さてと。『戦隊大失格』 第2話 の感想です。
本当は第1話感想だけ書いて,後は様子見のつもりだったのですがなかなかどうしてよ。第2話も引き続き面白いな!
世間的な評判はよく知らないのですが,戦隊モノとしてみたら「戦隊モノのお約束を裏から見た感じ」が面白くないかもしれない。アンチヒーローものとして見てみたら,やりつくされていないだけの「新しい何か」が求められる。僕はどっちも全く詳しくないので,逆に新鮮で面白いです。
春場ねぎ先生が上手いな~と思うのはお話づくりに対する「興味の持たせ方」なんだよね。前作「五等分の花嫁」もそうだったんだけれど,物語の世界観の描き方が上手い。お話のどこかにそれっぽい「ネタ」が仕込まれていて,これはどこかで回収されるんだろうなあという話の織り込みが上手い。なので純粋にお話展開に興味が持てるし,いろいろ想像の余地があるんですよね。
妄想という名の展開読みが大好きな僕としては,素材がラブコメじゃなくても十分楽しめる。単純にアンチヒーローものとしても面白いしね。
というわけで第2話「レッドキーパーを探せ」の感想です。
関連コミックス 【単行本】(春場ねぎ先生)
戦闘員と大戦隊の構図
という訳で,悪役側の末端戦闘員Dによる下剋上ストーリーが始まったわけですが。敵を食い破るために腹に入る「腹破り」は古典的なネタでありますけれど,なかなかにどうしてよ。
正義のヒーロー側は強大である。自陣側の幹部はあっさりやられ,自分たちが生きているのは彼らの存在意義を保つための「やられ役」として必要だからに過ぎない。そんな立場に追いやられているのは,一言で言えば「弱いから」である。戦闘員は滅茶苦茶弱い。
ふむ。
戦闘員は不死だし擬態もできる。けれども地球人に比べてきわめて脆い...というわけか。なるほどなあ。
いや,ちょっと変だと思ったんだよな。これが正義のヒーローによる勧善懲悪という「興行」だとしても,人間そのものの能力が実際の戦隊ヒーローものみたいに人外な力を持つというのは。
それこそ「ワールドトリガー」のトリオン体みたいに,なんらかの「からくり」があるなら分かるけれど,戦隊側だって生身の人間である(今のところ)。人間の身体能力を大きく超える力があるはずないわけで,強いと言ってもせいぜい格闘家やら軍隊レベルのソレなはずなんだよな。少なくとも顔出しして戦っている大戦隊員は。
そんな大戦隊側についても,今回背景情報が少し開示されました。
- 竜神戦隊ドラゴンキーパーを頂点としたクラス制を取っている。
- クラスは律令国家の階位に沿っている(正一位・従一位・正二位...)
- 戦隊はその色によって役割が分かれている。
- 色組織に入っていない「無色」がいて,立場は下っ端である。
- 「イエローは研究開発部門」「レッドは怪人討伐専門」。
先の疑問で示した,「戦隊は通常の地球人より身体的に能力が向上しているのか,戦闘員が弱すぎるのか」といった疑問に対する答えはそのうち開示されると思いますが,少なくとも研究開発部門があるということで,何らかの強化が成されている可能性は高そうですね。
本作は戦闘員Dが敵地潜入・腹破りという物語構造であるため,そうした背景を戦闘員Dが探っていく形で大戦隊の秘密も明らかになっていきそうです。
桜間君と錫切さんの「目的」
さて無事入隊試験を受験できたらしい戦闘員Dくん。
孤軍奮闘で手探りの中,敵の総本山に潜入といえば格好いいですけれど,なかなかに修羅の道である。
まず戦闘員には地球の知識がない。これまでかかわった地球人との繋がりで得た部分的な知識はあっても人間社会の基礎知識がない。ナイフとフォークの存在は知っていても「食べ方のマナー」は知らない。こうした人間としての知識の欠如。
「擬態ができる」「不死である」という能力をもってしても「知識」がなければどうにもならないことがあります。擬態を使って無事レッド駐屯地に入り込んだものの,そこで構成される人間関係も常識もなければサックリとバレてジ・エンドです。
一見,スパイとしては非情に優れた能力である擬態にはそういう弱点があるよね。化けた相手の背景知識がないと詰む。そんなことに思い至らないくらい,そもそも戦闘員は複雑な思考ができるような存在では無さそうですね。頭使うのは苦手らしいし。そもそも化けられる・再構成できるという段階で,戦闘員は厳密な意味での「生物」ではないのでしょうね。自立AI型ロボットみたいなものなのでしょう。
そんな戦闘員Dに近づく桜間君と錫切さん。
お目目ぱっちり意識高い系の桜間日々輝くん。お目目死んでいる美し系ヒロインの錫切夢子さんです。名前ありってことで,お話の導入者ってだけでなく物語にがっつり絡んでくるわけですが,なかなかにどうしてよ。裏がありそうである。
まず桜間くんである。
彼の立場は所属が決まっていない「無色」。第1話でも戦闘は許されず,避難誘導を行っていましたっけ。要するにまだ下っ端です。でもレッド隊正三位(序列5位)の朱鷺田とは顔見知りのようで,「坊ちゃん」とか言われている。ふむ。
どうやら桜間はそれなりの立場の人物の子息らしいですね。戦隊ものといえば戦隊指令がいてもおかしくないですが,その辺の息子かしらん。ただ本人にはまだ実力がないので無色の下っ端であると。朱鷺田は元々の知人(先輩?)で,感情的には桜間にあまり良い感情を抱いていないのか,含みがある感じである。
で,もう一方の眼が死んでいるヒロイン・錫切さん。
端的に言えば,戦闘員Dのことは完全に見切っていたし,むしろ彼女なりの目的があって今回のレッド駐屯地への潜入にあたってはかなり戦闘員Dを「カバーしてくれていた」。
- 桜間に接近されて擬態が壊れそうになった時に引き離してくれた
- 怪人と大戦隊の闘いが「やらせ」であるという真実に触れたとき,会話の流れで流してくれた
- レッド駐屯地への自然な潜入を助けてくれた
- 戦闘員Dが朱鷺田に誰何された時に,いつもの呼び方を教えてくれたり,ナイフが見つかりそうなところを救ってくれた。
逆に言えば,助けてもらえなければ戦闘員Dの潜入劇もレッドキーパー暗殺未遂もそもそも事象的にあり得なかったわけで,ここでも戦闘員の「能力の低さ」がしっかり描かれているわけなんですけれども,それはさておき彼女がなぜそんなことをするのか。
ふむ。
錫切さんには彼女なりの理由で大戦隊制度をぶっ潰したいらしい。これは面白い。
まあ背景がありそうな眼はしていた。お目目真っ黒だし。完全に何かに絶望しているか,深い悔恨・恨みを抱いている相である。
まず確認しておくと彼女は地球人なんだろう。怪人幹部の生き残りとか,怪人世界のお姫様だったというオチはあり得るけれど,少なくとも地球の社会に属しているしはっきりと戦闘員Dに「キミの敵」と告げている。まあ地球人なんだろうな。
彼女が研究開発部門に所属していること,大戦隊制度に対する敵意が存在することから鑑みて,家族なり大切な人が大戦隊に関わった結果「不幸」になったみたいな背景があるんでしょうね。それとも「こんなの戦隊じゃない!」とか思い込んでいる面倒くさい系特撮オタクなのかしら...? この辺の背景はそのうち描かれるでしょうけれど。
しかしこの展開は素直に面白い。
不死だし誰にでも擬態ができる「戦闘員D」と,何らかの理由で大戦隊をぶっ潰したい内部組織側の「錫切夢子」が手を組む。立場も目的は違うけれど過程(大戦隊潰し)は同じ。こういうの好きですよ,僕。
お話展開的にもこうして戦闘員D側の情報不足を補い,サポートしてくれる人がいないと,「大戦隊腹破り」なんて不可能に近いですからね。なるほど,これは戦闘員Dが主人公だけれど,違う立場・同じ目的の二人で戦隊をひっくり返していく物語なのか...。
第3話にはその辺の展開がいよいよ描かれて,「なぜ大戦隊はこんな茶番をしているのか」といった理由が描かれそうですね。この先の展開が楽しみである。まる。
余談:物語の背景について
最初に考えた「ラブコメ風味」の要素はかなり薄れた錫切さんですけれど,この二人の協力関係はなかなか興味深い。
多分に生物ですらない戦闘員と裏切者の地球人。立場も違えば目的も違う。過程としての「大戦隊潰し」がいっしょなだけ。そういう意味では利害関係しかない。だけれど,こうした協力関係はしばしばドラマを巻き起こす。くるでしょ,アレ。誘拐犯と犯人のアレですよ。ストックホルム症候群。
そういう意味でのラブコメはちょっと期待したい。
さて桜間くんのほうですけれど,彼は錫切さんと行動を共にしているのかどうなのか,ですね。大戦隊に対する信頼からして彼は目的は一致していない。しかし一方で戦闘員Dに対する謎の含みがある。第1話の「念押し」,第2話の「慧眼」,戦闘員Dに対してちょっとした含みが無ければそこまで彼を大戦隊に引き入れたいと思うだろうか。ちょっと気になります。
次。
今回登場したレッドキーパー。彼を倒すことが戦闘員D的には最終目標ですかね。最終目標が示された方が物語的には分かりやすいということで,お披露目。
イケメンでさわやか風ですが「戦闘員」との興行を取り仕切っている中心人物でもある。顔出しについては戦隊モノってそういうもんだろ...というお約束なので(戦闘員Dは知らない),意外ではないですけれど。いかにも戦隊ものに登場するこれから売れる若手俳優風ではある。
さてフォントの読みづらさが話題の「戦隊大失格」ですが,余り僕は気にしていなかったんだけれど,このフォントはちょっと分かりづらかった。「赤刻創星」ですかね,これ。ちょっとわからんのですけれど。
最後。
なまじ戦闘員と地球人(大戦隊)側の力が歴然としているので,このまま戦闘員Dの直悦的な戦闘力を高める方向では物語は進めようがないと思うんだよな。もちろん研究開発部門のイエロー・錫切さんが何かすれば別でしょうけれど。
ただヒントみたいなものはある。
第1話で示された「竜に対抗するのは虎」というのは,一見第1話だけのネタみたいにみえて伏線ぽいんだよな。いずれ伏線として使いなおしはあるかもしれない。
ま,それは伏線かもしれない程度の話として,根源的には今回戦闘員Dが述べたこっちの方法の方がはるかに実現性がある。
この闘いは茶番。それこそが大戦隊の最大の弱点である。これが知れたら組織は瓦解するし,地球人の支持はあり得ない。ただ最大の弱点である以上,これをどうやって「証明するか」が一番難しいところである。
最終的にはドラゴンキーパーの口自ら言わせて,それを天下に知らしめるみたいな手法
しかないでしょうが,どうなるでしょうか。物語の畳み方も気になるところである。再度まる。
現実逃避のご案内
Google検索で記事が出なくなったら、検索語に「現実逃避」を付け足すと見つかりやすいです。
*画像引用は中止しました。