現実逃避 - hatena

現実逃避 - hatena

漫画感想のブログ

帰ってきた 『ニセコイ』 第138話 ダイキチ 感想

「まえがき」今だから思う,138話 感想

もしも楽の気持ちをヒロインが悟ったら...。

日常ではあり得ない状況をシミュレートしたようなこの回,いろいろ感慨深いものがあります。 

 

f:id:ayumie:20181003171121p:plain

ダイキチ


素敵なのは外観だけではない。当時の楽の恋心は小野寺さん一筋でしたから,ここでさしている「素敵なもの」とは和菓子もさることながら小野寺小咲というヒロインも指しているように読めますね。

 

当時の状況を振り返ってみると,この状況下において千棘の想いが通じる道が見えていなかった。とならば,これは千棘の告白(失恋)シミュレーション的なお話なのかなとぼくが読んだのも無理からぬことです。若さが出ましたね(え)

 

それでは当時の感想をどうぞ。

 

 

当時の感想 ( 初出 : 2014-09-13 05:28:04 )@現実逃避

 

さてと。『ニセコイ』 138話 ダイキチ 感想です。


「凡矢理の休日」第3編,舞台はいよいよ決戦の場「和菓子おのでら」へ...


この流れで二人を迎えるのが春ちゃんで,後ろの方で小野寺さんがモブ顔で「あ,一条君いらっしゃ~い」とか言っているだけとかだったらどうしようとか懸念しておりましたが,大方の予想どおり笑顔の小野寺さんが出迎えてくれたのでした。

 

 

f:id:ayumie:20181003171146p:plain

小野寺さんマジ天使





ふう...。今週は土曜日にジャンプが発売ということもあって,次にジャンプを読むまで9日も間隔が開くのかと思うとちょっと気が重かったのですが,そんな気分を吹っ飛ばすこの小野寺さんの姿はいったいどうよ。まさに地上に降りた最後の天使とは小野寺さんのことであるな。


...それにしても自分の好きな女の子の家に自分のニセコイ相手そっくりな外国の貴賓を連れて行く。楽さんの神経の太さはマフィアの首領クラスですね。俺だったらそんな面倒くさい状況の中で地雷原に突っ込んだりしないけれどなあ...。この図太さは案外二代目向きかもしれないな,コイツ...。



それはともかく。面倒な状況を一通り説明した後の自己紹介のシーン。

 

 

f:id:ayumie:20181003171209p:plain

ふたりはクラスメイト





まあ,たわいも無い自己紹介シーンではあります。楽がクラスメイトの小野寺さんを紹介するという流れね。二人の関係はクラスメイト。字面で読めば千棘の時と同じ説明です。実際,現在の二人の関係はただのクラスメイトだしね。


だけど!
隠された関係は千棘のそれとは異なります。楽にとって千棘との関係は「ニセコイ」。偽物の恋です。でも小野寺さんと楽はそうじゃない。二人の関係は「マジコイ」だからね

マルーシャさんに「ふたりはその...とても仲が良いのですね」と踏み込まれたとたんあわわ...な二人。慌てた小野寺さんは食器を落として割ってしまい,慌てた楽は割れた食器の破片で手を切ってしまう...。

 

 

f:id:ayumie:20181003171230p:plain

そしてこの二人の世界である





小野寺さん絆創膏を楽さんに張ってあげる何気ない一コマ。でもそこから流れてくる二人の気持ちは言葉でなくても分かってしまうわけです。

分かってないのは当の二人と千棘だけってところがまた泣けてきますけれど。とまあ,前回の予想通り,マルーシャさんの恋心は小野寺さんと楽によって終止符を打たれたのでした。

 

 

f:id:ayumie:20181003171255p:plain

ここは失恋和菓子屋





まあ予想以上にベッタベタに止めを刺しちゃったなあ...という感じです。


憧れの国の日本で,初めて会った男の子に優しくされて楽しく一日を過ごす。燻るドキドキ感。出会いを予兆させる母の思い出とダイキチのオミクジ。ドキドキは恋心となりかかって,そして一瞬で消されてしまったのでした。なんというジェットコースターな恋。

ううむ...。展開は読みきったとおりだけれど,見ていてやっぱり切ないですねえ。

 

前回,マルーシャさんはどのように失恋を受け止めるのか,あれこれ考えていたのですけれど,「自分で真実を感じ取る」というのは春ちゃんと同じパターンでした。

まあ楽さんからしてみればマルーシャさんは「恋の対象」ではなくて一日ともに過ごした異国のお姫様に過ぎないし,マルーシャさんが一日で告白して楽が振るなんてシーンはまあありえないわけですけれどね。そういう意味ではごく自然な流れだったと思います。


で,失恋の受け止め方ですけれども,自分の中で静かに消化する...というのは「小野寺さんに似ている」といわれた性格を反映させたもののようにも見えます。一方で,失恋を受けとめ切れていないところもある。

静かに,でも心の中のは消しきれていないところは千棘たち他の情熱型ヒロインに通じるものもある。


その結果,最後の区切りとして「お別れのキス」に繋がるわけです。

自分の国の習慣と偽って,でも楽との楽しかった真実の時間の気持ちを組み合わせてしたお別れのキス。直接的に恋心を伝えたわけではない。

でもマルーシャさんの気持ちが込められた頬へのキス。頬へのキスということで,どうしてもマリーを想起させますね。キスをした時点の状況とか込められた意味は全く違いますけれど。

 

 

f:id:ayumie:20181003171318p:plain

想いを込めたキス





マリーのキスは,「これから私を好きにさせてみせる!」という想いを込めたキスでしたよね。一方でマルーシャさんのキスは自身の失恋を受け止めた上で,「素敵な思い出をありがとう,好きでした」という失恋を受け止めるための区切りのキスなわけです。


マルーシャさんは異国の王女様です。楽とは立場も違えば人生も違う。本来ならば交わるはずが無い二人がなし崩し的にともに過ごした「凡矢理の休日」。普通の漫画であれば,二人がもう一度出会い交流する機会は有り得ないこと。

だからこそでしょうね。マルーシャさんはその想いをキスに託して自分の中の一区切りとした。


ううむ。
始まった時はどうなることかと思いましたが,なかなかどうして見事なガール・ミーツ・ボーイだったじゃありませんか。テンプレどおりと言ってしまえばそれまでですけれどね。身分の違う王女様と一般人によるたった一日の物語...それがうまく『ニセコイ』の登場人物に嵌ってなかなかのエピソードになったと思いますよ。


ああ。マルーシャさんの物語としてはな!


...
......
.........


今回のエピソード,すごく綺麗でまとまったと思います。エエ話だったなあ...というちょっとしんみりしちゃうマルーシャ王女の恋のものがたり。でもちょっと待ってくださいよ!それは孔明の罠だ!


今回,楽が千棘と小野寺さんをマルーシャさんに説明する文言として「クラスメイト」という言葉が使われました。マルーシャさんのスマホの画面に表示された文言としては全く同じ「クラスメイト」です。


でもその裏にある意味は全く異なって,楽から見れば千棘は本当に「ただのクラスメイト」だけれども,小野寺さんは「ただのクラスメイトじゃない」。その描写の違いで楽の気持ちがいまだ小野寺さんにあることが確認されました。


でもね!

確認したのはマルーシャさんと読者であって,肝心の楽も小野寺さんも千棘もお互いの気持ちに全く気がついていないわけですよ。そりゃ小野寺ファンとしては一安心ですけれども,これじゃあエピソードの積み重ねになっていかないじゃないですか。

「楽にとって本当に大切なのは誰なのか」確認すること,そして小野寺さんに想いを伝えること,あわせて(どうでもいいことですが)羽姉さんから鍵のエピソードについて情報を得ること...今回のマルーシャ編がこうしたエピソードに展開する起爆剤となるためには,もう一歩先に進める必要がある。


というわけで,次回がとてつもなく重要な回となってきました。
次回,マルーシャさんと千棘が再び入れ替わるわけですが,ここで二人の間にどういうやり取りが行われるかで今後の展開に大きな差が生じます。

今回,マルーシャさんは「楽と小野寺さんが相思相愛である」という真実にたどり着きました。このことが持つ意義ですよね。この事実が千棘に伝わるのか否かで本エピソードの物語上の意義が大きく異なります。千棘とマルーシャさんはお互い無事に一日を過ごせたことを確認するはずです。その中で,マルーシャさんはどこまで千棘に話をするのでしょうか。選択肢は三つ

 

1.一条さんを好きになり失恋したことには触れず,入れ替わって終わり
2.一条さんを好きになったが叶わない恋だと知って「最後のキス」をしたことを言う。
3.一条さんを好きになったが「一条さんには他に好きな人がいる」ことを知りあきらめたことを言う。

 


いったいどのコースをたどるのでしょう?
これまでの『ニセコイ』のエピソードの扱い方をみると,1である可能性は高いと思います。マルーシャさんは自分の恋の話,一条さんに他に好きな人がいる話はしない。

そりゃ思わせぶりなことはちょろっと言うかもしれないけれども,鈍感な千棘は気がつかないというケースです。


「マルーシャはパルプンテを唱えた!しかし何も起こらなかった...」といういつものパターン。まあ作者的にはエピソードを急いで積み重ねる必然性が無い(あと1年数ヶ月「ニセコイ」をさせなければならない)ので,いかにも存在しそうな世界線です。

ぶっちゃけた話,千棘と楽のキスシーンを描きたかったんだけれど,直接そこに持っていくにはエピソードを進めなければ実現不可能だから「千棘のそっくりさん」で実現させたんでしょ,古味先生?(ちょ)

しっかし,これだと本当に千棘は蚊帳の外で,モブ棘さんといわれても仕方が無くってしまう。メインヒロインが本当にそれでいいのか,という気持ちにはなりますが。


...
......


とはいえ,僅かな可能性ではありますが2or3の可能性もあります。

2の場合,当然千棘は動揺するでしょう。そして千棘の楽への想いがある以上,楽に確認せざるを得ない。もしかすると,少し嫉妬めいたことを言ったり,ちょっとした感情をみせるかもしれない。そこで楽が真顔で偽物の恋人なのになんでそこまで怒るの?」と問いかける...といった展開はあるかもしれない。

そこで千棘が自分の気持ちを素直に伝えたくなるかもしれないし,逆に自分のことは恋愛対象としてみていないんだと認識するかもしれない。ニセモノ(マルーシャ)の失恋がホンモノ(千棘)の失恋になるパターン実はこれでも「ニセコイ」は成立してしまうという...。

3の場合は少し複雑になる。マルーシャさんはもしかしたら小野寺さんの名前は出さないかもしれない。一条さんに他に好きな人がいると分かって失恋した,という話だけするかもしれませんね。そして千棘がそれを自分のことと思うか,他の誰かのことと思うかで結果が異なります。


前者であれば,千棘は勘違いしたまま楽への想いを募らせていくことになります。それが行き着く果てには,千棘から楽への告白という形をとるかもしれない。それこそクリスマスあたりのエピソードとしてはあるかもしれませんね。まあ結果はホンモノの失恋という形になってしまうわけですが...。

後者であれば,2の場合と同様に二人の関係がニセモノであったことを確認して,静かに失恋するパターンです。まあそういうパターンも全く有り得ないとは限らない。いずれにせよ,楽の想い人が小野寺さんであるという事実を千棘が知るということでエピソードが動く展開です。


なんとなく今回のエピソードはマルーシャさんによるヒロイン(千棘)の擬似失恋というイメージ付けをもって読み進めてきましたけれども,実はこれが千棘の恋の行方に左右するのかもしれない...というのは意外な重さを感じるエピソードになってきました。

 

まあ来週の展開を見てみないと分かりませんけれどもね。うーむ...9日間って長いですねえ。マルーシャさんと千棘でどのようなやり取りがなされるのか,ドキドキしながら待つことにしましょう。

...
......
.........

それにしてもマルーシャさんが恋心を抱いて,そして失恋した今回のエピソード。その実,当の楽と小野寺さんはまったくそれを認識しないという...。本当にふたりは似たもの同士なんだなあ。むしろ夫婦といっても過言ではない。(え)


だってそうでしょ。マルーシャさんに小野寺さんを紹介するこのシーン。今回の肝となった「クラスメイト」としての小野寺さん紹介ですけれど,セリフを変えてもごく自然にこのコマは成立するのである。

 

 

f:id:ayumie:20181003171425p:plain

むしろこっちで無問題。




俺には見えるぜ...数年後にこのセリフが実現している世界がな!俺のサイドエフェクトがそう言っているぜ!(え)

 

   


*画像は『ニセコイ』 138話 より引用しました。

 

 

 「あとがき」

今になって思えば,ですけれどこのお話は千棘の失恋シミュレーションというよりも,「実際には起こらない千棘の失恋(if)」を描きたかったのかなと思わなくもないです。それこそ小野寺さんの「シンコン」と対みたいなもんでね。

 

ただまあ読者は古味先生がどんな構想で物語を描いているか,描写から読み取るしかなかったので,当時はそういう読み取りはできませんでしたけれど。一条楽の気持ちがまったく動いていなかったですからね。

 

こうしてみると,ラブコメで展開予想(妄想)するなんてかなり無理なことを挑戦し続けていたんだなと思ったり。