きっつ。
日本の少年少女の心にある戦隊とは,正義の味方であり,勧善懲悪においてその善性を疑われること無く存在するものである。 翻って,本作品のタイトルは「戦隊大失格」なわけで,もとよりそこで描かれる戦隊が「失格者としての戦隊」であることは明々白々なんだよなあ...。
それを踏まえた上で,この世界を守る戦隊ドラゴンキーパーの本性見たり...といった第6話でしょうか。ここまで間接的に「正義を名乗っているけれど正義性が無い」ことは示されていたわけですが,今回のお話でそれがはっきりとした感がありますね。
こういう戦隊観をどう捉えるかは人それぞれですが,最初に述べたようにその善性を疑われたことがない日本の特撮ヒーローとしての「戦隊」をこよなく愛する人にとっては色々複雑な気持ちかもしれんなあ...。
個人的にはこうした逆説的な構図をくんだ戦隊世界というのも面白いと思うので,ここからどう展開していくのか,錫切さんと怪人たちのドラマに注視していますけれど。そういう客観視した読み方で,世界観やら人間関係を読むタイプの人なら楽しめそうな気がしますね。
というわけで,『戦隊大失格』 第6話 正義の鉄槌 の感想です。
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力こそ「正義」!のセカイ
前回,主人公?の戦闘員Dさんが昇天してしまいました。まあ,彼を屠ったのが本物の神具だったのかどうかわかりませんが,とりあえず今週は未登場です。死んだはずの奴がいきなりでてきても興ざめですしね。
その代わり,なつかしの大戦隊フォントさんがてんこ盛りですよ!
大戦隊フォント!大戦隊フォントじゃないか!元気だったか?
諸々いろいろ言われた結果でしょうか。対策としてフォントにルビが振られました。なるへそ。ルビが振ってあれば一応読めなくはないからなあ...。あくまで大戦隊フォントはこのまま貫き通すってことなのね。個人的には作品の特徴としてこだわりがあってもいいと思いますが。
で,今回は「正義側」の話です。
ま,確かに正一位,従一位が勢揃いというあたりは集団の最高戦力が集う意味でまあ柱◯会議みたいなもんです。けれども,こっちの正義サイドは正義を名乗っているけれど正義性が無いサイドなので,お話は◯合会議みたいには進まないのであった...。少なくともモラル的には全く似ておらんわ!
ふむ。
とりあえず形式的なところから確認していくと,正一位と従一位はそれぞれバディの関係であるのね。ただ実態としては正一位と従一位の間には力関係で大きな差があって,直属同士であってもそれぞれの人間性によってだいぶ違いがあるみたいです。
うーんこの...。
とことん戦隊側の好感度が下がっていくなあ。まあ戦隊を名乗るにはあまりにも正義性に欠けているのは明白なんですけれど,結局の所こいつら単に力を持て余しているだけの連中ですからね。ただのアウトローと言ってもいい。
行き過ぎた暴力集団は力のみによって全ての関係性を定義づけていく。どちらかというとそれは悪の組織側によく見られる形式です。かつて『ダイの大冒険』において,大魔王バーンは力こそが全てであり正しさであることを主張しましたが,ドラゴンキーパーの掟も概ねそれに沿ったものだもんな。どっちが正義かわかったもんじゃない。
正義の後始末の付け方
それは神具を奪い取られた赤刎のあり方を見ても分かるんだよね。
レッド従一位の緋村くんが指摘していたとおり,本来成したことに対する責任のとり方というものはあると思うんだよね。もちろん緋村の思惑には自分が正一位になりたいという背景があって,その時点で正義性とかへったくれもないのはあるんですけれど。
ただまあ指摘は指摘として筋が通っているのである。正一位を辞退するかどうかはともかく,何らかのペナルティがあるのが本来の組織的なソレなんだよな。例えば責任を持って自分で取り返してくるとかさ。
でも実際の赤刎の行動は単に力で物を言わせただけなんだよね。
本来自分が取るべき責任を放棄して神具を奪った誰かを誅することを責任と捉えている。いや,責任と捉えてすらいない。単に自分がそうしたいからそうすると言っているだけ。そんなふうに見える。
やりたいようにやっているだけ,というのは緋村に対する態度からしても明白なんだよな。
強さあっての正義
これが彼にとっての理屈,物差しの全てなわけだ。
だからその強さで反抗するものを力で押さえつけて全てを解決する。そこには強くないのなら正しくはない。逆説的には強い自分だからこそ理屈抜きの正義がそこにあるという主張である。まさに大魔王バーンの世界観だよね。
ただ大魔王バーンにあったような人間の敵としての頂点の威厳,尊厳みたいなものはどこにもないよね。単に力が強いだけの暴れん坊...それがレッドキーパー赤刎創生の正体である。
自分のバディを撲殺しておいて,そのまま美味しくご飯を召し上がる。そこに命に対する敬意も尊厳も感じない。錫切さんが「どこが正義の味方よ」と思うのも無理からぬ事である。
錫切さんが戦隊を倒したい理由として戦闘員Dに挙げた理由「判官贔屓」はやはり偽りであった。彼女はこんな戦隊に絶望している。彼女はきっと正義であるべき戦隊に正義性がまったくないことに対して絶望しているんだね。
そんなお目々真っ黒なお姉さんの誕生秘話が少し見えたところで,今後の展開も少し見えてきましたね。これは偽りの正義を掲げる戦隊が本物になるまでの物語なのか...。
と納得したところで,今回の感想はまる。
余談:戦隊はどうやって力を手に入れたのか?
今回,「ただのコスプレ」状態であったはずの赤刎が自分のバディを一方的に嬲っていました。つまりこいつは素でそれだけの戦闘力があるということなのね。
やはり変である。
格闘家はそれなりの暴力装置になり得る戦闘力があるでしょうけれど,通常の人間の枠を超えていないか,それ。ただの人間がそんなにパワーある?人間を壁にのめり込ませる形で,顔面陥没させるほどのパワーがある? 明らかに普通の人間以上の「何か」がある。
なんだろ。こいつら本当に人間なのかしら。
戦隊という仮面をかぶっているだけの別の「何か」なのかしら。この辺もまだ曖昧である。
次。
従一位の緋村くんがこの有様なので,正三位の朱鷺田くんの立場はお察しである。神具を取られたもともとの責任は朱鷺田にもあるわけですが,大丈夫なんですかね。特段救いたくなるような人間でも有りませんでしたが,こういう露悪的な人間が後で味方になったりすることもあるからわからない。彼がまだ赤刎の正義の鉄槌を食らっていなければいいんですけれどね。
最後。
そもそも論として,怪人たちと戦隊が「協定」を結んで今の現状を作り出しているわけですけれど,こうした暴力装置としての戦隊を見せられるとそもそもこの茶番で戦隊側が受ける受益はなんじゃらほい,という疑問が再び湧いてくる。
ただの行き過ぎた暴力集団が,その暴力性を満たすためだけに「敵としての怪人」を求めているのか。ブルーさんもだいぶアレな感じでしたけれど,一方的暴力を肯定するだけのメンバーばかりでもなさそうです。この戦隊がなんのために存在するのか,そのへんもそろそろ種明かしがほしいところですね。
というわけで,再度まる。
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