現実逃避 - hatena

「かぐや様は告らせたい」の感想を書いている漫画感想ブログ

海賊版サイト規制について

まあブログ(ウェブログ)らしく,海賊版サイトに関する記事を見つけたので少し拾っておこうと思う。

 

ブロッキングありき?海賊版サイト巡る議論に不満続出(読売新聞編集委員 若江雅子)2018年09月03日 18時30分

(読売新聞)https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20180903-OYT8T50059.html

(Yahoo!ニュース)https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180904-00010000-yomonline-sci

 

 

 

 

背景

昨年から今年前半にかけて,漫画の海賊版サイト対策について話題があったのを覚えているでしょうか。違法に漫画をアップロードし,その結果として多くの著作物が違法に流通する事態となっていたわけです。

 

運営者は海外の匿名性の高いサーバーを使うことによって特定を難しくし,著作権侵害処理にも誠実に対応しないなど,事実上野放しで違法な漫画読み放題状態が続きました。彼らはサイトアクセスに対する広告収入で荒稼ぎをしたと言われますが,反面,正規の雑誌やコミックスの売り上げにも大きく影響したといわれています。

 

そんな動きに対し漫画家たちも声を上げ,「トマトイプーのリコピン」(大石先生)なども週刊少年ジャンプで取り上げられました。

 

過去記事
ayumie.hatenablog.com

 

その時,僕も自分なりの対応策として「大手携帯3社を中心に自主的にブロッキングすれば,こうした違法流通を抑えることができるのではないか」とコメントしました。その後,実際に政府の声掛けでプロバイダによるブロッキングについて検討が進められたことを覚えています。

 

 

インターネット上の海賊版対策に関する検討会

ただ「政府がブロッキングが望ましい」と述べて,それを唯々諾々と了承するとすれば,そこに大きな禍根があります。法的根拠はなんなのか。検閲,表現の自由の侵害にならないか。こと人権にかかわることであったため,大きな騒ぎとなったというが実情のようです。

 

その結果「インターネット上の海賊版対策に関する検討会」というものが内閣府知的財産戦略本部を事務局として設置され,海賊版サイトへのブロッキングについて検討することとなったようです。

 

しかしまあ,記事の内容からすると商業コンテンツのステークホルダーや政府側は「ブロッキング推進」の意向が強く,検討委員会の議論は推進前提で進められており,その進行にあたって消極派・反対派から苦言がなされている。そんな状況のようです。

  

著作権と自由権

この意見対立のポイントは,二つの権利のバランスについてなのだと思います。

 

海賊版サイトにブロッキングを行いたいという立場は,基本的に著作権の保護を念頭に置いている考え方です。

 

出版物は公に公表された段階で著作権が生じます。出版社は作家から原稿を預かり,出版物として整え,それを頒布することで利益を生み出します。その利益が著者・出版社・出版流通業界に還元され,彼らの生活を支えています。

 

ですから根源となる海賊版サイトを規制するというのは,彼らの立場からすれば当然至極の立場であり,当然のこととして出版物の違法流通は絶たなければなりません

 

一方で,消極派・反対派の立場はより大きな基本的人権である自由権,その中の「表現の自由」を安易に犯すべきではないという考え方です。

 

漫画家が著作物を作り(表現の自由),それを読者が読む(表現を受け取る自由)。こうした自由権があるから漫画家は自分の作品を自由に描ける。読者はそれを読むことができる。

 

その観点で「海賊版サイトブロッキング」を考えてみましょう。海賊版サイトをブロッキングするのは通信会社です。より正確には,商業ステークホルダー(あるいは政府)の意向を受けて通信会社が止めます。問題となるのは,この「意向」を誰が持つのか,ということだと思います。

 

これはブロックすべきという「意向」に基づいて通信の自由をブロックできるということは,一つ間違えれば「検閲」として機能することも可能だからです。慎重派・反対派の皆さんは,おそらくそこを懸念されているのでしょう。

 

僕が最初に「プロバイダがステークホルダーの意向を受けて,ブロッキングすれば」と条件付きで提案したのは,こうした懸念を解決することを念頭に述べたわけです。

 

 

つまり,通信をブロッキングするという行為をするならば,それは「正当なブロッキングの意向を示せる者」に限定すべきではないかということです。

漫画家さんをはじめとする著者,それらを編集著作物として出版する出版社,こうした「当事者」の発意がブロッキングの条件。そのような制度設計にすれば,表現の自由に対する懸念は解消されるのではないでしょうか。

 

著者では無いものがブロッキングの意向を示し,ブロッキングできるのであれば,それは著作物とは関係のない「第三者」の意向で著作物の流通をストップさせることになります。それは検閲と変わりません。

 

 

しかし著作権を持つ著者,その意向を受けての出版社がブロッキングを要請するのであれば,「正当な著作権をもつ著者が違法流通を差し止める」ことになります。これであれば検閲には当たりません。

 

そして制度設計は,新しい法規制を行うのではなく現行法の枠内で「運用」されることをお勧めします。

表現の自由の例外を認めるような法設計にするのではなく,著者・出版社などステークホルダーが,プロバイダーにブロッキングを要請する仕組みを出版流通・通信各社で制度設計し,そこで管理運用する。

 

そうすればブロッキングの悪用といった懸念は生じず,著作権を保護しつつ,漫画家にとっても読者にとっても大切な表現の自由も守られる。そんな風に思いました。
まる。