さてと。それでは『週刊ヤングジャンプ2017年第53号』「かぐや様は告らせたい」第79話 白銀御行と石上優 の感想(かぐ活)です。
なるほど。
今回のエピソード,石上優がこれから救われる話ではなかったわけですね。
石上優は遠の昔から「救われていた」。
そういうお話だったというわけか。
なるほど。
今回のエピソード,石上優がこれから救われる話ではなかったわけですね。
石上優は遠の昔から「救われていた」。
そういうお話だったというわけか。
?
OK。情報を整理しよう。
石上のやらかした案件により,停学処分となる。まあこれは表層的な事象を見ればそうなりますよね。いきなり全国大会常連の演劇部長を「理由も無く」ぶん殴ったのですから,まあそういうことになります。
で,そんな石上くんが不登校になった理由は,「謝罪ができなかったため」。
なるほど,石上優のジレンマが良く描かれていますね。石上優の中の「正義」に照らし合わせれば,大友さんに対する不義理とそれを人質にとった脅迫をする荻野に対して「悪かった」などという気持ちはサラサラ無い。それは殴った直後の石上優の叫びの瞬間から一貫して変わっていないわけです。
そしてそれは事実を知る者からしてみれば,石上優の判断は「正しい」。
悪いのは荻野であり,石上くんは単に自らの信じる正義のもと鉄拳を振るっただけですから。事象的に「暴力は駄目」ですが,善悪の根幹という部分で見れば石上の主張はそのとおりなんです。それが逆に石上優を縛ることになる。
自身の正当性を主張しようとすれば,荻野が大友さんにやったことを世に知らしめなければならないことになる。しかしそれをしてしまっては,そもそも石上優が守ろうとした大友さんを「窮地」に追い込むことになる。
そんな石上優のジレンマ。
それ故に内に篭り,肯定も否定もできないまま無為に過ごすことしかできなかったというわけか。腹立たしいことですが,荻野の罠は実にうまく石上を絡めとってしまったわけですね。さすが,良くも悪くも偏差値70の名門・秀知院の一員というわけか。
しかしまあ,こうした状況と,現在生徒会に所属して「反逆の孤高」のまま過ごしている石上会計にはギャップがありますよね。なぜ石上優は学校に復学できたのか。なぜ生徒会の面々は石上を色眼鏡でみることもなく,その人物を素直に受け入れていたのか。
その答えがここにあるわけです。
白銀会長は,そして生徒会の面々は,とっくの昔に「真相」にたどり着いていた。
とっくの昔に石上優を「救っていた」
ここからの流れは実に痛快というしかない。
限られた情報から真実にたどりつき,あまつさえ手を差し伸べる。石上優の行動は分かってもらえた。そして石上優は自らの行動によって大友京子さんを「救っていた」。
内に篭り,その事実さえ気づくことができなかった石上くん。それを救ってくれた会長にとてつもない恩義を感じるのは当然ですよね。なんのかんので,石上会計の会長リスペクトの根源が見えた気がします。
重要なのは,石上会計はただ「なすすべも無く会長に助けられた」わけじゃないってことですよ。
石上会計のやったことは,暴力事件ですし,それに対する「罰」は重い。停学が解かれて学校に復帰しても,真相を皆に告げることもできないのはこれまでと一緒です。でも石上くんは,「石上優」は自ら信じた「正義」を貫き通し,結果として大友京子さんを救うことができた。
「目的は達成している」
との会長の言のとおり,石上は自分の正義を貫き通すことができたのだから。そして自分のことを一人でも理解してくれる人がいるとわかったのだから。だから,石上優は他の誰に憎まれようとも学校に復帰することができたのである。
これは石上優の「勝利」といって差し支えあるまい。
...
......
そうしてみると,大友さんが転校した理由もわかります。大友京子の「被害」とは,要するにラブラブカップル(笑)だった荻野との関係をぶちこわされたことにより,結果として居たたまれなくなって転校するに至ったと推測できます。
大友さん視点では,あるいは彼女の友人視点では「石上優はとんでもないことをした」といえますけれど,そもそも付き合っていること自体が「被害」といえそうな男と別れた"だけ"の話なわけです。
であればだよ。白銀会長が示唆したように,大友さんにどんなに恨まれようとも石上会計がとれる姿勢は唯一つです。
「うるせぇ ばーか」
石上優の立場は変わらないのかもしれない。
それでも自らの「正義」に恥じることがないのであるならば,そのことを一人でも信じてくれる人がいるならば,以前のように内に逃げることも,変わろうとおもったその姿勢を否定することもする必要が無い。
問題の構造的に,石上優が卒業するまでにこの「誤解」を解くことは決してできない以上,石上会計にできることは堂々としていることしかない。でも,石上優の「正義」を理解してくれる人が少しでも増えていくのならば,また石上の世界は広がっていくのかもしれませんね。
この体育祭のリレーはそんな試金石なのかもしれない。そう思いました。まる。
『今回の大友京子さん』
結局,彼女は「救われた」ことも気がつかないまま転校せざるを得なかったわけですね。
無論,彼女の中では荻野と付き合い続けるのがベストだったのかもしれませんし,その結果最終的に裏切られていたことに気付いたり,傷ついたりするほうが本来の「筋」だったのかもしれない。そうやって人はいろんな成長をしていく側面もありますし。
でも,知らないことで傷つかないことがある。彼女の心に深刻な闇を落とすよりも,自分の「方法の間違った正義」によって傷を浅くするほうが良いと石上が考えたのであれば,それはそれ一つの選択なのかなと思ったり。
真相が語れない以上,石上と大友さんが和解することは不可能なわけですが,恐らく本エピソードが物語ることは「和解することは目的ではない」ということでしょう。石上と大友さんの中でベストではないけれどもそれなりの着地点を見出した結果が現状なのでしょうから。
石上は今後も「付き合っている二人を別れさせた酷いやつ」の謗りを受け,大友さんは「石上のわけの分からない行動で荻野と別れさせられた」というトラウマをもつ。
でもそれだけです。リベンジポルノとかそういうことではない,「荻野から大友に対する恋人としての別れ」という経過を経て,今はそれなりに穏やかに過ごしているのであれば,それはそれでいいじゃないのか。そんな風に思います。
実際,大友さんのこのセリフからは石上会計がそんなに同級生から嫌われるほどの「恨み」と言えるのかよく分からないです。きっと同級生たちは二人を別れさせたことよりも,「石上が謝らなかったこと」によって反発心や怒りを増幅させたのではなかろうか。
石上は経緯上,荻野に謝ることは決して無いでしょう。なので石上会計は今後も険しい道の中を歩くことになろうかと思いますが,彼の愚直な「正義」を見る人はいる。そこが救いなんじゃないかと思いました。
『今回の伊井野ミコさん』
ポンコツ風紀委員の伊井野さんがどう絡むのかなと思案していたわけですが,なるほどこういう行動に出ていたわけですね。
問題が石上会計の中で既に生徒会の面々に「救われて」いた以上,展開的にはこれから伊井野さんが何かをするというのではなくて,伊井野さんは既に「行動していた」という形で表現されました。
以前予想したとおり,伊井野さんは石上優という男をこれっぽっちも評価していない。けれども憶測や伝聞で判断するのではなく,石上優をきちんと「見て」判断していたわけですね。
反省文を出していないとはいえ課題をきちんとこなしている石上優の復学を訴えた彼女にとって,石上は既に十分罰を受けていたと。それなのに復学させないことは伊井野さんの「正義」に反している。だから復学を訴えたわけですよね。
結果としてそれが校長の耳に入り,復学への道を開いたわけです。石上がそのことを知っているかどうか分かりませんが,彼女の正義によって石上もまた救われていたというのはなかなかに熱いです。
...以前も指摘したとおり,石上優と伊井野さんの行動の尺度は「正義」という意味で実に良く似ている。
生徒会長選挙の時に,石上会計が伊井野さんが馬鹿にされることが「許せない」と思った正義によって彼女を救うきっかけを作ったように,お互いが知らず知らずのうちに人生の岐路において相手を救っている。
今回出てきた子安つばめさんといい,小野寺さんといい,ここに来て石上会計の周りに「女子」が増えてきましたけれど,やはり石上会計のカウンターパートナーは伊井野ミコさんなのだろうなあと改めて思いました。再度まる。
画像はヤングジャンプ2017年第53号「かぐや様は告らせたい」第79話より引用しました。
画像引用は中止しました。