さてと。『かぐや様は告らせたい』第242話の感想です。
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白銀御行は説得したい
という訳で前回の流れから,生徒会・早坂・四条眞妃がタッグを組んでの四宮かぐや救出戦となりました。白銀会長の留守に強面のお兄さんたちが護衛につくのは龍珠先輩の力を借りている象徴でしょうか。
今回登場の田沼正造先生といい,白銀御行の戦いが生徒会+αという狭い範囲ではなく,御行がこれまで築き上げてきた人材を味方につけて戦ってんのよ...という描写なのかもしれない。
で,問題はその「作戦の中身」です。
いきなり本丸と思われし四条雁庵と話に行くわけですけれど,どうなんだろうな。初読時は「うわぁテンポ早~い」ってな感じで,割とあっさりと四宮家総帥に話に行けちゃうのにはちょっと驚きましたね。そりゃ雲鷹の手引きで一度会ってはいたけれども...。
四宮雁庵こそ,今回の四宮かぐや救出の肝であり,後継者を指名しうる唯一の人材。だからそこと交渉するのは当然の理なわけですが,本来はそこにたどり着くまでが大変なわけですけれどね。そこはそれ,四宮雲鷹との結びつきができたことによるものですけれど...。
しかしここで,読者の誰もが思いつく疑問を伊井野ミコが宣います。
そうなんだよな。
会長の出した案だけみると,「家族の情」というか,絆と言うか,ディスコミュニケーションの解消を通じての相互理解ということなんだけれどさ。それが正解であることは間違いないんだけれど,なんというか「四宮家の人間に家族の情愛がある」ことを前提とした作戦なんだよね。
実際,ここ数回のお話の流れで実は四宮親子の間にも情愛があったことが示されているわけですが,ここまで作中で語られた四宮の非情さというか「親子であって親子ではないような空気感」が一気にかき消されているのは気になりますよね。いや「実は親子の情愛はあった」という前提で進めなければ物語が詰むから仕方がないんだけれど。
田沼正造は語りたい
ただまあ,会長の作戦はそれだけじゃなくてもう一つある。意味深にこのカットが入る以上,最終的にその手段も念頭にあるんだろうなあ...。
今回,四宮かぐやの母である名夜竹さんについて,医者の守秘義務も顧みず田沼先生がぺらっぺら喋ってくれたことからも,最終的にその方法が作戦の俎上に上がる可能性も否定しきれない。
かぐやの母・名夜竹さんが夜職であったことは既に雲鷹から語られていたわけですが,雁庵とのなれそめやらかぐやの出生の件は今回初めて明らかになりました。ふぅむ...。想像していたのとちょっと違ったな。
四宮雁庵が夜職の女の子に入れ込んで手籠めにしちゃったみたいな印象を抱いていたし,ある意味その通りではあるんですけれど割と「狡猾な面」があったというのは印象とちょっと違う感じだったかな。病床の生気の無い名夜竹さんのイメージが長らくあったせいもあって,名夜竹の方からも積極的に雁庵に近づいていたような印象はあまりなかったもんね。
しかしまあ,そこはそれ,こういう職業の方である。
スナックバス江と違って高級嬢ともなれば,金がちらつくのも無理ないですけれどね...。まあその辺の本当の所はまだ第三者の田沼先生の話だけだから何とも言えないですけれど。
ただな。
そうやってかぐやをお腹に宿して四宮雁庵の前に現れたこと,四宮雁庵が相当入れ込んだ上で検査も拒否っていたことからいって...いや,これ実子じゃないだろ。たぶん。
四宮雁庵は繋がりたい
会長の「策」とやらもどうやらその妾云々がキーであり,かつ「使いたくない策」ということからも,たぶんここがポイントだったんだろう。
「かぐやが雁庵の実子じゃなかったら。」
そもそもかぐやは四宮家とはかかわりのない人間となる。四条家に対する和解の象徴,取引手段の道具として無価値となる。そこを証明すれば,少なくとも四宮かぐやと白銀御行にとっての障害である「結婚話」は消えてなくなる。
眼前の,自らの恋物語に関してはそれで済むわけですけれど,そうなると四宮かぐやが父に抱いた情愛やら,四宮家に対する愛着やら,これまでのもろもろやらあらゆる物財に至るまで「すべて無視」すれば,それはアリな作戦となる。
だからこそ,その作戦はあまりとりたくない。それはかぐやにとっても,雁庵にとっても望ましい未来ではない。それを御行は理解しているから,田沼先生の告白に対して吠えたわけですからね。
四宮かぐやがどれだけ家族に飢えていたか。唯一血のつながると思われる父親の愛情に飢えていたか。自分にかけてくれるとは思えない愛情が存在するのではないかと,いつもか細い期待を込めて過ごしてきた日々をずっと側で見続けてきたからこそ,その手段は取れないわけですよねえ...。父と娘の唯一の絆を断ち切ることになるから。
それは雁庵にとってもそうなんですよね。
彼が名夜竹さんにそれだけ深い思い入れをした本当の理由は分かりません。単に教養があり見目好い,賢い夜職ならいくらでもいるでしょう。二人がどんな会話を交わし,本当に体を交えたかもわからないわけですが,確かなことは「四宮雁庵にとっては大切な人だった」ということです。
四宮かぐやこそは,自分が愛したであろう名夜竹との「絆」の証。
単にお金と打算の関係ではなく,愛がそこに在った証拠です。だからこそ,その絆を断ち切りかねない遺伝子検査はやりたくない。そういうわけです。
四宮雁庵の無理難題
先に「個人的な予想」と言うか,妄想と言うか,述べておきます。
恐らく最終的には遺伝子検査をするでしょう。実子かどうか確認しなければ,仮に雁庵がかぐやに相続を決めたとしても黄光と青龍が納得するわけないですし。継がせるというならちゃんと証拠を見せろ程度のことは言うと思います。
それに対して,かぐやか御行かはわかりませんが,検査をするように雁庵に促すと思います。結果はどちらになるかは分かりませんが,仮に実子でなくても四宮雁庵はかぐやを娘と認めるでしょうし(少なくとも民法上実子として認知しているでしょう),周囲があーだこーだ言うなら一度籍を抜いてから養子縁組することもできる。なぜなら四宮かぐやは名夜竹の娘であり,雁庵が娘と思って接してきた子どもだからです。
「四宮かぐやの親子関係(含む継承)」という点に関して言えば,親子がコミュニケーションを取り,それぞれが抱いている愛情を向けあえばそれで問題解決です。雁庵が良きに計らうよう後継指名することもできる。その補佐に雲鷹を置くこともできる。
なのでこっちの問題は多分,なんだかんだで父親の説得でうまくまとまると思います。
ただもう一つの問題の方はどうかな?
四宮家の後継をどうするのかという問題と,「四宮かぐやの相手として白銀御行を認める」ということは別問題だということですよ!愛娘の相手としてお父さんが認めることができるかどうかは全く別の話なんですよね。
これが白銀御行と四宮かぐやの「恋愛の話」でいくならば,問題はむしろそっちの方じゃないかと思います。御行が気付いているかどうかわからないけれど,構図的には「お父さん,お嬢さんをください」のシーンですからね,これ。
今回の白銀御行の魂の咆哮は,父親観点から見れば「娘のことを思ってくれているんだな」的なポイントとして捉えられなくもないですけれど,さてそんな単純な話とも思えない。これは恋愛頭脳戦ですからね。
次週,白銀御行に降りかかる無理難題は何なのか。興味深いところである。というわけで,今回の感想はまる。
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