現実逃避

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「かぐや様は告らせたい」の感想を書いている漫画感想ブログ

『鬼滅の刃』 172話 弱者の可能性 感想 : 炭治郎の笑みに込められた意味

 

想像を超えた上弦の壱・黒死牟さんの実力。さすがは上弦筆頭の鬼というだけのことはある。柱3人を相手にここまで失ったのは髪の毛,肉で作った剣先,そして耳たぶと服。しかもそれらは一瞬で再現できるおまけ付き。全く勝ち筋が見えてこない。

 

風柱・不死川実弥もまた指を断ち切られ,黒死牟の攻撃に反応することもままならないほどである。稀血もほとんど効きやしない,超広範囲の太刀筋で近づくことすらままならない。まさに「絶望の譜面」である。

 

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産屋敷輝利哉の目算

にも関わらず,産屋敷筆頭であるところの新当主・輝利哉は上弦の壱似これ以上の戦力を振らないという。最大戦力の一点集中こそが勝利の方程式であるにも関わらず,である。

 

 

ふむ。

冨岡義勇と炭治郎の相手はあくまで鬼舞辻無惨か...。まあ上弦の壱は強敵であるけれども最終目標にあらず。鬼殺隊にとって重要なのは無惨を倒すことである。無惨が死ねば他の鬼すべてが死ぬ。もちろん無惨相手にこの二人でも力不足であろうから,上弦の肆・鳴女を蛇柱・恋柱が破った上で無惨戦に向かうところまで組み込まないと難しいかな。

 

 

閑話休題。

まずは当面の敵,上弦の壱である。ここで行冥・実弥・無一郎・玄弥の4名で「倒す」ことが当主によって明言されました。幼子とはいえ産屋敷を率いる者である。その言葉にはある程度確信があるのであろう。黒死牟はこの4名で倒せる,と。

 

もちろんそれは理想形ではある。

現在当たっている4名で切り抜けてくれればそれに越したことはない。しかしどうなんでしょうね...。次から次へと異形の長剣から繰り出される月の呼吸の剣技の前に,首を斬るどころではない。避けるだけで精一杯である。こんな状況下でどうやって黒死牟を倒せというのだろうか。

 

だが4名と言っても,実際の所まともに戦えているのは岩柱・悲鳴嶋行冥のみ。風柱はまだ刀を振るうものの,最高の状態にはあらず。それでも輝利哉はこの4名での勝利を確信している。なぜか。

 

弱者の可能性

動きの手助けに入るのに精一杯の無一郎。柱の影から機をうかがうものの,動くことも出来ない玄弥。彼らは黒死牟から見ればもはや「戦力外」の存在である。自らを脅かす存在たり得ない。

 

そこに勝機がある,という竈門炭治郎の言葉が説得力あるね。

上弦の陸と戦った時の「かまぼこ隊」ははっきり言って実力不足であった。まっとうに戦えたのは音柱さんのみ。正直な所,妓夫太郎からすれば敵として数えられていなかったはずである。

 

だが玄弥の記憶の中の炭治郎は言う。

 

一番弱い人が一番可能性を持ってる

 

と。

相手が警戒できる絶対数は決まっている。いま,黒死牟はその大半を岩柱・風柱にむけており,残りは「敵」としてカウントしていない。言い換えれば警戒していない。なぜなら弱いから。脅威足り得ないから

 

逆に言えば警戒すべき相手にステを全振りしているということでもある。路傍の石に気づかなければ躓くように,予想外の動きによって相手の全力を乱したならば...その時に隙が生まれる。その瞬間ならば,柱の刃も届くかもしれない。あるいは柱の刃に対する対応が遅れ,さらなる隙が生じるかもしれない。弱者の思わぬ一撃が黒死牟の首をとれるかもしれない。

 

経験者が語る圧倒的説得力。

理にかなっているだけでない。事実勝利をもぎ取ってきた「弱者」の実績に基づく助言である。

 


 

 

 


不死川玄弥の覚悟とは

しかし言うは易く行うは難し。

実際に黒死牟と面するのは弱者・不死川玄弥である。

 

 

鬼殺の呼吸もできない。日輪刀を模した銃は遅すぎて当たらない。鬼を食ってパワーアップできるといっても,黒死牟そのものを超えられるわけではない。さらには鬼舞辻無惨のコントロール下に陥る危険すらある。

 

無いない尽くしの弱者が,鬼を食うことでしか強くなれなかった弱者が,上弦の壱筆頭と向かい合うのである。立ち竦まないはずもなく,怯えないはずもない。弱いからこそ,一瞬で胴を切られるような圧倒的な実力差だからこそ「弱者」なのである。

 

弱者だからこそ相手にされない,その玄弥が黒死牟に隙を作れるとしたら相手が「警戒の枠」を自分に一切振っていない最初の一回のみであろう。それ以降とならば,黒死牟はわずかにアンテナを玄弥に向けるだけで「弱者による隙づくり」を防ぐことができてしまう。玄弥は弱いから...炭治郎のように「届けば首を切れる呼吸の剣士」ではないから...。

 

そんな玄弥だからこそ,今回の「覚悟」は重いのである。

もしかしたら玄弥は人間ではなくなってしまうかもしれない。仮に黒死牟を倒したとして,鬼となって鬼殺隊に殺されるしかない運命かもしれない。それでも兄を救いたい。師匠を,仲間を助けたい。

 

 

そんな思いを後押ししてくれる回想の中の炭治郎の笑みが優しい。それは上辺だけの優しさではない。覚悟を促す真剣な笑みである。いざ弱者として鬼と向かい合わなければならないとき,限りなく低いが戦局を動かす可能性のあるそんな「覚悟」を後押しするそんな笑みである。

 

「できる」「できない」ではなく「やるべきか」「やらないべきか」の選択をする時,鬼殺隊として,兄を守りたい弟として取るべき行動を促すような,そんな炭治郎の笑みが心に残る172話でした。まる。

 

余談

少し妄想

玄弥は鬼を食えば食うほど強くなれる。それが上弦の壱ともならば相当である。この先,思いもよらぬ攻撃を与えることで隙を作り,黒死牟はさらなるダメージを受けるかもしれない。その結果,再び輪切りにされようとも,落ちた耳たぶをたべ,さらにパワーアップして玄弥は蘇るかもしれない。

 

 

そんな削りあい,喰鬼の果てに,最後は黒死牟を脅かすようなレベルまで力を上げるかもしれない。だがその先にあるのは何でしょうか。

髪を食べただけで聞こえる無惨の声。黒死牟を食えば食うほどその支配力は強まっていく。どんどん鬼として身体は変化していく。最後に黒死牟を倒したとして,玄弥は果たして人でいられるだろうか。

 

 

無論,玄弥は人として抗おうとするだろう。だがそれでも「鬼」になってしまった時,不死川実弥はどうするだろうか。鬼となった弟を切ろうとするだろうか。

 

この時,実弥は本当の意味で炭治郎の気持ちがわかるんじゃないのかしら。初めて柱合会議で炭治郎と禰津子にあったあの日,禰津子を処断しようとした自分に懸命に反論し,肺がつぶれようとも妹を助けようとしたあの時の炭治郎の気持ちを。

 

 

もし弟が鬼になってしまったとしたら,自分がそれを切ることができなかったとしたら。弟を信じ,弟を守ろうとするのではなかろうか。地べたに頭をこすりつけてでも弟の命を嘆願するのではなかろうか。

 

そんな実弥と玄弥の姿を崩れ落ちる身体を感じながら,黒死牟こと継国厳勝は自らの兄弟について思いながら死ぬ。そんな未来をちょっとだけ感じました。

 

というわけで再度まる。

 

 

 

 

   

 

 

 

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*画像は『鬼滅の刃』 172話 ,46話 より引用しました。

画像引用は中止しました。