ先輩の心根もあって団員の惣無事を願う子安先輩はビビりながら石上に声をかけたのであった。あの時石上はLINEフルフル始めちゃった陽の者たちに「やっべどうしよう」とか考えていただけだったのにね。まだ石上優を「見る」前だったからやむを得ないですけれど。

 

こんな風に物事は全て二面性がある。ある人にとっての出来事は,視点変われば全く別の現象として捉えられる。石上優がそのファーストコミュニケーション以降抱いた子安先輩に対する好感情の出来事も,つばめ先輩からしてみれば責任と責務の一環から生じたドッキドキの第三種接近遭遇だったわけですよ。

 

 

しかしまあ,ひとたび石上優と接して「見て」みれば実に頑張り屋さんで。実に良い子で。自分には持っていない感性と藤原千花で鍛え上げてきたツッコミュニケーション能力はつばめ先輩にとって新鮮であったし,楽しいものであったわけです。

 

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子安つばめが舞い上がった理由

 

見つめれば見つめるほど高まっていく好感情。つばめ先輩の「加点評価」でみていけば,石上優は十分「良い子」であったし。石上が自分からおはようと言ってくれた時は自分に心開いてくれたように感じたのか舞い上がってしまったし,他の団員と会話をしているところを見ればそれだけで嬉しかったり。

 

 

でもな。

それは「恋」じゃなかったんだよな。

 

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恋とは違う何か


 

石上優という秀知院の中でも絶望的に不当に虐げられてきた人間が,孤立していた人間がそうやって他者と交われるようになったこと。一人でも孤立した人間が救われたいという慈愛の天使のような子安つばめ先輩だから感じた「喜び」であって,石上に恋愛感情を伝えられた時もその後も「良い子」なんだけれどどこまで行っても石上優は

 

良い後輩

 

としか認識できなかったのである。

 

恋愛は戦である。しかしそもそも恋愛という戦場に上がれていない石上に,そもそも勝利の道などなかったのであった。ここまでずっと読んできて抱いていた違和感,恐らく子安つばめは「石上優を恋愛的に見られない」という懸念は当の本人のモノローグによって確定してしまったのであった。嗚呼...。

 

 

石上優が見ている...その先には

このシーン,なかなか見ていて辛いものがあるよ。

 

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ふり絞る勇気と分かり切った結論


 

最終的に振られとしてもそこに至るまでには自分の気持ちを相手に告げなければいけない。叶わないかもしれない。届かないかもしれない。でも受け入れてほしい,受け入れてくれるかもしれないという期待を込めて人は勇気を振り絞って「告白」するわけですよ。

 

そんな幾千万・億千万回の「拒絶される怖れ」を乗り越えた告白があって恋が始まり,人と結ばれ,恋人や夫婦の営みによって社会は連綿と築き上げられていく。その通じた想いと同じ数の,いやそれ以上の屍を築き上げながら...

 

 

 

いま,読者視点で子安つばめの「結論」を知りながら石上優の勇気ある告白を俯瞰するのは如何様な気持ちか。こんなつらいことってあるだろうか。自分自身の失恋の記憶を辿りながら,ああ石上はこの後どんな気持ちになるのか「分かる」からこその感情移入である。重く,つらい気持ちがどんよりと込み上げてくる。

 

他ならぬ子安つばめ自身が思うように,「なんでこんな良い子の気持ちを受けてあげられないのか」というのは読者の気持ちそのものである。それはしかし致し方がないこと。恋愛感情と親愛は違う。それが恋でない以上,お付き合いは出来ないのである。

 

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ごめんね


  

 

......というわけで石上の恋の物語はお終いです。

 

これまで積み上げてきた努力も。その意味の有無にかかわらず頑張ってきた石上優の恋の努力も報われることがなく終わるのであった...。普通はそうなる。確実にそうなる。

 

こと自分自身以外の事では驚くほど客観的で冷静な四宮かぐやの結論も同じ。告白して振られる。届かなかった想いはどうすることもできないという「常識的思考」を驚くほど素直に受け入れる四宮かぐやの姿がそこにあった。

 

 

しかし大仏こばちは言う。足掻け,と

大仏こばちもずっと石上を見てきた。石上がどれだけ頑張って来たか。自身が振った団長の助言に沿って行っていた「無意味な筋トレ」まで見てきた大仏さんである。石上優の本気度を,努力を,執念を見守り続けてきたのである。

 

 

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大仏こばちは見守りたい

 

 

まさに妄執...。これ,恋愛感情と親愛は違うっていうけれど,大仏さんの石上に対する感情は限りなく恋愛感情に近い感情移入にも見えますね。実際,大仏さんの言っていることも,もし自分にあてはめてみれば「そりゃそうだよな」とかぐやだって思うはずである。

 

もし自分の気持ちが伝わらなかった時,四宮かぐやはどう反応するか。その場では落ち込むかもしれない。絶望するかもしれない。でも四宮かぐやは四宮かぐやである。その叡智と,勝利に対する執念と,自身の恋心の全てをかけて最後まで足掻いたに違いないのである。

 

だったら。石上優にだってその権利はあらぁね。

石上が子安先輩をずっと見てきたならば「気づくはず」

 

子安つばめ先輩は押しに滅茶苦茶弱い!

 

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たった一つの冴えたやり方



え?

 

ええ?えええ?それが最後の足掻きなの?

 

なるほど,確かにつばめ先輩は滅茶苦茶押しに弱い。それはそうなんだろうけれど,え,でもこれ「解決になってなくね?」

 

 

ここで自分の気持ちを改めて伝えて,これまで以上に強い気持ちで相手に迫る。今以上の努力と幸せを強調し,もともと悪感情を抱いているわけでもなく「恋愛と親愛は違う」という好きの種類の違いから断ろうとしていた先輩に「どうしても付き合えないと思うなら手を振り払って皆のところへ行ってください」と断りづらい選択を求める。

 

作戦としては悪くないとは思う。

こうやって拝みこんで,再考を促して,振られても振られても食い下がって結婚する世のお父さんのように粘り腰をみせるのは一手かもしれない。

 

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哭きの優


 

だけどどうなんだろう。

結局,子安先輩の気持ちが「親愛から恋愛」に変化するわけでもない。あくまで押しの一手で相手の弱点を突いているだけである。この足掻きはもしかしたら通じるかもしれないけれど,「その先」ってどうなるのかな。

 

付き合ってみたら恋愛感情に育っていくこともある。まあそういう恋物語もありの,とは思います。石上優がそれだけ子安つばめを見てきた証拠でもありますけれど,一方のつばめ先輩も石上優を見続けた結果としての結論であったはずである。

 

ここで結論が覆っちゃうのもなんか「軽い」気がしますけれど。どうなんでしょうか。

 

...

......

.........

 

 

物語的には一度は情にほだされてお付き合いするというのも一手ですけれど,そこで先輩の気持ちが恋愛に変化していかなければ結局破局しか待っていない。その上で伊井野さんの機会もめぐってくるかもしれませんけれど,それはそれどうなんだろな。

 

ちょっと混沌として分からないのである。

石上優の幸せは願うけれど,子安つばめの筋を通してほしい気持ちもある。実に微妙で不可解な気持ちで一杯です。というわけで,意外な反撃を受けた子安先輩の反応を期待して,以下次号!

 

 

余談

今回はリアルでよくある告白模様過ぎて,めっちゃくちゃダメージ受けましたね(笑)。私にもあった。受け入れてもらえると思って真摯に告白したけれど,やっぱり駄目だったときのあの瞬間の脱力感がなんともな...。いやまあ,彼氏いるの調査しないで告ったのは失敗だったけれど(駄目じゃん)

 

と同時に「粘り腰」という告白方法も確かに存在しているわけで。これまた自分の話で恐縮ですが,妻に告白した時もじつは妻は断るつもりだったそうな。だけれどなんかめっちゃ押してくるので仕方なく(酷いな)お付き合いしてくれたんだという。

 

今回,石上は一生の誠意をかけて再度のチャレンジをしてみたわけですけれど,これをつばめ先輩がどう捉えるかだな。確かに押しには弱いから受け入れる可能性もあるけれど,「恋愛感情と親愛は違う」という結論を出している人間に対して人生を賭けたプロポーズって効果あるかしら...? 逆に重くなっちゃう気もしますが

 

 

もう一つは,ずっと言っているけれど「恋愛のメタ構造」である。

ここで石上とつばめ先輩が「押し切り」で付き合い始めちゃうと,伊井野ミコという存在が宙ぶらりんになるわけで。

 

いかにも「次の物語の始まり」を予感させる,文化祭のハートのアクセサリ(四宮かぐやが落としたものと推定)を見つめる伊井野ミコの姿がそこにあったわけですけれど,ここで石上の恋が成就したら「3月に落とし物の習得期限がなくなる→伊井野ミコが石上からハートのアクセサリを文化祭にもらう」というメタ構造が破綻してしまう

 

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伏線はどうなる?

 

やはりこの伏線は回収するつもりがあった置石のはずである。石上優と子安つばめが相手を見てきたように,伊井野ミコもまた石上優を見てきたはずである。その事実を無にしないためには,残念ながらここは石上が一端失恋しなければならない(作劇的には)。

 

ここんところが難しいね。

石上優の幸せと,漫画展開的な意味での幅の広がりと,天秤にかけるわけにはいかないけれども読者にはどうにもならない。ただドキドキしながら次号を待つのみである。

 

天(赤坂先生)の配材はどうなるのか。実に気になるところである。まる。

 

 

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*画像は週刊ヤングジャンプ2020年第45号 『かぐや様は告らせたい』193話,同コミックス第14巻 137話 より引用しました。