現実逃避 - hatena

「かぐや様は告らせたい」の感想を書いている漫画感想ブログ

『戦隊大失格』 第5話 怪人の一撃 感想 : なぜ末端戦闘員は主人公足り得たのか?...の巻

このエントリーをはてなブックマークに追加  

 

 

面白い。

 

『戦隊大失格』の面白さはどこにあるのか,という点について読者の中ではどんな位置づけ何だろうかと思うことがある。ぶっちゃけ,『五等分の花嫁』を読んできた読者層が求めるものとは全く異なるし,いわゆるニチアサヒーローものを愛好している層が求めているものでもない。

 

いわゆるアンチヒーローもの(というのが具体的にどんなものか寡聞にして知りませんが)として見たとしても,じゃあ怪人側に感情移入するだけの素地があるのかといったらそこもよく分からない


怪人側が世界征服に来たのは事実である。大戦隊が地球を守るために怪人をほぼ制圧したのも事実である。地球防衛という観点からしてみれば,特段怪人側に感情移入する必要性は読者には無いんだよな。


とはいえ,『戦隊大失格』の主人公は(いまのところ)戦闘員Dであるし,物語の基軸は虐げられし怪人側による下剋上という形で描かれている。なぜか。

 

 春場ねぎ先生は,この世界観の構築の中で「戦隊側が何らかの理由で膠着状況を望み」「毎週偽りの危機を創り出しては地球防衛とうい寸劇を行っている」という構図を読者に見せてくれました。今回も含めて,大戦隊のヒーロー側が相手を単純に嬲り倒すだけの存在として見ており,その精神に正義性を見出すことができないことも描いてくれました。

 

f:id:ayumie:20210302030736p:plain

正義のヒーローの「正義性」

 

読者はそうした世界観が示されているからこそ,「地球」からみて本来敵であるところの怪人・戦闘員Dを主人公としてみなし,偽りの正義に対するその行動を主人公的目線で見てあげることができるわけです。そこには錫切さんが共謀の「口実」にした「弱いものに対する判官贔屓」という要素も加わって,本質的には敵であるはずの戦闘員Dの視点で物語を読んでしまう。まあそんな構造があるわけです。


弱き者が知恵と勇気で圧倒的存在から勝利をもぎ取る。正義と悪の物語で散々描かれた構図を,悪と正義の立場を入れ替えた状況で描き出す,そんなストーリーテリングが面白いのではないかと僕は思ったり。


みなさんはいかがでしょうか...というところで,『戦隊大失格』第5話 怪人の一撃!の感想です。

   

関連コミックス 【単行本】(春場ねぎ先生)   

五等分の花嫁 全14巻 新品セット

五等分の花嫁 全14巻 新品セット

 

 

 
 

 

 

 

 

「正義」の力の源泉はなにか 

前回,まんまと神具を持ち出したところでまさかのレッドキーパー遭遇という流れとなった戦闘員D。折角の擬態もまんまとばれてしまいました。もうこの擬態は使えないな...とか思いましたけれど,それもこの場を逃れることができたらの話です。


そこで逃げるのではなく攻撃に転じる戦闘員Dというのは意外と言えば意外,当然と言えば当然なのかもしれない。彼の目的は大戦隊を倒すことである。彼我の戦力差を考えれば客観的には錫切さんが指示したように「逃げ」一点ですけれど,戦闘員Dからしてみれば圧倒的戦力差を持つレッドキーパーが自分を攻撃できず,かつ神具は自分が抑えている状況です。日曜決戦に挑むよりもはるかに勝率が高いのは確かですからね。


しかし戦力差を考えずに無遠慮にとびかかるあたりが戦闘員の限界といったところなのであろうか。もし人間だったら折角奪った神具をうまく活用するでしょうに。神具を人質にしてもいいし,もし変身方法が分かるならレッドキーパーに変身してもいい。相手との戦闘力の違いを考慮して頭脳的に戦力差を埋める算段をしてから戦闘開始するでしょうからね。

 

f:id:ayumie:20210302030851p:plain

力の源泉はなにか?

 

だけれど戦闘員Dくんは無造作に飛び蹴りをかましてはぶん投げられ,ただの棒切れで吹っ飛ばされてしまうのであった。


ふむ。
地球人であるはずのところの赤刎くんが,貯水タンクごと戦闘員Dを吹っ飛ばしておる。以前からの疑問だったのですが,ただの人間にそんなことができるわけがないので,やはり大戦隊の「変身」とやらはスーツの方に何らかの仕掛けがあるか,ワールドトリガーのトリオン体みたいなものなんだろうな。あるいはここは「仮想現実空間」で,そのようなステータスを振られているだけかもしれないけれど。

 

ただ力やスピード,動体視力などの能力を補うスーツを装着しているだけだったら,その動きについていかねばならない生身の人間の身体はあっという間にバラバラになっているはずなので,やはりトリオン体みたいなもの仮想現実のお話なのかなって気もしますが。もちろん,戦闘員がただの人間より弱いってのあるのでしょうけれど。

 

正義と悪のロールプレイ

それだけの力量差があるからこそ,この余裕がある。

 

大戦隊と怪人。正義と悪。そんな構図をわざわざ協定まで結んで「維持」して茶番を演じ漬けているのは,どこかしら作り物の物語を演じている感がある。事実,レッドキーパーは「役割」と言ったからね。このロールプレイを通じて「正義が悪を倒す」姿を毎週市民にみせ,そのシノギの結果大戦隊が存在する意義を世間に認めさせることができる。


正義と悪という本質は置き去りにされていて「正義の役割」「悪の役割」を演じることだけを行っている。だから本質的に正義の精神を身に宿していなくても「演じられてしまう」。読者から見ればある種醜悪ともいえるその姿があるからこそ,戦闘員Dがどう一矢報いるのかというところに読者の気持ちを持っていけるわけですね。

 

f:id:ayumie:20210302030923p:plain

生死の緊張感がまるで無い


これもな...。
「展開」「マンネリ」といったその言い方には,生死を賭ける緊張感に欠けている。前回の朱鷺田の時も感じましたけれど,彼らの余裕は「絶対に負けることがあり得ない戦闘力の差」に裏付けられているんだよね。命をかけると言いながら,自分たちは絶対に死なない安全地帯にいるという確信めいたものがある。じゃなきゃこんなTVのドッキリみたいな脚本について登場人物があれこれ考えるわけないじゃないですか。

 


しかしレッドさんは言う。「これも大儀のためか」

 


ここがよく分からんな。こんなロールプレイに何の大義がある?少なくとも正義と悪という観点からしてみれば,茶番を続ける殊に大義は無い。本当に地球を防衛したいのならば,さっさと怪人の本拠地をぶっ潰して終わりである。それをしない以上,悪としての怪人退治を大義としているのではない。

ここで言っている「大義」とは,この茶番をなるべく長引かせることを指しているよね。なんだろ...。やっぱり玩具会社のスポンサーでもついていて辞められないのかしら(ちょ)

 

戦術と戦略における「勝利」の違い

というわけで,結果は戦闘員Dの惨敗です。

再生可能であるところの戦闘員を完全に消去駅る「神具」によって屠られてしまいました。
合掌。


ふむ。このブルーの神具は「本物」だったのかな。本物ならば完全に消滅するはずですが,そこのところの真偽は来週まで分かるまい。とりあえずディグダグみたいに膨らませて破裂させるのがブルーの神具の効能らしいですね。


戦闘員Dの最後のモノローグが何とも言えないな。

 

f:id:ayumie:20210302031016p:plain

「主人公」としての戦闘員D

 

「俺が死んでも終わりじゃねェ」

 


ただ蹂躙されるだけの存在ではなく,自らの立ち位置を定めて対等の立場として正義と悪の構図を描こうとした戦闘員Dの意識は胸打つものがある。彼が一介の戦闘員に過ぎず,地球から見れば「敵」としての存在であるにもかかわらずだ。少なくとも彼は主人公だった。


単純な戦闘という意味ではドラゴンキーパーにいいように嬲られて散ってしまったわけですけれど,彼が限られたリソースの中で行った行為は「勝利」と言ってよい結果があった。自らの腕を神具に擬態させ,本物の神具をまんまと奪い取ったのである。まさに会心の一撃ならぬ,怪人の一撃である。


単純戦闘という戦術レベルでは完敗であったけれど,神具を奪うという結果をみれば戦略的には大勝利である。「正確な擬態ができる」という彼の唯一の特徴を活かし,自分が死んでも神具は奪えるように手を打った戦闘員Dのささやかな勝利に,一読者としては胸のすく想いがするのである。そういう意味において,彼の行動は「主人公」のそれだったと言える。

 

f:id:ayumie:20210302031103p:plain

かいじんのいちげき!


しかしそうなるとですね...
主人公「だった」戦闘員Dの生死が気になるところですね。神具で吹っ飛ばされているので,再構成することもなく死んでいるはずです。もし本物の神具なら。そこのところは曖昧なんですよね。今回も見てわかるように,神具は能力絶大だけれど替えが効かないものです。迂闊に持ち出せば紛失の畏れも高まる。本来,本物の神具なんかなくったって戦闘員程度なら蹴散らせるわけで,他のドラゴンキーパーが本物を持ってくる必要性なんか全くないんですよね。

 

そういう意味では戦闘員Dが生きている可能性もちょっとある。あるいは,死んだと見せかけて今後登場する人物の誰かとして擬態させておくというレトリックも使えますしね。この辺はねぎ先生がどう処理するのか気になるところ。


一方,仮に戦闘員Dが死んでいたとしても物語の続きは描けるんだよな。錫切さん視点で物語を動かしてもいいですし,戦闘員Dがモノローグで訴えかけたように「別の誰か」が出てくるのかもしれない。実際,先週もたった一人で挑みかかった戦闘員Eがいたように,現状を良しとせず,変化を求める空気は怪人側にもあるからね。受け継がれる意思という文脈で物語を書いていくのも一計である。

 

そんなわけで,次回からのお話はどう進むのか,注目である。まる

 

余談:錫切さんと朱鷺田くん

さて肝心の神具ですが,錫切さんがちゃっかり確保していました。彼女は彼女なりの理由で大戦隊をぶっ潰したいわけですが,「あと4人」か...。レッドキーパーは健在ですけれど本物の神具が重要なんですかね。本物が無いと偽物の神具も使えない(作れない)ってことかしら。コピー元が亡くなったら本当の力が使えなくなっちゃう,そういうことなのかな。

 

f:id:ayumie:20210302031127p:plain

目の死んでいるお姉さんの狙いは...

 

錫切さんは大戦隊潰しを考えているみたいですけれど,そのプロセスは戦闘員Dとは異なり神具を全て奪うことで無効化するという作戦なのだとしたら,今後はその戦法は難しいのじゃないかしら。戦場に本物を持ってくるバカが減るでしょうし,管理だってもうちょっとマシにするでしょうしね。そしてなにより,擬態できる不死生物であった戦闘員Dがいないとそもそも潜入・強奪も難しい。この先の展開が気になります。


気になると言えば,神具の見張りをしていたはずなのにまんまとフルボッコにされて本物を盗まれてしまった朱鷺田くん。正三位でしたが今後の立場は無くなりそうですね。かれが落ちぶれて「こっち側」に堕ちる展開もあるのでしょうか。気になります。

 

というわけで,再度まる。

 

 

現実逃避のご案内

Google検索で記事が出なくなったら、検索語に「現実逃避」を付け足すと見つかりやすいです。

このエントリーをはてなブックマークに追加  

 

 

   

 

 

関連コミックス【電子書籍】 (春場ねぎ先生)

 

[まとめ買い] 五等分の花嫁

[まとめ買い] 五等分の花嫁

 

 

 


*画像は週刊少年マガジン2021年第14号 『戦隊大失格』第5話より引用しました。