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『鬼滅の刃』 177話 弟 感想 : 兄の嫉妬の裏にあったもの

 

というわけで今回は回想編です。鬼を倒した後に,その鬼の人としての人生を振り返る。いつもの様式ですね。継国厳勝にはどんな背景があったのか,描かれます。そんな今回のタイトルはずばり「弟」

 


弟に対して並々ならぬ嫉妬心を抱えていたことは既に描かれていますが,そこを掘り下げられましたね。 

 

 

 

 

 

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兄と弟

回想編ということでこれまで語られてこなかった事実が続々と放り込まれてきましたね。

 

  • 継国厳勝と縁壱は双子だった
  • 長男である兄は後継ぎとして期待され,次男の縁壱は不要なものとして扱われていた
  • 縁壱は兄を慕っていた
  • 厳勝は弟を憐れんでいた 

 

そんな事実関係が分かります。

 

なるほど...。戦国の世に生まれたものであれば,序列は絶対の世界。序列が乱れることは組織としての弱体化に繋がります。故に継国家に限らずどこでも跡取りは長兄,残りはそれを支えるというのが普通です(よっぽど長男がうつけなら例外はあったかもしれませんが)。そうした年齢による序列づくりは「変えようのない事実」なだけに,規律が保ちやすかったのでしょう。

 

そういえば無限城に集められた時も,猗窩座さんの童磨に対する振る舞いに対し,上弦の壱として「序列・規律の乱れを憂いている」といった発言をしていましたが,それはこういう世界観で生きてきたからこそなんですかね。

  

 

しかしまあ「持てる者」として恵まれた環境を整えられ,後継ぎとして剣を鍛え上げられ,またそれなりに「強さ」をもっていた厳勝とすれば,父に疎まれ不遇な環境で過ごす縁壱は憐憫の対象である。純粋に弟であるから気にならないはずもないですが,可哀そうという感情から遊びにいってやったり,手作りの笛をつくってやったり...そんな「施し」をする程度の愛情はあったわけです。いまと違って。

 

しかしそれは害にならない者に対する「持てる者」の余裕。俺が上,お前が下だ!!という無意識の優越感があればこその行動ですよね。

 

 

 

 

 

 

 

縁壱が兄に求めたもの

そんな兄の気持ちはどこへやら,弟・縁壱はひたすらに兄を慕っていたことが分かります。家の事情と己の立場を感じ取ってか,決して目立とうとせず。ただ自分を気遣ってくれる実兄を見つめていた。

 

 

言葉すら発しないと思わせながら,その実流ちょうに喋りかけたり。兄の夢を聴いて,自分も二番目に強い侍になると言ってみたり。そんな言動の裏には,兄の夢を知りたい,兄の夢を応援したいという純粋な心が見て取れる。自分が二番目になるというのは,それで兄に寄り添うことができると考えたからであろう。

 

弟として,兄・厳勝に対して純粋な愛情を抱いていたことがそこから見て取れます。

戯れに教えた剣の指導...それが圧倒的な才能を示すことになった時,縁壱は「侍になりたいと言わなくなった」という。厳勝はそれを「人を打ち付ける感触が耐え難く不快だったから」と述べています。確かにそうなのでしょう。

 

しかしそれだけではないのだと思います。

剣を極めたい厳勝と剣について話をする時,縁壱はいつも酷くつまらなそうにしていたという。なぜか。それが不快な行為だったというだけではない。試しに自分がやってみたことが,結果として兄の夢を脅かすことになると知ったから。自分が同じように剣を極めたら,自分が一番になってしまうから。

 

だから縁壱は侍になりたいと言わなくなった。

縁壱が侍になりたかったのは兄と共にいたかったから。兄を支える弟として,兄と話し,遊び,戯れてともに齢を重ねていく。そんな普通の兄弟の愛情を持ち続けていたかったからですよね。それを自分が脅かすのは本末転倒である。

 

 

縁壱はただ兄の弟に対する愛情がほしかった。ただそれだけだったのに,二人の才能の差は双方の人生を大きく変えることになる。 

 

厳勝が弟に求めたもの 

一方の厳勝。こちらが縁壱に求めたのは「強さの秘密」である。

 

日本一の侍になる。そうであるならば他人ができることは自分もできなければならない。弟・縁壱の強さは明らかに自分を越えている。その強さの秘密がどうあっても知りたい。

 

そんな縁壱がもつ強さとは...。

 

  • 生まれながらにしての「痣者」という天与の才
  • 透き通る世界が見える特殊な「視覚」
  • それに相応できる「身体能力」

 

ふむ。

こうしてみると歴代の鬼斬りを含めて比類なき存在であることが分かりますね。 現在の鬼殺隊ですら後天的に「痣者」となり,後天的に「透き通る世界」を会得する。それらを駆使するための「身体能力」は血のにじむような鍛錬と圧倒的強者である鬼との死闘によって磨き上げられたものである。

 

自らが強くなるために知りたかったことを聞き出した時,理解できたのは「自分より弟がはるかに優れていた」という事実だった。そりゃ凹むわ...。

 

 

自分が欲しいものを縁壱は持っている。その縁壱はそんなものは「いらない」と思っている。縁壱が欲しい兄との何気ない日常の遊び...兄との家族としての交流は,厳勝にとっては剣とは比べ物にならない些細なものである。そんなギャップ。ボタンの掛け違い。

 

鍛錬し,後天的に痣も,透き通る世界の視覚も手に入れたとはいえ,それは持たざる者が努力してこそ。努力の努力による天才であったかもしれないが,最初からすべてを手にしている神童からみれば,本当の天才ではなかった。七歳の童であった厳勝にとって,どれほどの絶望がその胸に降りてきたのか。想像に難くないですね。

 

 

そして厳勝は弟に嫉妬した

しかしまあ,この段階では先々に対する不安感という話です。縁壱に対してまだ嫉妬はしていない。それが嫉妬の炎をめぐらせることになったのは,より核心的な事実を思い知らされた時である。

 

突然の母との別れ

何の前触れもなく,唐突な母の死に戸惑うことしかできなかった厳勝。二人が悲しみの感情を表すでもなく淡々と会話するのも意味深ですよね。

母の具合の悪さに全く気付いていなかった厳勝は「何も見えていなかった」。一方の縁壱は最初から母の具合の悪さが「見えていた」。透き通る世界の視覚をもつ天賦の才は,母の左半身が不自由であることを見抜いていた。

 

 

甘えるように母の「左」にしがみついていた縁壱。それが左が不自由な母を支えるためだったと悟った時,縁壱を心の底から憎悪をせざるを得なかったというわけだ...。自分が見えなかったものが見える。その才覚は天与のものであり,自分には無い。

 

憐れんでいた者が実は己よりはるかに優れ,それがどうしようもない「才能」に起因すると理解したからこその嫉妬の炎。自ら引いて後継ぎを自分に「譲る」気遣いをされたこと,それこそが自分に向けられた「憐み」だと感じた時の怒り。

唐突な主客逆転,それも縁壱には最初から分かっていたにもかかわらず自分に気遣っての「施し」を与えて去る。全てが縁壱にあり自分には無いという事実への絶望。こうして弟は侍になるのをやめ,兄は弟に嫉妬したというわけですね...なるほどなあ。

 

 

しかし話はこれで終わらなかったわけですね。

来週描かれるのでしょうが,結局縁壱は「侍」になっている。そりゃそうである。侍の時代に才覚があると分かっている人間をただ寺に放り込んでおくわけにもいかないのである。呼び戻されてともに侍として期待されたのでしょう。日本一・二の侍として。

 

だがあにはからんや,日本一の侍になりたかった者は後塵を拝し。日本一になりたくもなかったものはやりたくもなかった侍をやらされる。そんな鍛錬と実践の日々。厳勝にとってたまらない人生だったんだろうなあ...。

 

この辺りが厳勝が鬼となり「黒死牟」となった経緯と繋がっていきそうである。人としての強さで縁壱を上回りたかった厳勝。倒されるわけにはいかない鬼舞辻無惨。双方の利害が一致したのは何となく推測できます。まさにビジネスパートナーである。

 

ただ悲劇だったのはそこまでしても縁壱を上回ることは出来なかったし,天賦の奇才の持ち主は二十五で死ぬでもなく老衰で死ぬその日まで自分を「上回った」。決して超えることができなかった兄の呪縛。最後まで「憐れまれて」別れた弟の姿。

 

そんな全てが「無限の嫉妬」になる。ああ悲劇,である。次週,どんな物語が描かれるのかを楽しみにして今回の感想は以上。まる。

 

 

余談

 

今回登場した,厳勝が縁壱に与えた「笛」。意味深である。

 

 

兄が憐みの情から与えた戯れのおもちゃ。それは縁壱にとって「欲しかったもの」兄の愛情の象徴である。外れた音しかならないガラクタの笛,笛そのものに価値はないかもしれない。でもそれこそは欲しかったものを手に入れた縁壱の象徴だったりする。

 

片や厳勝はどうか。

侍としての人生においては長々と己の持たない才能を見せつけられ,鬼と化した後もその剣に叶うこともなく,最後は憐れみをかけられたまま勝利することもできなかった。永遠の敗北という枷を背負いながら,侍でもない者にまで堕落した己が姿に自壊する有様である。強さを求めた厳勝は最後まで強さで縁壱を上回ることは出来なかった。

 

探していたものは最後,足元で見つかる

そんな鬼滅の刃の構造の中で,最後のアイテムはこの「笛」なのかもしれないな。自らが与えた愛情の証。この笛,きっとどこかで黒死牟こと厳勝はまだ持っているんじゃないかしら。老衰で死んだ弟が肌身離さず持っていた笛を,壊すこともできず,自らの敗北の証として持ち続けていたんじゃなかろうか。

 

 

そんな「笛」が思い出させる何かが最後にある。そんな予感がして溜まりません。厳勝は縁壱と同じところに行けるかどうか,その鬼としての人生を鑑みればわかりませんが,どんな心の救いがあるのかは気になるところである。というわけで再度まる

 

 

   

 

 

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*画像は週刊少年ジャンプ2019年45号 『鬼滅の刃』 第177話 より引用しました。画像引用は中止しました。