現実逃避

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「かぐや様は告らせたい」の感想を書いている漫画感想ブログ

『かぐや様は告らせたい』 第91話 生徒会は撮られたい (後編) 感想

さてと。それでは『週刊ヤングジャンプ2018年第15号』「かぐや様は告らせたい」 第91話 生徒会は撮られたい(たぶん後編) の感想(かぐ活)です。


あ,はい。

はっはっは。いやいやいや。今週の「かぐや様」を読んだボクの反応は↓になります。



完全に空振っていた先週の感想を思い出しただけで布団に包まって転がりまわりたくなりますね。ハッキング? SDカード? はは...可笑しすぎて,へそで茶を沸かしますね(ん)



それにしても赤坂先生はなんというもんをぶっこんで来る御方よ...。もし先週の僕の感想を赤坂先生が読まれていたら,きっとこんな↓石上な気分だったでしょうね。そして今の僕の顔面は藤原書記ばりにお恥ずかしいことになっている模様。


 



マンガ感想勢など所詮,作者様の手のひらの上で踊っているに過ぎない事例をまた一つ積み重ねてしまいました。はずかしー!


...
......


ふう。
完璧にしてやられたところで,さて,今回のお話の感想である。
いいですか? 必ず先にヤンジャン本誌で読んでから感想読んだほうがいいですよ?


 


?


 



それはそうと,今回のサブタイトルですけれど,前回と同じ「生徒会は撮られたい」ですね。はて,特に前編・後編のクレジットがないですけれど,これは単行本修正用件でしょうか。




...というわけで,携帯会社のショップに持ち込んでみたものの,古すぎて修理は無理。SDカードも付いていないというオチ。あ,あれやっぱりバッテリーだったのね...。内蔵メモリが破損されていなければ,早坂近侍あたりがハッキングするのかと思いきや,特にそういう展開にも行かずとな。


 



というわけで,前回の僕の予想感想は1ページ目で崩れ去ったのでした。

さすが,赤坂先生は読者の予想の上を行っておられる。きっと担当編集と赤坂先生は世に転がっている前回の凡庸な感想を読んで腹抱えて笑い転げたであろう。まあ,笑いが取れたなら僕としては良し!(開き直り)




...しかしまあ,物語の文脈を追ってみれば,「かぐやのガラケーから思い出を取り出す」ことに意味がないのは一目瞭然なのであった。今回の主題はそこにはない。

四宮かぐやという人間が,生徒会の仲間たちと関りあうことを通じて増やしてきた「誰かと分かち合った,いつも通りの日常」。そのいつもどおりの日常を記録するものが「写真」だったわけです。そんな大切な一コマの記録をを失ったことが,四宮かぐやをして茫然自失とさせていたわけです。


どのくらいそれが衝撃的であったかというのは,この四宮かぐやさんを見ていただければ一目瞭然である。


 



普段,いかに会長に策を弄して相手から気持ちを伝えさせようとしてきたか。わずかな譲歩ですら自らの恋心を相手に伝えることになるからと避けてきた,あの四宮かぐやが。ショックのあまりそうした小細工を弄することもなく,「普通の」反応を示しているではありませんか。


スマホを買いに行けば,素直に「会長と同じ奴がいい」といい。
ラインをいんすとーるすれば,あっさりと会長とID交換することを申し出ることといい。


普段の四宮かぐやであれば,その絶対のプライドと恋愛的に全く意味のない意地の張り合いによって決して行わないような振る舞いをしておられる。


いいですか,四宮かぐやといえば,


「会長と同じスマホを買ってしまったら私が会長のこと好きだって言っているようなもんじゃない!」とか
会長からIDを聞いてくればいいのよ,そうすればすべて丸く収まるのに!」


みたいなアホな意地を張って周囲と会長を全力で振り回しにかかわるわけですよ。そんなことに思いが至らないくらい,今のかぐや様の心はぽっかりと空洞になっているわけです。


 


氷のかぐや様から,現在のかぐや様に至るまでの記録。初めて好きになった人。一番大切な友達。大切な後輩たち。本当にいい人がいると教えてくれた仲間たち。そんな仲間たちと過ごしてきた「いつも通りの日常」の記録はもう無い。その心の空白が,かぐや様を未だかつて無いほどに無防備にしてしまっているわけです。




そんな四宮かぐやの虚ろな心の中身に,生徒会の仲間たちは気づかない。気づけないわけです。

四宮さんが変である,ということはよくわかる。でもその理由はわからない。「携帯電話を落としたこと」は念頭にあっても,携帯電話を壊したことが「かぐやにとってのいつもの日常」...だけれどかけがえの無い思い出の記録の喪失とは結びつかないわけです。


 



そりゃそうです。
ほかの面々は完全にスマホ世代。データはローカルやクラウドにバックアップするのが当たり前,共有できる記録は共有するのも当たり前な世代ですから。大切な記録がなくなったから茫然自失となっているという発想が無いわけです。ですから,四宮さんが「大切な日常の記録を失った」という発想に至らないわけです。


...しかし,ここからの展開がまた凄いのである。正直,天才的だと思うのである。



白銀御行が何気なく思いついた,ラインのグループ登録。







この行動自体は,「四宮にラインを送ってみたいけれど直で送るのは俺から妥協したみたいで云々...」といういつもの発想が裏にあったと思うのですよ。グループラインだったら全員に同じメッセージを共有できますから,そういった気遣いがありません。

しかし,これまで生徒会のグループを作らなかった理由は,そうした恋愛心理戦とは関係ない至極もっともな裏事情があったわけです。四宮さんはガラケーでしたから,これまでラインは使えません。グループを作っても四宮かぐやだけのけ者になってしまう...という配慮から,グループラインをやってこなかった事情があったわけです。


そこから藤原書記の発案による共有アルバムづくりがはじまり,各々がこれまで取りためた生徒会の「いつも通りの日常」がアップロードされていく。





四宮かぐやが失った「いつも通りの日常」が,仲間たちの目を通じて撮られた写真によってどんどん蘇っていく。それは仲間の数だけより広く,より深く思い出が積み重ねられていき,いつしか四宮かぐやが大切にしてきた記録以上に思い出が蘇っていく。


 



誰かと分かち合った「いつも通りの日常」,その証明としての写真が自分のものだけではなく,相手から受け取ることで再構築されていく。自分が大切にしてきたものが,相手もまた大切にしてくれていたという事実。そのことが,なによりも嬉しかったのでしょう。



そしてこの笑顔である。


 



こんな無邪気で,謀事の無い四宮かぐやの表情を作り出したのは,単に大切な記録を取り戻したからだけではない。相手もまた自分との思い出を大切にしてくれたことに対する率直な喜びがそこにあるからですよ。


四宮家という他者を退けてのし上がることだけが目指された環境で過ごしてきた中で決して得られなかったものが,ここにはある。かつて四宮かぐやが記憶をたどったとき,に挨拶一つされたこともなく,かわいがられたことも無いことを思い出していましたよね。あそこには相手から大切にされた思い出が無い。


それに対して,生徒会のみんなは四宮さんを大切に思ってくれている。自分から父に対する一方通行の気持ちとは異なり,双方向に思ってくれている。皆のスマホに撮りためられていた「いつも通りの写真」の中に自分と同じ思いの写真が,それ以上の写真が溢れていた時,四宮さんは「自分と同じ想いでみんなも過ごしてきた」という実感が得られたのでしょうね。


そして極めつけはこの集合写真。前回,撮り損ねてしまった,みんなで過ごしてきた日常の一幕を撮るはずだったあの写真を,ほかならぬ四宮さんの新しいスマホで撮る。


 



ガラケーという閉ざされた空間とスマホクラウドという共有空間という対比に象徴されるような,「新しい四宮かぐやの世界」を彩る一枚で幕,という素敵なお話でした。まる


...
......


徐々にかぐや様の生気が目に戻ってくる描写が細かいですね。



こういう細微な描写が本作のよいところである。

 



しかしまあ,このお話の凄い点は,こうした展開を生み出す流れがすべてきちんとパズルのピースのように当てはまっていくことですよ。


ライングループやアルバム共有によって世界が広がるためには,四宮さんにスマホの世界に入ってもらわなければなりません。
スマホを使うようになったら,今度はID交換やら何やらしなければならないのですが,それも普段の四宮さんだったらおいそれとID交換もままならないわけです。いつもの「お可愛い」意地の張り合いによって。

1.その状況を作るために四宮さんの大切なガラケーが壊れる。

2.ガラケーから思い出を取り出せないから,一先ず諦めて新しいスマホを買う。

3.でも誰かと分かち合った大切な時間の記録を失った衝撃が大きく,普段の「恋愛的こだわり」が発動できなくなる

4.その結果,IDを容易に交換できる

5.失ったものよりもよりたくさんの想い出と相手とのつながりを得る



こうした流れが全部つながっているんです。無理一つ無く。


だいたいこういう「結果から過程を生み出す」様な物語作りは,どこか状況作りのために無理な展開が生じたり,どこかで登場人物が救われないような状況に陥ったりしがちなんですけれど,そういうことをすべて計算しつくしてこの物語を作ったのだとしたら,赤坂先生はマジ天才としか言いようが無い。


かつてそういうラブコメ作りを目指して壮絶な失敗をした事例を見てきただけに,これは正直感動ものである。



作者が物語を紡ぐ以上,読者がそれを「読みきる」ことなんてあり得ないし,なんでもかんでも予想通りドンぴしゃりならいいってものでもない。物語から得られる新鮮な驚きを,後どれくらいこの作品からもらうことができるのか。

ますます楽しみになってきた第91話でした。再度まる




...
......




(蛇足)何気に気づいているのか,石上会計...。合コン系ゲーム凄い。


 


 

 



 

   

 

 



画像は週刊ヤングジャンプ2018年第15号「かぐや様は告らせたい」第91話, 同86話 及び「ぼくたちは勉強ができない」問.26 より引用しました。
画像引用は中止しました。