現実逃避

現実逃避 - hatena

「かぐや様は告らせたい」の感想を書いている漫画感想ブログ

「ネット上における『キン肉マン』画像利用についてのお願い」のお話

【発端】

SNSやブログ等、ネット上における『キン肉マン』画像利用についてのお願い / 週プレNEWS 2020年09月10日
https://wpb.shueisha.co.jp/news/info/2020/09/10/112011/

 

まず,この文章を正確に最初から最後まで読んでいただき,その上で以下の文章はお読みください。

 


【事実整理】

(1)ゆでたまご先生のお願いから

ポイントは以下の3つかと思われます。

【以下引用】

①"感想を自由に述べ合ってもらうのは構わない"
②"漫画原稿のうちの一枚が、私たちの意図が伝わらず望まない形でSNSに上げられただけで20ページの原稿をすべて読んだように思われたことも非常に残念"
③"自分が読む前に内容を話されたら怒っていたように、今回はその配慮のない行動がSNS上の一部の読者によって引き起こされてしまった"

 

これだけを読むと,作品全体をしっかり鑑賞してほしい。一部を切り取って流布すること早めてほしい。感想は自由にやってほしい,という風に読めます。

 

 

(2)『週プレNEWS編集部』のコメントから

【「お願い」に関する部分】

"Twitter、Instagram等のSNS、およびブログ等、インターネット上における『キン肉マン』画像のスクリーンショット投稿について(中略)読者の皆様の良識ある行動を改めてお願い申し上げます"

 

【著作権侵害に関する部分】

以下引用

①"漫画のスクリーンショットをSNSやブログに著作権者の許諾無く投稿(アップロード)する行為は、法で定める一部の例外(※)をのぞき、著作権の侵害にあたり、場合によっては刑事罰が科され、あるいは損害賠償請求の対象となります"

"②悪質な著作権侵害、③ネタバレ行為(文章によるものを含みます)に対しては、発信者情報開示請求をはじめ、刑事告訴、損害賠償請求などの法的手段を講じることもあります"

 

【論点整理】

(1)ゆでたまご先生(作者=著作権者)の主張


①感想は自由に述べあってほしい
②漫画の核心的部分が流通し,作品が本来の形で伝わらないのは残念
③SNSなどでそうした「漫画の核心的部分」を切り取って伝達されてしまうことが問題

 

これを読むと漫画家としてごく真っ当な気持ちを述べられているだけかなと思います。自ら書いた作品を完全な形で正当なルートで読んでほしい。一部分を切り取って読んだ気になったりされるのは残念でしょうし,これから読む読者にネタバレとなるようなスクリーンショットが見えてしまう状況は,「完全な形で正当なルートで読む」という当たり前の状況を脅かしているからです。これに懸念を示すのは作者がそのように述べられるのは自然かと思います。

 


(2)『週プレNEWS編集部』の主張整理

①について

これは著作権法に基づく著作権者の権利に基づく主張であり,法律内容の要約そのものなのでそのとおりです。スクリーンショットで作品を写す事自体が「複製権侵害」,コマの大きさやらコメントやコラなど内容変更を伴えば「同一性保持権侵害」,インターネットに流せば「公衆送信権侵害」になり,著作権の侵害にあたります。このことで著作権者が違法行為者を訴えることは可能です。

 

ただ実際問題として,そうした行為がSNSなどで行われても訴えられた人は皆無かと思います。それは,そもそも著作権は親告罪なので著作権者(この場合漫画作者)本人が訴える必要があること,著作権は「財産権」なのでそうした違法行為に対して著しい財産侵害がなければそもそも裁判費用を回収できるほどの損害賠償請求ができないことが理由として考えられます。

 

また,これらのスクリーンショットを伴うSNSでの流通は著作権侵害を狙ったものではなく,漫画の感想を述べ合う中で感想を補強する形(引用)で行われてきたものが多かったと思われます。

 

もちろん140字の感想に対して1ページ分の漫画原稿のスクリーンショットは引用の要件を満たさないでしょう。そもそも引用の要件を満たすためなら出典を正確に記述する必要があります。その意味では引用の要件は満たさないのですが,それが作者の財産を著しく侵害したり,作者の名誉毀損など伴う使われ方をしないかぎり「グレー」で処理されてきた部分だからです。


ただ今回,ゆでたまご先生はそうしたスクリーンショットによる感想について,少なくとも自作品(キン肉マン)については止めてほしいという意向を示しました。これに実効性を伴わせるためには,著作権者としての権利行使するしか無いわけです。

これまで「グレー」で済まされてきた部分について,少なくとも「キン肉マン」については認容しないという基準を示した。これが編集部による②「悪質な著作権侵害」として法的手段を講じることもあるという対応であると解釈できます。

 


で,おそらくネットで大きく問題になっているのは③の部分かと思います。


「ネタバレ行為(文章によるものを含みます」ということですが,この表現だと画像引用しなければOKという意味ではなく,そもそも作品内容に言及することを著作権侵害の対象として扱うとしている点です。

 

想定しているのは「作品の核心に当たる部分を文章化(翻案)して流布すること」だと思われます。これを著作権法違反に問えるのかと言えば,微妙なところですがおそらく著作権者が有する「翻案権」侵害として扱うということでしょう。これは裁判の結果はやってみないとわかりませんが,その筋で訴えそのものを起こすことはできると思います。

 

そこで問題になるのは,読者からすると「感想」と「ネタバレ」の線引きはどこで引かれるのかわからない点です。

 

ここが不明瞭のままなので,これでは感想をつぶやいただけで訴えられる危険性があるのかということになります。この部分については訴えの主体となる「著作権者が示すしか無い」部分ですが,作者のゆでたまご先生は「核心に関わる部分に触れるのは駄目」という基準をお持ちのようにお見受けします。(作者ツイートより

 

少なくとも「キン肉マン」については画像引用はなし,核心(オチ)が直接分かる文章はなしならOKという風に読み取れます。基準が示されれば読者はどこまでがOKなのかわかるので,安心して感想を述べることができるわけです。

 

 

ジャンプ+に話が飛んだ件


で,その後に起きたのがジャンプ+編集長によるこの発言です。(ジャンプ+編集長個人アカウントより

 

これは「ジャンプ+」でも2週遅れで同作品を掲載しているので,一応触れておいたというだけに読めるのですが,これを色々解釈した方が結構多かったように思います。

 

  • 週プレが出たあと2週間後にジャンプ+でも掲載されるので,それまで核心に触れた感想は言えないのではないか,とか。
  • ジャンプ+編集長が個人の立場とは言え同様のスタンスならば,ジャンプ+に掲載されているすべての作品に適用されるんじゃないかとか。

 

そういうことかどうかはこのツイートからだけでは読み取れなかったのですが,

 

というツイートが付け加えられたので,「これではSNSでどこまで発言していいのか基準がわからない」という反応が多数出たかと思います。

 

個人的には著作権のグレーで処理してきた部分に明確な基準を示さないほうがお互い良いのだろうという意味でのツイートとみなし,「キン肉マン以外はこれまで通りの基準すよ」と読んだのですがそうは捉えなかった方も多かったようです。

 

 

結局,先程ジャンプ+編集長が補足の説明を加えられました。

(リンク先)ジャンプ+編集長個人アカウント

https://twitter.com/HosonoShuhei/status/1304072392763817985
https://twitter.com/HosonoShuhei/status/1304072954511155201

 

 

2週間ネタバレ駄目ということではないということ,『キン肉マン』と作品を限定した話であること,ゆでたまご先生の趣旨に個人的に同意という意図を述べたものであることが示されました。

 

ジャンプ+の方はすでに公開後2週間たっての話ですので,そもそもこの段階でネタバレ云々という次元ではないかと思われます。加えて後段のツイートで,補足されている通り,ジャンプ+連載作品については「従来どおり」という見解が示されているものと思われます。


というわけで,結論から言うと,

 

(1)対象となる作品は『キン肉マン』だけであること

(2)最新話のスクリーンショットはあげないこと
(核心=オチ部分は最も駄目ですが,作品の全体を見てほしいという意図からは最新話のスクリーンショットは上げないほうが良いでしょう)

(3)最新話の核心(オチ)について,触れないこと(翻案の不許可)

 

(4)他作品については従来どおりグレー運用

 

という風になるのかなとと思われます。(見解は個人的なものです